表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンジェリカの王女 エピソード集  作者: 四季
エピソード集
7/13

『RPGゲームのキャラメイク大会をやってみた』

 ゲーム屋で携帯ゲーム機とRPGゲームを買ったので、私はエリアスやジェシカやノアと早速プレイしてみることにした。


「最初に自分の分身を作るらしいの。折角だしみんなでやってみない?」


 エンジェリカにはこういうゲームというものはなかったので何だか新鮮だ。


「へーっ、自分をキャラクターとして作るのか! 面白いね。いいじゃん! やってみよ」


 ジェシカは早速電源を入れゲームを起動する。しばらく地上界で暮らしていたからか、意外と操作できているようだ。


「どうやるのー?」


 ノアはジェシカの持つゲーム機を覗き込みいちいち確認しながら進めている。彼は自力で進めるととんでもないことになりそうだ。ジェシカに確認しているのは賢明だと思う。


「王女、キャラクターなるものの設定まで進みました。これが自分の分身を作る画面ですね」

「そうそう」


 エリアスが一番乗り。さすがね。彼は安心感があるわ。

 その後、ジェシカとノアもキャラクターの設定画面までたどり着いた。取り敢えずここまでは全員クリアだ。

 よし、早速取りかかろう! ということで、ひとまず、それぞれ自分に似せたキャラクターを作ってみることにした。



 ——十五分経過。


 ゆっくり作っていたら十五分も経っていたことに内心衝撃を受けつつ、四人全員が完了したことを確認する。


「じゃあ今から一人ずつ見せあいましょ」


 私が芯をとって言うと、ジェシカは提案してくる。


「王女様! これさ、一番自分に似てるキャラクターを作った天使が、一番自分に似てないキャラクターを作った天使の頬にキスするって企画にしない!?」


 う、うわぁ。嫌な提案キタ。

 私が返答を悩んでいると、急にノアが口を開く。


「それいいねー。ジェシカ、名案だよー」

「私は勝つ自信があります」


 隣のエリアスもなぜか妙に乗り気。どうしたんだ、エリアス。


「さーて、じゃあ一人ずつ見ていこ! 誰が誰にキスになっても恨みっこなしね」


 その企画、通ったのね……。

 しかもいつの間にかジェシカが司会者になっている。



 一番最初にキャラクターを披露するのはジェシカになった。とても見せたそうだったから。


「これ、結構自信あるんだっ」


 彼女は納得いくキャラクターを作れたらしく、とても自信を持っているようだ。自分で「自信がある」と宣言してしまうぐらい勢いに乗っている。


「じゃん! どうよっ」


 画面を見て驚いた。予想より高いクオリティだったから。

 髪の長さや少し跳ねた感じ、瞳の色、ややつり目で自信を感じさせる顔つき。クロスしたピンまでしっかりついている。


「ほう、凄いな……」


 エリアスも感心して画面を覗き込んでいる。


「えっへん! あたし結構凄いでしょ。職業もちゃんと剣士にしたんだからっ」

「ジェシカさん確かに凄いわ」


 もしかしたら彼女が一番かもしれない、とそう思った時。


「でもこれさー、名前のところ『ジャシカ』になってるよー」


 ノアがそんな細かいところを指摘する。

 名前など間違えるはずがないとまったく気にしていなかったが、よく見ると確かに『ジャシカ』になっている。恐らく単純な入力ミスだろう。


「うわあぁぁ! やってしまったっ!」


 ジェシカは気づいていなかったようで、頭を抱えてショックを受ける。自信満々でほぼ完璧だっただけに、この入力ミスは痛い。


「入力ミス、減点一点だな」


 なぜかエリアスは嬉しそうだった。



 二番目はノア。


「見て見てー」


 彼は凄いのを出してきそうだと思いつつ画面に目をやり、つい叫んでしまった。


「えっ! 何これ!?」


 間違いが多すぎてどこから突っ込めばいいか分からないが、まず、女性になっている。


「王女様どうし……え、何で? ノア、これ女になってんじゃん。何で?」


 ジェシカは混乱していた。


「おかしいかなー?」

「いやいや、普通気づくでしょ。アンタ男じゃん」

「うん。好きなのを作るんじゃなかったのー?」

「……もういい」


 ジェシカは呆れ果てていた。

 髪が紫なこと以外すべてが間違っている。しかも職業がパン屋だし。パン屋って……。

 これは確実に決まりだろう。彼が最下位。つまり頬にキスされるのは彼だ。



「次は王女様っ」


 三番目は私か。じゃあ最後がエリアスね。


「上手くできてるか分からないけど……はいっ」


 恥ずかしさを感じながら画面をみんなへ見せ反応を待つ。

 私の髪型はなかったのでハーフアップで代用したが大丈夫だろうか。しかも職業も王女はなかったので魔法使いになっている。言葉の現実化能力を持っているので魔法使いで間違いではないかなー、と思って。


