ブレイズ non fiction perfect File№7 俺を訪ねて
森の北
12:10 浅倉 仁(25)
「………腹が減ったな」
森にある意味で迷彩柄の役割を果たしそうな蛇柄の服装で立つ脱獄囚、浅倉 仁。
右腕に持つのは警官から奪った拳銃。左手には鉄パイプ。
二つの武装をもつ浅倉の前に立ちはだかったのは二体のエクセプションだ。
「「ヴヴ……!」」
否。実際に立ちはだかったのは浅倉の方からだ。
「よう。俺と遊ぼうぜ?」
「ヴアアー!!」
契約者の敵として用意されたはずのエクセプションは、なぜか浅倉から逃げ出した。
「どこ行くんだ?」
ガンッガンッ!!
二発の銃声が森に響く。
弾丸はまっすぐに二体の足に当たって膝を砕いた。
「さあ、もうどこにも行けねえな。遊ぼうぜ…」
襲う側のエクセプションを逆に襲い、上から見下す形で二体に話しかける浅倉は笑っていた。
「なんだ、やらないのか?なら……」
そのまま鉄パイプを振りおろしてエクセプションの頭を砕いた。
「「ガアアアア……!!」」
「腹が減ってるんだ。食事にさせてもらおう」
何が浅倉の食事になるのか、それを彼らは知る由もなかった。
ブレイズ ~non fiction perfect~ ファイル№7 誰かを訪ねて
森の北
12:15 浅倉 仁(25)
たき火で焼いた肉にかぶりつく。肉が何の肉なのかはともかく、森に召喚される前から牢獄にいた浅倉は脱獄してから何もいれていない腹を満たした。
「ンム……」
一口入れて”悪くないな”などと感想を持ちながら休まずに食べる。本当に何の肉はともかく。腹は満たされていく。
たき火の横に1体分の骨を積み上げ、仕留めた獲物のもう一方を見る。当然それは死骸であり、既に動きはしない。
「ああ……野良犬や野良猫の方がウマいな。それでもドロに比べれば――ああ、いや…比べられないな」
胃を満たしてゴキゲンの浅倉は立ちあがる。
「ヴヴ…」
背後には殺したハズのエクセプションが立ちあがった。
「ほう、生き返ったか?単純に仕留め損ねただけだったのか、それとも……『不死身の獲物』はどこにでもいるもんなのかな。ククク……」
「ヴ…ガ……」
「ああ、来いよ」
死骸であったはずのエクセプションの蘇生にほとんど驚きを見せない浅倉は、不敵に笑って左手の鉄パイプでさっきと同じ個所を殴りつける。
バキッ!
「ヴアアアアー!!」
「ん?今度は一発で死なないか」
殴った側の浅倉は壁を殴ったかのような衝撃を左手に受け、鉄パイプが弾かれた。
しかし浅倉の攻撃を弾いてなおエクセプションは浅倉から逃げようとする。
「……ああそうか。殺したら強化された上で蘇生するわけだな……あれ?このスキル、前にどこかで見たような…?ん、まあいいか。そういうことなら……!!」
右手で銃を構え、敵の額に当てて発砲した。
「ガアアアア……!!」
ゼロ距離での弾丸が鉄パイプを弾いた肌を貫き頭蓋を砕いた。
「さあ、もっと強くなれよ。飽きるまで付き合ってやるからよお……」
再び死骸になったエクセプションをプレゼントの箱を開けるような期待の眼差しで見下ろしながら、再び復活の時を待ち続けた。
神の間 神のひとりごと
『さて、本格的な戦いになるものはまだいないようだが、すでに襲われるものと襲うものが分かれているようだな』
『フフフ……しかし、まさかこうなるとはな。「浅倉 仁」か……過去の儀式にて「守護者」であった者が「殲滅者」になるとは。これも記憶を失った影響か?』
『フム。しかしこれは面白いな。異なる時代から「契約者」を呼び寄せればこうなることもあるだろう。
せっかくだ。かつての物語で奴の味方をした宝具も召喚しておくか。
”七宝刀”は果たして同一人物の過去と未来。どちらに肩入れするのやら。』
『同じ森にいる同一人物。過去の自分に殺されぬように祈っているよ。「浅倉 仁」本来の名を「--」くん』
