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異世界英雄譚  作者: ホルムアルデヒド
2/5

フレンドリーな女神様

「うっ...体が痛い...」


全身に鈍い痛みが走ると共に意識が覚醒する。


そして、目を開けるとそこには何も無かった。


そう、本当に何も無い一面が白で構成された世界に俺が立っていた。


「嘘だろ⁉︎ここは一体何処だ?」


まさかだと思うが...


「俺、拉致されたのか⁉︎」

下校時に何があったのか記憶がないが、自分が歩いた通学路にいないというこの状況を見て考えられるのは拉致しかない。


だとしたら俺はどうしたら良いんだ⁉︎ 今、俺は何処にいるんだ⁉︎

俺は何をされるんだ⁉︎ 人質として身代金の要求に使われるのか⁉︎

それともまさか人身b「ちょっと妄想が酷すぎるんじゃないですかねぇ....」



そんな声を投げかけられて、反射的に声の主を探すが何処にも姿が見当たらない。

はは、こんな状況で混乱していr「考え込まないで、まずは行動して下さい!上です!うーえ!」



声に従うままに上を見ると、そこには....煌びやか衣装に身を包んだ女性が宙に浮いていた。




まさかこれは...




「幻覚か...まさかヤバイ薬でもうt「いい加減に妄想は止めろぉ!」



「痛っ!」


ガン!という音と共に俺の頭に鈍い痛みが走る。どうやら宙に浮いている女性が俺に金属の玉を投げつけたようだが、音の割には余り痛くない。



そして女性は悪びれた様子もなく宙に浮いている。

どうやらこれは幻覚じゃないみたいだが、それなら....



「あの....これが幻覚じゃなく現実だとしたら、どういうことなんです?」



すると女性は少し驚いたような表情で

「覚えてないんですか?あなたが異世界転生したいって叫んでたから、私が異世界転生させてあげようと思ってここに連れて来たんですよ?」







異世界転生?

異世界転生と言ったのかこの女性は?

今、この女性は俺を異世界に転生させてくれると言ったのか!!!


あの、異世界転生で、間違いないよな!




「本当ですか!ああ、神様ありがとうございます!身に余る光栄です!」



「そうそう、もっと感謝してくれてもいいんですよ。」

宙に浮かぶ女性こと女神様は、どうだと言わんばかりの顔でこちらを見てくるが、本当に感謝しかない。




そして異世界転生ってことは多分...



「女神様、異世界転生という事は、何か特典貰えるのでしょうか!」



しまった。これはかなり図々しい発言だ....

まさか、この発言で異世界転生が取り消しなんかになったら.....



「ん〜、さっきは異世界転生って言いましたが、正確には貴方を私の世界にねじ込むって形なので、異世界転生とは少し違いますね。あっ、心配しないでください。もちろん特典は有りますとも!」




よかった...さっきの発言で女神様を怒らせる事は無かったようだ。

異世界転生とは少し違うとも言っていたけれど特典付きで異世界に行けるんだ!不満なんかないぞ!



よし、それじゃあ


「女神様。特典は自分で決める事は可能でしょうか。」


「ん〜、まあいいですよ。」


やった!それなら少し前に妄想してたあの特典を貰おう!


「では女神様。私の特典は賭けにおいても、戦場においても必ず勝利を掴む力が欲しいのです。どうかお願いします!」




ふふふ

やったぞ!これで異世界で死ぬ事は有り得なくなった。

これは異世界で無双できる事は確実...そして無双が確実になったという事は!

昔の世界で落ちこぼれだった俺の人生が、180度変わるって事だ!






ん?

女神様がこちらをずっと見ているがどういう事なんだろう?

少し驚いたような顔をしているけど...





ああ!しまった!

必ず勝利を掴む力なんてモノを人間にあげたら、いつ反旗を翻されるか分かったもんじゃないよなぁ




「あの...女神様、先程は必ず勝利を掴む力が欲しいとは言いましたが、女神様に逆らおうなんて気持ちは一片もありません。もし、特典の勝利を掴む力も、女神様には勝つ事が出来ないようにして下さってもなんの問題もありません。特典を頂けるだけで嬉しい限りです!」



よし、これで女神様も安心して特典を付与できるだろう。

さあ、女神様!私に最強の特典を付与して下さい!






「あの...人間ってこんなにも欲が深い生き物でしたっけ...?」


へ?


「あの、それはどういう事ですか?」


「いやいや、私だって貴方の望みどうりの特典をあげたいですよ。でも、特典が必ず勝利を掴む力って...」


「という事は、必ず勝利を掴む力を頂く事は出来ないのですか。」


「はい、無理です。というか、そんな芸当できるのはオリジンぐらいですよ。」




しまった。

これは絶対、女神様の機嫌を損ねた。



どうすれば良いんだ⁉︎

機嫌を損ねた事で異世界転生取り消しとかにならないよな⁉︎

と、とにかく謝って機嫌を直してもらわないと...