「完璧です、王女。貴女はやはり素晴らしい女王になられると思います」


 エリアスが目を潤ませながら手を握ってくる。


「感動しました。王女の作品は素晴らしいです! こんな難しいことを難なくこなしてしまわれるとは、凄すぎます!」

「落ち着いて、落ち着いて」


 そんなに感動しなくても。たかがゲームのキャラクター作りよ。


「でも確かにこれは完璧だなー。僕には何が足りなかったのかこの作品から学びとるよー」


 ノアは何が足りないとかいう問題じゃないと思う。


「この確実さは王女様の武器だよね。凄いなぁ」


 ジェシカはとても普通な感想を述べていた。



 最後はエリアス。

 さすがにこれは完璧でしょ。入力ミスさえなければ普通に一位……って、ちょっと待って。それはまずい。シュールなことになってしまう。


「王女、どうでしょうか……」


 そんなに赤面しなくてもいいのに。


「名前——え? エリアス! 名前が護衛隊長になってるけど!?」


 名前の欄が『護衛隊長』になっている。どうしてこうなった。


「はい。実はですね、職業の欄に護衛隊長がなかったのです。なので名前をそれにしました」


 そ、そうなんだ……。

 その他、外見などは特におかしくなかった。だが睫のパーツがないせいか、若干エリアスらしくない感じがする。ゲームで彼の神々しい雰囲気を醸し出すのは至難の業だ。


「隊長おかしいー。名前には名前を入れるんだよー」

「女を作ったノアには言われたくないな」


 エリアスは一瞬だけノアに鋭い殺気を向ける。おぉ怖い。


「もしかしてエリアス、ちょっと気にしてる?」


 半ば冗談で声をかけると、「私を心配して下さるのですか? 王女はお優しいですね」などと返ってきて少々困惑した。流れがおかしい、流れが。



「さて、それでは結果発表を始めまーすっ!」


 やはりジェシカが芯をとるらしい。もはや私に出る幕はない。


「第四位は……ノア!」


 そりゃそうよね。名前と髪色以外すべて違っていたもの。


「四位かー。嬉しいなー」


 最下位だけどね。


「残念賞三位は……エリアスだね」


 エリアスは首を傾げる。


「ジェシカ、それはおかしい。なぜ私には残念賞とつけた?」

「それはキスされることもすることもないからだよっ」


 なるほど、だから残念賞か。確かに何もなしは残念だわ。したいわけじゃないけど。


「くっ……そうか。惜しいな」


 でもこのイベント、参加者にノアがいる限り、恐らく最下位にはなれないわよね。ノアはおかしさじゃ最強だもの。


「続けてちょい残念賞の二位はあたし! でも悔しいな、一文字の間違いだもん」

「ジェシカさん凄く惜しかったものね」

「ホントだよ! 悔しすぎっ」


 でも彼女のそういうちょっとミスするところ、私は案外好きだったりする。完璧より可愛いげがあって魅力的だと思うの。


「そして第一位は……王女様! おめでとうございますっ!」


 まさかの一位。予想外だ。


「おめでとうございます。さすがです、王女」


 エリアスは安定の優しさで祝福してくれる。普通に嬉しい。


「さすがだねっ。でも次はあたしも負けない!」


 え、またやる予定? そんなの聞いてないけど。


「凄いなー」


 うん。貴方は次からもう少し話を聞こうね。


「じゃあ頬キスは、王女様からノアへだねっ」


 しまった、そんな難関が残っていた。しかもする方だなんて複雑な心境だ。



 こうして、このRPGゲームキャラクター作り大会は、私がノアの頬に軽くキスしたことで終わった。何だこのノリは、と思いつつ。でも意外と盛り上がった。面白かったわ。


 それに人間の文化って……なかなか興味深い。



◇終わり◇

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