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ブレイズ ~non fiction perfect~File8 現世、幻想ーー刑務所から

うーむ。

読んでくれる人は多いなあ……とりあえず様子見よう。


あ…閲覧止まった。上げとこう。イマココ


2022年12月26日

17:28

アメリカ合衆国 ハワイ州 ハワイ島

ハワイ特秘極悪囚人収容所


契約者リンカー達が自分達の状況にそれぞれの反応をしていた頃、地球ではその異変に気付いていた者がいた。僅か一日も経過していないこの時間に異変に気付いた者は、一年前にも同じ異変を感じ取っていながら、静観することにしていた。しかし一年後に同じ異変を感じ取ったために行動を起こすと決め、囚人所へと足を運んだのだった。

「アリス、面会だ。起きろ」

「…………起きているわ。その下品な声を私に聞かせないで。

夢見が悪くなるじゃない」

囚人の声に露骨に不機嫌な態度で返すのは金髪を青いリボンで結びツインテールにした少女。

その服装は囚人のモノではなく、申し訳程度にヒラヒラが付いたワンピースだ。この服装は彼女が好んで着ているもので、彼女にとっては看守に服従していない印でもある。

「この……っ!!!………いや、いい。とにかく出ろ。面会だ」

「嫌よ」

ピキッ――!

看守の額に青筋が浮かぶ。

本来自分たちは絶対的な支配者で、囚人が逆らうことなど許されていない。

まして、その囚人は齢11歳の小柄な少女なのだ。

しかし収容所の誰もが彼女に対して規律を正すことが出来ないでいる。

「こ、このガキ……あんまし舐めてんじゃねえぞ!!」

「だから黙りなさいと言ったでしょう。権力を背にしなければタイマン1つ張れないようなチキンの言葉なんか耳に入れたくない。腐りそうだもの」

ブチブチブチ――!!!

血管の切れた音が牢屋に響く。

「ジーザス!!!このガキマジでぶち殺して――」

「殺されるのはテメーの方だろうが。アホなことすんじゃねえ」

ボカッ

「ぎゃわ!?」

ケツを蹴り飛ばされて間抜けな声を上げて倒れる看守の背中を踏み台にして牢屋に入ってきたのは、腰まで届く長髪を金色の髪結具で束ねた少年だ。

「アリス。お前はいちいち看守に上等吐かなきゃいられねーんか?

そのうち看守のフォクスが内出血で死ぬぞ」

「そうでもないけど。でも囚われの身である私に会うために危険を顧みずに現れてくれる男性なんて、女の子なら一度はあこがれるものよ。来てくれてうれしいわ。ああ…あなたの声は最高の子守唄…心が安らぐわ。私の王子様プリンス

