あれ? 自衛隊の解説してない。
「3」「2」「1」「ドカ――ン」
「わーーい」「なぜなにじえいたい」
画面が切り替わり、衝立の上で体をクルクルと左右に動かすまきぐも君が映し出される。
「やぁ! 一週間の御無沙汰だったね、元気してたかな? ぼくは元気だよ。色んな大人の事情と言う奴でね、察してくれよ。てぇことで解説の和美お姉さんを呼ぶよ。おねーさーん!」
トボトボと暗い顔をした和美が下を向いたまま歩いて来て、まきぐも君の横に並ぶ。
「……解説の和美だにゃ。あぁ……もうダメ……にゃ」
「ど、どうしたのお姉さん、先週はあんなに元気だったのに」
「……まきぐも君どうしよう、パチンコやっちゃった。借金、増えちゃったにゃ、お母さんや友達にもう二度とやらないしパチンコ屋の前も通らないって約束してたのに。あ……死のう」
歩き去ろうとする和美をまきぐも君が呼び止める。
「ま、待ってお姉さん! 詳しく話してよ。事としだいによってはー」
「助けてくれるの? まきぐも君。あのね先週ギャラが入ったんで1円パチンコで千円だけ、千円だけやってみようと思ってパチンコ屋さん入ったの、そしたらー」
「勝っちゃったんだね」
少し顔を上げて喋り出す和美。
「そうなの! 千円が何と一万円になっちゃったの、それが三日続けてよ。もうこれは来てる! と思ったわ」
「な、何が?」
「私の時代がよ! それで4円の方へ行ったの、そしたらー」
「ボロ負けしたんだ」
「う、うん……。そこで止めておけば良かったんだけどね、なんかスイッチ入っちゃって一発台で逆転しょう! と思っちゃったの。知ってる? 沼、男性の声優がカッコイイの」
「あ、思っちゃったんだ。うん知ってる漫画やアニメで見た」
フッ、と和美は遠い目をする。
「アレね、間違って当たりでもないのに当たりの穴に玉が入るとね、女性の声で『エラーが発生しました』てぇ言うんだよ。ハハ、当たりの穴に入っているのにね、可笑しいよね」
「そんな事があるぐらいやり込んだんだな」
「気づいたらね、新しいカード作っててね……、パチンコ屋さんの中にATMがあるって便利だけど、便利だけど……グッ」
「お前又サラ金からー、いくら借りたんだ!」
「ウッ……、三十万。かな」
「おま、限度額いっぱいじゃないかっ。クッ、後で相談にのってやるからいい加減始めるぞ」
「ホント? お願いねまきぐも君にゃん!」
少し明るい顔になる和美。
「ったくぅゲンキンな和美お姉さん、先週の続きを始めるよ」
「え、現金くれるの? ありがとう! まきぐも君」
「誰がやるかっ! えっ、もう時間?」
「えっ、あ、しまー、このまま放送されたら又パチンコして借金したことお母さんや加代ちゃん達にー、あぁぁぁっ」
「落ち着け、いくらなんでもこのままーえっ? 今日は生?」
ガコン! 終了のテロップが上から落ちてくる。
「だー、どうするよーこれー」
「まきぐも君、これで終わったりしないよねぇ」




