急降下爆撃とケツバット
「整列」それは初級海士にとっては恐怖の対象であった。
どんな時にこの整列が行われるのか、それは気が緩んで失敗した時だ。
どのような失敗かと言うと、居住区に用意されているコップが汚れたまま洗われていなかったり、朝の海上自衛隊第一体操に遅れてきたり、気を張っていればやらないミスだ。
こう言う事が起こると兵長(海士で一番古い)が「今夜整列をする、巡検が終わりしだい前甲板に集合」と、言う。
そして私達はー、「今度は誰が失敗したんだよー」「〇〇だよ、あいつ当番の時にマイクで竹下海曹を呼び出すときに、竹下海曹玄門ってえ言っちゃったんだ」「あー、そりゃマズイ」(マイクで呼び出すときは竹下三曹と階級をちゃんと言わないとダメ)
そして私達は夜の八時過ぎに前甲板に整列をする。
始めはサイドパイプの練習だ、このサイドパイプは号令の種類で吹き方が変わる。これについては又後ほど。
そして、のっしのっしと兵長が現れる。
年齢的に三曹になっていてもおかしくないのだが兵長をやっている、つまり試験に落ち続けているのだ。
兵長はお怒りだ、説教から始まっていよいよ「前支え」だ。これは「急降下爆撃」とも言われる。
これは前支えの格好が九九式艦爆に似ていることから、そう言われるようになった。
まぁ腕立て伏せ、の格好だが違うのが足を中断のハンドレーンに掛ける所だ。
ハンドレーンは甲板の外側を囲う三本の鎖だ。その真ん中の鎖に足を掛けると体が甲板と平行になる。
これを長くやってると段々腰が落ちてくる、弓なりになってしまう。するとー。
「こらっ! 腰が落ちてるぞ、ちゃんと伸ばせっ!」
と、腰を踏みつけられる。
次は「精神注入棒」だ。これは気合いを入れるのには丁度良い、何より一瞬で終わるしね。
ただし、尻を叩くのも上手い人と下手な人が居る。上手い人は思いっきりが良く痛みが尻から頭へ抜けていく感じがする。下手をすると太股を叩いたりするから大変だ。
「お願いします!」
「よし、尻出せ」
「はい!」
スッパーーン!
「クッ、ありがとうございましたっ!」
「よし、次っ!」
整列の後、皆でシャワーを浴びると、尻の赤くなった所を見せ合い。
「お前の尻は叩きやすかったぞ」
とか言われて笑い合ったのを覚えている。良い整列だった。
これに対し悪い整列も存在する。我々が体験した事では無いが。
次は最悪な整列です。