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エンジェリカの王女 エピソード集  作者: 四季
エピソード集
10/13

『一般市民の王女観察記〜花屋編〜』

『一般市民の王女観察記〜花屋編〜』


 私の名前はフィーネ。エンジェリカ王宮近くの花屋の娘で、今は両親が営む花屋でお手伝いしてるの。


 今日はアンナ王女に、誕生日祝いの花束を献上しに行ってきます! 確か王女様って、とっても美人で可愛らしい方なのよね。

 私みたいな一般天使はなかなかお近づきになれない。せっかくの機会だから、悪い印象にならないようにおめかししていかなくちゃね。


 そういうことで、今日はいつになくお洒落してきちゃった。

 髪の毛もちゃんとセットしたし、服も特別な日用の一番高級なやつを着てきた!高級って言っても、まぁたいしたものじゃないけど。


 花束も持ったし、いざ出発!



 事情を話して通してもらった。アンナ王女の自室の前で待つ。うぅ、動悸がする……。

 しばらくすると係の方が「お待たせしました」と言って扉を開けてくれた。いよいよご対面! うぅ、動悸が……。



 恐る恐る部屋へ足を踏み入れると、アンナ王女が温かく迎えてくれた。


「花束! やっと届いたのね」


 自ら駆け寄ってきてくれて、素敵な笑顔を咲かせる。金の髪はとっても綺麗だし、ドレスもとても豪華で、ついつい見とれちゃった。

 さすがは王女様、あらゆるところのレベルが違う!

 それにそんな美しい方なのにとても気さくなの。平民の私なんかにもすっごく親しげに話してくださって……、感動で涙が出そう。


「えっと、お花屋さん? 女の子なのね。お名前は?」

「え、えと……フィーネ……です」


 恥ずかしながら、まともに答えられなかった。緊張して途切れ途切れになってしまう。

 それでもアンナ王女は笑顔を崩さず「よろしく」って言ってくださった。なんて素敵な方なの。綺麗なのは容姿だけじゃないのね。



「今日は花束、本当に嬉しいわ。ありがとう! フィーネさん、またいつか会いましょう」


 別れしな、わざわざ部屋の外まで出てきてくださるアンナ王女。私、もう泣きそうだった。


 だって王女様がだよ? 一平民のためにわざわざ部屋の外まで来てくださるんだよ?

 そんなことって信じられない。



「エリアス、ちょっと外まで送ってあげてくれる?」

「私がですか?」

「そうよ。せっかくのお客様に何かあったら大変でしょ?」

「いえ、王女の方が……」

「ダメよ。フィーネさんを送ってあげて」

「……分かりました」



 それにしても、アンナ王女の隣にいらっしゃる男性、とてもかっこいい。睫は長いし、顔は凛々しい。背もそこそこ高くてスタイルも抜群。それに、白いお洋服もよく似合ってる。

 王女様と二人で話している姿、絵になるなぁ。きっと彼も育ちがいいのね。



「ではフィーネさん、王宮の外までお送りします」


 ひえぇぇぇ!

 し、喋りかけられるなんて……。心臓の鼓動がとんでもなく加速する。

 お願い、心の準備をさせて!


「フィーネさん?」

「はっ、はひぃっ!?」


 ああぁぁぁ!

 おかしな声を出してしまい赤面する。恥ずかしすぎる……。


「エリアス、脅かしちゃダメよ。優しくね」


 その様子を眺めていたアンナ王女が男性に注意する。申し訳ないです……。私が男慣れしていないばかりに……。


「はい、王女。失礼しました、フィーネさん。私、それほど怖いですか?」

「い、いいえ」


 私は凄まじくドキドキしながら何とか答えた。


「では参りましょうか」

「……はい。ありがとうございます……」



 こうして私は、王宮の外門まで彼に送ってもらった。

 こんな贅沢な経験、私の人生ではもう二度とないかも。こんなかっこいい男性と一緒に歩くことなんて、最初で最後になりそう。


 別れしな、私は勇気を出して尋ねてみた。


「あっ、あの……」

「どうなさいました?」

「貴方と王女様は付き合ってられるんですかっ!?」


 キョトンとした顔をされる。

 そうよね。一介の天使がこんな質問、叱られるよね。


「え?」

「あ、こんなこと……ごめんなさい。急に変ですよね」


 しかし男性は嫌な顔一つせずに微笑んで返す。


「私は王女の護衛隊長です。私ごときがあの方を愛するなど、そんな贅沢できませんよ」


 あれだけ近くにいる方でもそう思っているんだ。そう思い、少し親近感を抱いた。



 ——その後、王宮。


「ただいま戻りました」

「お帰りなさい、エリアス」

「いきなり送れとは驚きました。ふふっ、王女にはいつも驚かされます」

「ふふっ。にしてもあの子、初々しくて可愛かったわね。えーと、名前は何だっけ?」


 アンナはノリで聞いただけなので覚えていなかった。


「フィーネさんです」

「そうだった!」


 恐らく三分後には忘れるだろうが。


「忘れていたのですね、王女」



 アンナは気さくだが、興味のないことに対しては、ちゃんと覚えようとしない質だったりする。



◇終わり◇

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