森の北 12:19
安堂 総司 (30)
月宮夢観といったん別れた安堂 総司は、村の行き止まりにたどり着いていた。
時間にして大人が走って5分程度の距離だ。
「ここまでに一切の人影を見なかったのは、やはりここも神の造形物だからなのかもな。ずいぶんと手の込んだプラモデルだ」
発見した村の中は規模が小さく、村と呼ぶには心もとない。
しかし立ち止っている暇はない。探し物の少女は二人。どちらも小さい。発見が遅れるほどにどのような事故に巻き込まれるかもしれない。
さて、どうやって探せばよいか。
相手は総司がどうして自分を探しているのかも知らない少女。現実ならば刑務所へ連れて行かれるが、この状況ならばまず逃げられると考えておくのが妥当だ。
「……ならば俺の役目は探索に専念することだけだな。見つけたら夢観にトランシーバーで連絡を取ろう。
まずはこの家から…何!?」
扉を開けよと手を伸ばすと、扉にドアノブが付いていないことに気がついた。
「……わざわざこの中に入るとは思えんな……ならば建物の中は放置しよう」
見渡す限り木造の建築物。しかし、そのすべての扉にはドアノブがない。もちろん自動ドアなどではない。押しても引いても開かずの扉だ。
しばらく探索していると、月宮夢観からトランシーバーで連絡が入った。
≪こちら夢観です。総司さん聞こえますか?≫
「ああ。進展はあったか?」
≪はい。実は今学校のような建物の中にいるんですが、その中で放送があったんです。
『この学校に残っている人がいたらもしいたら、連絡をください。一緒に逃げましょう。
合図として、近くの窓ガラスを叩き割ってください!迎えに行きます』って……≫
「………なるほどな。確かに学校なら窓ガラスはどこにでもあるだろう。それを割るというのは悪くない。
人気のない建物ならば音も響くだろう」
≪ふええ!??でも学校の窓を割っちゃうなんて、先生に怒られちゃいますよ?≫
「……緊急時でも大人の機嫌を伺うのは学生の性か。
そもそもそこに誰かがいるとも考えにくいがな」
≪どういうことですか?≫
「この村には人の気配がない。それどころか建物の全部の扉が開かない。
もしかするとこの場所は、神が造っただけの模型で、最初から人などいない場所なのかもしれない」
≪……あ!そういえばこの森は神様が創った世界だから何を壊しても怒られないってお兄ちゃんも言ってました!≫
「………君はいったいどこまでこの儀式のことを知っているんだ?」
≪ごめんなさいです。それは言っちゃいけないって言われているです……≫
「そうか。余計な手間を取らせたな。俺もすぐにそちらへ向かおう」
≪はい…お待ちしています≫
森の北 学校の放送室 12:20
響 愛美(11) 月宮 夢観(11)
「さてと。後は合図があるのを待つだけ。
しかしまさか学校の家庭科室に『あんなもの』があるなんて、この学校どうなってるんだ。
包丁だなんて言い訳するつもりなのか?あれ絶対包丁の大きさじゃないだろ。刀とか槍とかだろ」
ここに来る前に武器を探していた愛美は、もともと愛用していた武器のフライパンをもとめて家庭科調理室に入った。
そこで見つけたのは鎖に巻かれて台座に刺さった刀槍だった。封印されているかのような状況で、汚れている風でもないのにどこか黒い霧が覆っていた。
本来調理台などが陣取っているはずの場所を、それらの物体を押しのけて堂々と君臨する見ようによっては巨人の包丁に見えなくもない。(刀身に十字架が埋め込まれていなければの話だが)
「刀身の部分に教会の十字架みたいな装飾がされてたし、神様の武器なのかな?」
正直フライパンがあれば自分の身を守る自信がある。第一殺しがしたいわけじゃない。
本物の武器なんか小学生の手には余る。あれは大人が使うべきものなんだから。
バリーン!!
