窃盗よりたちが悪い?
「姉さん、事件です! あ、じゃなくて私には兄貴しか居ません」
いゃあ、最近血圧が高くー、それも違くてー「まきぐも」で事件が発生したのです。
盗難事件です。乗員の財布が次々と消えて行きました。と、書くとどんな怪盗だよ! てぇ思いますが違うのです。
原因は財布の仕舞い場所にあるのです。みんなどこに航海中を含め財布を置いていたのか、それはベッドの下です。
三段ベッドのマッドの下に貴重品は置いてあったのです。
みんなちゃんとカギ付のロッカーを持ってますが、一々仕舞うのが面倒でベッドの下に挟んで置くのです。
それを狙われてしまいました。
艦内に自分の財布を盗んだ物がいる、となると気分所ではありません。
CPO(先任海曹室)では何とか犯人を割り出そうと、ワザと机の上に一万円を置いてみたりしましたが、いつの間にかその一万円も無くなっていました(当たり前である)。
そして居住区だけではなく補給酒保の部屋にあるお金も無くなった所で、自力で見つけることが困難と判断した幹部は「警務隊」を呼んだのです。
あの白いジープにパトランプ、カッコいいです。
ゾロゾロと艦内に乗り込んできます、指紋の採取をしている様です。
私は当時補給の方々と交流がありましたので、指紋を取られました。疑われているようです。
五本の指全ての指紋を横からグルリと回す様に取られました。
そして直ぐに犯人が特定されました、流石警務隊は優秀です。
犯人は……私の同期でした。
そいつは金遣いが荒かったようで私や別の同期からもお金を借りていた様です。
そしてそいつは艦を下りて田舎へ帰って行きました。
そいつの下宿の後に私は入ったのですが、高級な衣服が残されていました。
布団と一緒にそいつに送ると約束したのに入れるのを忘れてしまいました、ゴメンネ。
それと貸した金額忘れてて……適当に金額設定してゴメンナサイ。ここで謝ります。
もう三十年以上前の事だから……、時効だよね? ね?




