行動不能になった訳
「なみ」クラス、今の「なみ」は最新護衛艦だが、今回の「なみ」は一代前の艦のお話です。
この「なみ」は細い艦橋と煙突、それにメインの武器が手動装填の連装砲で、ミサイルやロケットは搭載していない大戦中の駆逐艦とほぼ同じ艦である。
形から言うと、なんか丸っこい印象を受ける。あ、この艦は夏になると天幕を全体に張る。甲板が焼けないようにだ。
「くも」クラスからは玄門の一部分だけ張る。それは「くも」クラスから冷房が入る様になったからだ。そう、「なみ」クラスには冷房が無かった。きっと夏は地獄だったことだろう。
そう、事件が起こったのはそんな暑い日だった。
その日幹部から突然のお達しがあった、「しばらくの間整列は中止するように」と、なぜだか分からないが私達にとっては喜ばしい事であった。夜の苦行が無くなるからだ。
しかし、なぜその様なお達しがされたのか、よくよく聞いてみると「なみ」クラスでの整列での出来事が原因らしい。
古い艦ほど整列は厳しいと言われている。「なみ」クラスは自衛艦では一番古い艦だ。古い艦でも掃海艇や駆潜艇などの小さな艇では家族のような感じだと言われている。
で、問題の整列だが詳細はと言うとー。
良く晴れた夏の日、何をやったのか海士達は昼間に前甲板に集められた。これは異例な事である、だいたいは夜巡検が終わった後に整列は行われるが、昼間は聞いたことが無い。
だが、整列は行われた。
兵長次第でどのような整列が行われるのか変わってくる。「なみ」の兵長はまず正座させて長々と説教をするタイプだった。
そう、これが夜だったら問題は無かったのだ。昼過ぎの最も暑い時間帯に行ってしまったのが問題だった。
結果、海士達は足に重度の火傷を負ってしまい全員入院することとなった。なので元々人員不足だったのに下っ端がほとんどいなくなってしまったので出航が出来なくなってしまった。
兵長は甲板が焼けている事は知っていたはずである。たぶんこれも罰として座らせていたのだろう。
ただ兵長の予想より甲板は熱かった。
驚くのは海士達の根性である。いや、ただ単に兵長が恐かったのだろう。