看守に対する高飛車から態度を一変した少女は、少年を愛する異性のように、偉大な英雄のように、そして気心知れた兄のように見つめた。

「……………」

「どうしたの王子様プリンス。何かお話して?」

「……………」

「……??えっと……??」

困惑するアリスをよそに牢屋の壁に背中を預けて携帯ゲーム機を取り出す少年。

「……………」

「ね、ねえ……?何か話して?王子様プリンス

アリスの言葉を無視してゲームの電源を入れて操作をする。

袖を掴むアリスの瞳から涙が零れそうになった時、少年はようやく口を開いた。



ブレイズ ~non fiction perfect~ ファイル№8 刑務所からの試み



「………王子様って言うな。蕁麻疹が出るだろうが!」

「だって…あなたは私の王子様プリンス……」

「次そう呼んだら帰るぞ」

「………呼びづらいんだもの。あなたの名前が。ねえ、どうしてあなたは日本人なの?私と同じだったらよかったのに」

「俺はそうでもない。お前の名前は日本でも有名な童話のヒロインの名前だ。アリス」

「あなただけずるいわ…私もあなたと同じだったらよかったのに……」

「………生まれた場所も、育った環境も、俺たちに同じものなんてあるかよ。

ただ一つの祈りすら届かないこんな世界で、俺たちは無いものねだりなんかしてられる余裕なんかない」

「祈りが届かないのは当たり前よ。でも、だからって諦められるのなら、私はこんなところにいないわ。

あなたが会いに来てくれるって言ってくれたから、私はどこにも行かないでここにいるの。

アリスにあるまじきことだわ。いたくもない場所にいつまでも引きこもって、扉すら開こうとしないなんて……あなたがいるからなんだからね?」

言いながら、小さななカラダで精いっぱい背伸びをして少年の体を抱きしめる。

そしてそのままくちびるを……

「おい、そういう色恋はオモテでやれよコラ。ムショだぞここは……あ?」

「…………相変わらずデリカシーの無い男ね。神条かみじょう 境夜きょうや

二人が…否、アリスが一方的に愛を囁く前から少年と同行していた少年よりも遥かに大柄な青年に見間違えそうな金髪の少年がいた。

「お前がかざり 恭介きょうすけを好きなのは知ってる。だが、余所そとでやれ。

つーかいい加減話に入れ恭介。面会時間過ぎてるって、くたばり損ないがほざいてただろ。

ゼロの代わりにアリスを更生させるんならまずは規律を教えたれや」

「神条 境夜。私の恭介をゼロの代わりだなんて…殺すわよ?」

「やってみろよコラァ。ムショで寝ぼけてるガキに出来るんならよお!」

臨戦態勢で構えて向かい合う2人。その光景は本当に子供と大人の喧嘩のようだった。

「『奇跡』(まほう)を相手に只の人間が逆らう愚かさを身をもって知りなさい」

「上等だ!!俺に殴れない存在ものはねえ!!」

「――止めねえか馬鹿どもがあ!!!!」

「っ――!??」

「う――!!?」

お互いに『奇跡』(まほう)と拳をぶつけ合おうとした瞬間。少年が一括し、争う二人を黙らせた。

「………もういい。さっさと用を済ませて帰るぞ。境夜、お前は外で待ってろ」

「……………」

境夜は何も言うことなく言われるままに外に出ていった。

「恭介……あの……」

「アリス。俺たちは他の人間とは違う。力があるから無暗に戦おうとするなとあれほど」


「ご、ごめんなさい。本当にごめんなさい」

「俺たちはチームだ。確かにチーム名は『ギルティー』(有罪)だけども、わざわざ自分から有罪判決もらいに犯罪起こそうとすんじゃねえよ!!」

「うう……わたし、恭介がゼロの代わりだって言われたのがどうしても許せなかったんだもの……」

「許せなくていいから戦うな。マジで。『奇跡』(まほう)なんて頻繁に使うもんじゃねーから。まして喧嘩で奇跡起こすな」

「ごめんなさい……でも恭介。お願いだからすぐ帰っちゃうなんて言わないで……いい子にするから」

「じゃあだいぶ寄り道したが要件を済ます。まずはこれを見ろ」

見せてきたのは、さっきまで炎桜が開いていたゲーム機だった。しかしこれは只の携帯ゲーム機ではない。

無線ランなどが入ってハイテクになったゲーム機を『魔術』と『科学』で違法改造したチーム内でのみ使えるアイテム。魔道機器~ ギルティーDS i ~なのである。

よい子はマネしないでね。

「ギルティーの写真だね………私は写ってないけど…むすっ」

「仕方ないな。これ撮ったときもお前ムショの中だろーが」

「それで、これが何なの?」

「消えてるんだ。青葉 風音が。そして昨夜。鳴海 翔護まで消えている」

「……??アオバ シオン?ナルミ ショウゴ?ああ、2年前に『リトルウォーズ』で一緒に戦ったんだっけ?