不意にガラスの割れる音がした。やはりこの学校に自分以外の誰かがいる。
「……よし!行くか!!」
両手にフライパンを装備して、響 愛美は放送室を後にした。
「やっぱりガラスの音に引き寄せられてるのか。白衣を着た化け物がどこにもいないな。
通りやすくて助かるけど、このままじゃガラス割った子が危ないな。よし!」
ガシャーン!!
教室によって椅子を持ってきて廊下のガラスを叩き割った。
「これでこっちに寄ってくるだろ。あとは別ルートから人を探してこーっと」
振り返って走り去る愛美。
「はあ…はあ…っ。あ。あれれ~??私のほかにだれか窓わった人がいたんだとおもったんだけどなー?
気のせいだったみたいですね…………学校のガラス割るの、ちょっと楽しいなーもう一枚してみようかな……?っと、だめだめ!愛美さんをさがさないと!」
すれ違いで夢観が訪れたのは、ほんの5秒後のことだった。
≪響 愛美とはすれ違いになったな、『奇跡使い』よ。
それとどうでもよいが、汝のおかげで今回の儀式は極端にみため的に平均年齢を下げてくれているな≫
「ほわあ!?ななななな何か聞こえるよー!?ごめんなさいー!窓ガラス割ったのはイタズラじゃないんですー!!」
≪ふむ。一癖も二癖もある儀式の参加者の中では極めて表裏の無い人種だな。
年齢詐称の幻想の奇跡使い。しかしロリだ。是非に神ペロペロしたい≫
「あれ?この学校の先生じゃない……?」
周りを見渡しても誰もいない。
≪フム……本来なら迷い込んだものは全員が神の力で選定を受け、この世界の制約を受けるのだが、君はそれを奇跡で回避している。
少女が幼女に年齢詐称など、永遠に審議される二桁の壁の結界を飛び越えることにしか使えないかと思ったのだがな。まさかそんな実用的な使い方があるとは………これならひと桁の純粋な甘みとふた桁の社会の汚濁に触れた甘くほろ苦い二つの味を同時に楽しめる!?一粒で二度おいしい!!幻想の奇跡!なんと全国のお兄ちゃんに優しい奇跡なのかっ!!?≫
「よくわかんないですけど、怒られないみたいでよかったです」
ふんわりと少女らしい笑顔で笑う夢観。
しかしこの時、怒られるより遥かにヤバいことを言われていることを、身体年齢5さいにして実年齢11さいの少女には理解できなかった。
「えーっと……わたしの名前は月宮夢観です。あなたのお名前を教えてください」
≪私の名は神。『お兄ちゃん』と呼んでくれ!!≫
「わかりました。お兄ちゃん」
≪ お兄ちゃんキタwww!!(^o^≡^o^) 今 夜はチュッパチャッ プス ぱーてぃーだー!!!≡┏( ^o^)┓(^o^≡^o^)フォーwwイエーwwww≡┗( ^o^)┛お兄ちゃん!≡┏( ^o^)┓お兄ちゃん!≡┗( ^o^)┛お兄ちゃん ≫
「………かみさまって、こんなに危ない人だったんだ……」
≪さあ、ゆめみタン!お兄ちゃんがこの学校の案内したげるよー!まずは保健室の場所からだねww具合とか悪くなったら大変だからね!お兄ちゃんが具合みてあげるよwww≫
「えーっと……こういうときにはなんて言えってお兄ちゃん言ってたんだっけなあ?」
本当の兄の方に言われたセリフを可愛く唸って思い出す。
≪もちろん『ありがとう。お兄ちゃんだーい好き!』に決まってるじゃないかwwフワァ!!(^o^≡^o^) wwwwwwさあ夢観たん!お兄ちゃんにいってごらwwwん!!せーの…≫
「えっと……おにいちゃん、仕事して下さい?」
≪ギャアアアアァァァ!???神にダメージ致死量www!!!アアアアアァァァ……!??≫
何故か勝手にダメージを受けた神はその後に夢観に話しかけなかった。
「お兄ちゃんに言われた通りに言ったけど、これでよかったのかなあ?」
「ヴアアアア……」
「――っ!?」
背後に気配を感じ振り向いた先には儀式に除外されたエクセプションが何体か立っていた。
「……あなたたちがエクセプションだね。私達が戦った『ナイトメア』とは違うけど、お兄ちゃん達が戦った『ノーバディー』や『ノージェント』には少しだけにてるんだね。お兄ちゃんが言ってた始まりの戦いの敵…………あれ??」
身構え戦闘態勢を取った夢観をエクセプションは無視して進んで行った。
「うーん……やっぱりわたしには戦いに来ないんだね。資格が無いから。お兄ちゃんがそう言ってた」
戦わずに済むならその方がいい。元々戦いが好きではないし、得意でも無い。それよりも彼女を探さなくてはならない。自分の役目を果たさなくては。
「ヴヴヴ……!!」
しかし、夢観に襲いかからないはずのエクセプションが一体だけ残っていた。その右手には学校に置いてあったであろう金属バット。視線は自らの腰の位置の夢観。
「あれ?あなたは残ってたの??みんな行っちゃったよ。あなたも行かなくていいの?」
「ヴアアアアア!!!!」
ブン――!!