「女神様!愚かな私が無茶難題を申してしまって、本当に申し訳ありません!」


謝罪だけで彼女の機嫌が直ってくれるか心配だったが、女神様は特に気にする様子もなく


「ん?ああ、別に謝罪なんて良いですよ。それより貴方以外の人間も異世界転生するとなったら、あのぐらいの特典を欲しがるんですか?」



先の事を、特に気にしていないのは良いことだけど難しい質問だ

ここで俺だけが、あのぐらいの特典を望んでると思われたら印象が悪くなるだろうし...


でも、普通の人ならあんな特典は望まないのか?

いや、最近の高校生とかだったらこのぐらいの特典を要求してくるはずだ。



「はい。私の周りの人も同じ位の特典を望むでしょう。」



「...へー、そうなんですか。しかし、困りましたね...貴方ほかに欲しい特典はないんですか?」


他に欲しい特典...


うーむ全然思いつかないぞ...

とういうか、ここでまた無茶な特典を欲しがったら絶対に悪い印象を与える事になる。

かといって強力でない特典を貰っても無双どころか、そこらにいる雑魚敵にボコされて死んじまうだろう。



あーもう全然良い案が思いつかん!

というか、こんな混乱した状況で人生を左右する事を決められる奴なんかいねえよ....







待てよ....そうか!今ここで冷静でいる女神様に特典を決めて貰えば良いんだ!



「女神様、申し訳ありませんが未だに私は状況の整理がつかず、自分で特典を決める事ができません。なので、ここはどうか女神様に最善の特典を選んでいただきたいのです。」




女神様は少し悩んだようだったがすぐに

「うーん、最善の特典といったら...あぁ、あれがありましたね」



と言うと同時に、武骨な赤い刀身の刀を取り出した。

「この剣はとある神が持っていた剣であり、多くの神々に恐れられて来たモノです。この剣を使えば、戦いにおいて勝利を収める事は容易い事となるでしょう。他には、ミスリルの甲冑一式を用意します。ミスリルは貴方が転生する世界では中々貴重で頑丈な金属ですよ。特典についてはこんな感じで良いですかね?」







おおっ!かなり良い特典を用意してくれたぞ。

やっぱり自分で特典決めないで、女神様に決めてもらってよかった。



「では、特典を決めた所で、貴方に使命を伝えたいのですが、その前に貴方の名前を聞いていませんだしたね。貴方、名前は?」



「名前は...今までの名前を捨て、ナナシという名で生きたいと思います。」


「?...自分の元の名前がお嫌いで?」


「いいえ、嫌いではないんですが、自分は落ちこぼれでして...そんな自分と決別する為に名前を変えるんです。」


「へぇ結構面白い考え方してるじゃないですか、ナナシ」



「お褒めにいただき光栄です。所で先ほどおっしゃった使命というのは?」



「使命というのはですね、貴方に魔王と呼ばれる存在を倒して欲しいのです」


おお、ありふれた展開だけど結構ワクワクするな!

女神様から貰った特典さえあれば、異世界で名を上げるのは簡単だ。

そして、名を上げている間に信頼できる仲間をつくり魔王を倒す!



そんな感じで俺は誰からも慕われる救国の勇者となる!



さあ、決意が決まった所で善は急げだ!

「女神様、必ずや魔王を倒してみます!どうぞ異世界転生を始めてください!」



「ええ、もうすぐ始めますとも。ただ、少し目を閉じて待っていてくださいね。」

言われたとうりに目を閉じてしばらくすると



「もう目を開けていいですよ。」

と言われたので、目を開けると煌びやかな衣装を身に纏っていた彼女の姿が、半袖、ハーフパンツにマントを羽織ったものに変わっていた。





ん?女神様の行動の意図が読めず、不思議に思っていると女神様は少し笑って


「何を不思議がっているんですか、私も一緒に行くんですよ。」

と当たり前のような口調で言った。




えぇ⁉︎

一緒に来る理由が分からないけれど...

まあ、特に断る理由もないしご一緒してもらいましょうか!



それに、女神様、結構可愛いし




そんな事を考えてると

「さあ、ナナシ!貴方が望んでいた異世界転生の準備ができましたよ」

と言われたので女神様の方を向くと、大きな虹色の穴が開いていた。




多分、この穴に飛び込めば異世界に転生ができるのだろうけど、不安だ。

異世界転生して、名前を捨てたにも関わらず、落ちこぼれの自分を変えられなかったら...


もう自分を変えられることは二度とないだろう。




そんな事を考えていると

「さあ、ぐずぐずしてないでレッツゴー!」

という声が聞こえると同時に、背中をポンと押され、俺は虹色の穴に落ちた。


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