私がいればなんにも問題無かったのに、わざわざ苦労しちゃって………むすっ」

画面に映っていたのは2年前に撮った写真。

真ん中には恭介と翔護。左には境夜右には風音。誰一人としてカメラの方を見ていないような写真だった。

しかし底に映っていたハズの翔護と風音はモザイクが掛かっている。

「…これは、バグじゃないの?」

「それはない。こいつはマークの『魔術』で俺達の『魔力』と繋がっているんだ。

俺達の中の誰かが助けを必要としている時は点滅するようになっている」

「………私は『魔術師』じゃないから『魔術』のことは分からない。何故これを私に?」

アリスは『奇跡使い』で『魔術師』ではない。そんなことはもちろん理解している。

「アリス。お前の『奇跡』でこいつの通信を2人に届けてほしいんだ。

お前の『夢幻の奇跡ゆめのまほう』なら出来るはずだ。お前の『ねがいを叶える』力を持つ奇跡まほうなら」

「………いや」

「何故だ?」

「だってあなたは私をこんなところに閉じ込めたのに、この二人はわざわざ助けようとする……しかも私にまで手伝わせるなんて!!」

「…………アリス」

「絶対いや!あなたは誰かの為にしか私に頼ってくれない。私はあなたの為に助けたいのに!!!」

「なら…俺はもうお前に頼ったりしない」

「――!!?」

「俺は自分に降りかかる火の粉は自分で払う。目の前に壁があれば己の拳で打ち砕く。

俺は、誰かがヤバい目に合ってるのを助けたいから、ソレが出来ないから、お前に頼るんだ。

それが嫌だというのなら、俺は二度とお前に頼ることは無い」

「いや…なにそれ……そんなのずるい!あなたは仲間を助けるのに自分は助けはいらないなんて勝手すぎる!!じゃあアナタを失うのが嫌な私はどうすればいいのよ!!」

「…………」

「あなたが会いに来てくれるっていうから私はここにいるのよ!?」

「会いにくるさ。だが当分は無理だ。俺は世界中回ってあいつらの行方を捜す。仲間だから」

「それって脅し?会いに来てほしいなら協力しろってことじゃないの?わたしはしないよ!!あなたが会いに来てくれないなら、私がこんなところにいる理由なんてない!!今すぐにだって脱獄してやる!!!」

「………好きにしろ。お前が自分の罪から逃げるなら、俺ももうお前と二度と会わないだけだ。」

「それは矛盾じゃない?あなたの国の言葉よ!あなたが私から離れるって言いだしたんじゃない!

私のせいにしないでよ!!あなたが逃げるんなら私は追い掛けるだけよ」

「追いかけっこがしたいならそれでいいだろう。一生一方的に追いかけるのが望みならな?」

「そんなの……!!」

飾 恭介はアリスがどれだけ恭介を愛しても振り向くことは無い。

恭介の言葉の意味を悟り、アリスは涙を流して崩れ落ちた。

「……………」

「……………」

「じゃあな。もう二度と言葉を交わすことは無いが元気でな」

俯く少女に対して未練を感じさせない所作で出口へ向きさっさと出て行こうとする恭介。

「…………」

出口のドアを開こうとした時、アリスは口を開いた。

「…………『射抜け、アルテミスの矢よ。彼の者を戒めよ。我が幻想は現実を塗りつぶすもの也!!』」

「――ぐうっ!!」

それが奇跡の行使の為の詠唱だと気付いた時には恭介の身体は壁に貼り付けられていた。

肢体には反しの付いた狩猟の槍が刺さっている。

「私はアリス。アリス・クイーン・ワンダーランド。私の奇跡は何でも出来る……だったら、初めからあなたを奇跡で私のものにしちゃえばよかったのよ……ねえ、私の王子様プリンス?」

「…………」

「ねえ。王女クイーン王子様プリンスなら、あなたは王様キングでもある……この世界を支配して、あなたにあげる。これなら誰もあなたの罪を口に出来ない。口にしたやつは私が罰してあげる。あなたを責める人なんて一人もいなくなる。だからもう、ギルティーなんてやめて、私と一緒に暮らしましょう。キングとして、ね」