「きゃあ!?な、なんで!?わたしはあなたの欲しいものなんて持ってないんだよ?」
小さなカラダを狙ってバットを振り回す目の前のエクセプションは、ただカラダ目当てであるかのように夢観を襲う。
「ヴヴ……シカク…ヲ……生キル…シカクヲ……??」
「わたしはあなたたちが欲しいものは持ってないんだよ」
振り回されるバットは危なげに夢観のカラダを擦りつけ、夢観はカラダをできる限り捩ってなんとか直撃を避けながら説得を試みる。しかしエクセプションは耳を貸さない。否、そもそも夢観の言葉を理解しているのかも怪しいほどに理性を感じさせない。夢観の目に見えるのはひたすらに自分に襲いかかる野生のみ。
「………お兄ちゃん、ごめんね。やっぱりわたしにはこの『人』たちを、攻撃出来ないよ……だから『奇跡』(まほう)を使うね」
「シカク……ヲ……!!」
「ごめんね。あなたたちを助けてあげられないの。だからせめて、楽しい『夢』を視せてあげる。
今宵に素敵な愛の夢をTo send you」
あらぶる者の頭上に光の粒子が降り注ぎ、すーっと意識を閉じていく。
「さあ、もうおやすみの時間ですよ。目を閉じて、一緒にヒツジさんをかぞえようね」
「ヴア……ア………」
「ヒツジが一匹…ヒツジが二匹……ヒツジが三匹」
「ヴアオ……ヴウ…ヴアオ…ヴヴ……ヴァ……………ZZZ」
「………おやすみなさい。夢がさめるころには、悪夢がいなくなってるといいね……」
エクセプションを寝かしつける夢観の顔はようにやさしく、見つめる瞳はわが子を見守るように慈しみに満ちていた。しかし実年齢は11さい。身体年齢は5さい。そんな少女はまほうつかい。
「それがキミの持つ『奇跡』(まほう)か」
「あ、総司さん。早いですね!」
「そうでもない。俺がここに入るまでに相当の時間がたったはずだが?」
「え?でもまだ5分も経ってないですよ?」
「………俺の時計はすでに30分は経っているんだが」
「ええ!?どうしてだろう?この時計は絶対に狂わないようになってる『奇跡』(まほう)の懐中時計なのになあ」
「まあ、神を名乗るようなやつの作った空間だ。常識の一つも崩れているのかもしれんな」
(もともと俺達の来ていた時代も違う。時間の流れがどこか異なっていたとしても、俺は驚かない)
「そうですね。とりあえず今は、愛美さんを見つけましょう。考えるのはそのあとにします。
あとで後悔したくないなら答えの出ないことをウジウジ悩むな。世界はお前の決意など待ってはくれない。です!」
「ほう。誰の言葉だ?」
「お兄ちゃんです!」
「そうか。良い兄を持ったな」
「はい!!」
満面の笑みで答えた奇跡使いの少女と共に探偵は進む。一刻も早く少女を見つけ出す為に。
森の北
12:22 浅倉 仁(25)
「ククク……!!いいねえ、いいじゃねえか!?