「………いなくなったりしない」

「なぜ?逆らうものを根絶やしにしていけばいいだけじゃない。出来るわよ。私の奇跡なら。

あなたを苦しめる者はみんな私が殺してあげるわ」

「そいつは不可能だ。俺は『俺自身が罪びと』だと蔑んでいるのだから」

「っ――!??」

彼を責める者を根絶やしにする。そうすれば彼はギルティーではなくなる。仲間はいらない。

しかし、彼が彼自信をギルティーだと主張するなら、それは殺せば済む問題ではない。

アリスはあくまでも飾 恭介と一緒にいたいのだから。

「もう意地を張るな。俺は有罪であっても生きていく。死んでも償いにならない。

そう理解したから今を生きている。それはおそらく、青葉も鳴海も同じことだ。

俺は助けてやりたいんだ。自分を救うことが出来るのは自分だけ。しかし出来るはずだと信じてる。

救われる前に挫けそうになる前に支えること!!『生まれる前から罪であると決められた命』であるからこそ、命は簡単に終わらせてしまっていいものではないと思うから!!!」

「………っ」

「だから俺は探す!!やつらの無事を祈って!やつらの死をこの目で見るまでは、諦めるなんて出来るわけないんだ。俺のこの意志だけは、たとえ『神様』であっても奪わせやしない!!まして神の力の一部を借りただけの『奇跡』(まほう)なんかに負けはしない!!」

「恭介……私は……」

「殺したいなら好きにしろよ。俺は行く。たとえ死んだって前に進んでやる……ぐっ!!!」

槍に貼り付けられた腕を強引に離そうと更に深く深く槍を腕にねじ込む。見るだけでも気を失ってしまいそうな痛々しい。ねじ込むたびに激痛が走る。

だが恭介は止めない。血潮を流しても。歯を食いしばって食いしばって、ようやく一本を引き抜いた時、自分を張り付けていた全ての槍が消えた。

「え?うわっ!?」

いきなり自分を縛っていた槍が消えて思いっきりバランスを崩した恭介は気の抜けた声を上げ倒れた。

しかし床はまったく硬さを感じない。弾力が無いのに柔らかい。そう、これはまるで……

「………アリス?」

「ぐすん……バカ……。人を助けようとするのに自分は助けるななんて勝手よ。一人は嫌なくせに。」

アリスの胸に抱かれていた。体格に反せずまったく膨らみを感じないが、昔から変わらぬアリスの抱き方。

顔を自分の胸に添えて小さな腕で頭を抱きしめる。

するとそれまで痛かった怪我は治っている。昔からアリスは怪我をする度に癒してくれる。

「仲間を助けたいのよね。大切…なのよね。ごめんなさい」

「………アリス。俺はお前だって大切だ」

「え……?」

「………お前がいつも怪我を治してくれるって分かってるから死なない怪我なんて気にもしてなかったずるい奴だ。俺は壁を殴って壊したあとの拳の治療をお前に頼りきりだった」

「恭介……」

「意地を張ってたのは俺の方だな。お前に抱かれた瞬間、恐怖が全部消えた。

怖かったんだ。もしかしたらあいつらが死んじまったんじゃないかって……」

「私も、恭介が死ぬのは嫌。意地を張って闘って返ってきた時はいっつもボロボロなあなた。

私に言ってくれれば何でも解決するのにって思うとすごく悔しかった。あなたに頼って貰えない自分が。

それなのにいつも危険なところに案内してるのは私で、もっと悔しかった」

「年下の女の子に戦いでも頼るなんて、王子様のやるこっちゃないさ……男は、意地張って生きるもんだって。

思ってたから。『人より弱い鳴り損ないの命』だから、バカにされないようにって……」

「もういいよ……全部分かったから。さあ、始めよう。仲間の無事を確かめなくちゃ。私にも、ちゃんと紹介してね」

「………あーうん。でももう少し休ませて…気を抜いたらドッと疲れた……」

「うん。分かった。じゃあ、今度は膝枕ね」

「んー」

「おーい。恭介。アリス。そろそろ話終わったかー?」

「ん?」

「あ…」

「………おめーら、色々何があったんだよ…」

境夜が待ち切れずに戻って来た時には、分厚い鉄板のドアには穴が開いて、友達は膝枕されているという状況だった。





go to next story

異世界の人数を最初に明言しないから幾らでも増やせる。そう思いますよね?


風呂敷畳むの大変でかえって辛いからほどほどが一番。

初心者にはそれがわからんのですよ。

…………だから、いまの俺は苦しまされる。過去の俺に。


ギャフン

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