たった三回の蘇生でこれだけ上等な成長するとは予想外だ!!」
額から血を滴らせて狂気の笑みを浮かべる浅倉は、すでに4回目の蘇生でパワーアップしたエクセプションを殺していた。
「最初の蘇生が約6分でその後は3分、次は2分……なら次は1分で復活か?
たまんねえなあオイ!まるでクリスマスイヴの夜みてえじゃねえか!目を開けるのが待ち遠しいぜ!
もっとも目を開けるのは俺じゃないけどなあ」
「ヴヴヴ……!」
「目が覚めたか。さあ行くぜ!!」
敵が起き上がるのを待たずに鉄パイプで殴りかかる浅倉。
今まではその攻撃に何らかのダメージを期待出来ていた。しかし、今回は違った。
パシッ!!
「ほお……やっと俺の攻撃に反応するようになったか――何だと!?」
受け止めた鉄パイプごと浅倉を持ちあげたエクセプションは、そのまま浅倉をグイッと持ちあげて大木に投げつけてみせた。
「ガハッ!!」
「………………」
「ククク……!そうだ、それでいい。もっと強くなれ、俺を殺せるほどにな……!」
「………………ナゼダ……?」
「ほお、とうとうまともに話せるようになったか。だが、何故かなんざ俺の方が聞きたい。
お前がそれに疑問を持つ方が俺には分からん……」
それまで会話と言えるようなことが出来なかったエクセプションが突然話始めたにも関わらず、浅倉は全く驚かずに会話を促す。
「………………」
「ふん、まだ完全な会話は無理か。なら、更に殺さなくちゃなあ?」
バン!バン!!
銃弾がエクセプションに命中する。しかし鉄パイプ同様に効果が無いようだ。
「……………!!」
バキッ!!
「ぐわっ!?」
鉄パイプでの攻撃と同じように同じ樹に叩きつけられ、更にその衝撃で大木がへし折れる。
「………ククク。この武器じゃあこれ以上のダメージは無理か。まあ仕方ねえよな。
戦場を知らない日本警察の標準装備なんかで殺そうとする方が間違いだ……」
「…………」
「安心しろよ。逃げやしねえ。飽きるまで付き合うっつっただろうが?」
バキボキと指を鳴らし、素手での戦闘準備に入る浅倉は既に重症だ。叩きつけられた衝撃で口の端からも吐血し、その前の戦闘でもそれなりに怪我はしている。何より叩きつけられた腰が痛む。
「誰が逃げるもんかよ。俺はやっと戦場に来たんだ……もう2度と、あんな反吐みたいな世界に戻るくらいなら……この場で死んだ方がマシだ!!」
それはどす黒い負の感情。自分の受け入れ難いものを拒絶する破壊衝動に呼応するように、浅倉 仁の両手に暗い色の『魔力』が放出した。
「………!?」
「うおおおおおおおおーー!!!!」
浅倉の『魔力』を帯びた両手は銃弾も跳ね返したエクセプションの腹部をあっさりと突き破った。
「ヴアアアアァァァーー!???」
「……俺はもう、2度とあの世界には戻らない……見つけ出して、手に入れてやる。『神の威光』とやらを、そして永遠に戦い続けるんだ!戦士と!この命付き果てるまで!!!」
それまで倒されるたびに復活していたエクセプションを見下ろして言う。
「……まあ、テメエはそろそろ元いた場所に還してやるよ。俺は一度ここから元いた場所に還ってる」
「………ヴ…ウ……?」
「ただし最後にどうなるかはお前次第だ。俺に出来るのは『冥府の魔力』でお前を繋ぎ止めている世界の接点を焼き切るまでだ。あとは冥王と戦って勝つことだ。問題ねえよ。俺は10と12の時に2度戦ってるからな。
倒せば行き来は自由さ」
「………カエル…ノカ……?」
「ああ、テメエは十分付き合ってくれたからよ。それに自分で言って思い出したこともある。
そうさ、俺は昔ここに来てたんだ。だったら当然当時の俺がいる。俺と戦えばいいのさ……ククククク!!!」
「………ヴ…アア…………」
エクセプションは最後に解放されたと理解し、付きものが落ちたかのように安らかな人の顔でこの世界から消えて逝った。
「さあ、行こうか。俺を探しに……」