航海直と哨戒直。
「3」「2」「1」「ドッカーン」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
「私疑問に思うんだけど」
「うお、いきなりかい ! まあいいけど何かな」
「先週一か月の半分は海の上っていってたじゃない」
「ああ、言ってたね」
「それって二週間ぐらいずっと海の上なの ?」
「あ、いやごめんごめん。言い方が悪かったな、航海は三日から五日が多いんだ。もちろん佐世保を出て佐世保へ帰るのが多いんだけど、他の港に行くこともある」
「へー、じゃあ一週間とかも無いのね」
「いやたまーにそぉゆぅ訓練もあるよ。遠洋航海とかね、一週間以上航海することが」
「そんな時休みはどおなるのよ」
「訓練が無くなるだけかな。航海中だから上陸もできないしワッチも続く」
「訓練が無いだけでも休めるものなの ?」
「うーん、階級が下だといつも周りに気を使っているからハッキリ言って休めないね。でも飲酒が許可されたり釣りが許可されたりするよ」
「航海中だから飲酒運転ね」
「『まきぐも』ではウイスキーや日本酒何でもあり、だったんだけど『しまゆき』ではビールに限定されてたなあ」
「艦での違いがあるってえこと ?」
「うん、私はこの二艦しか知らないけど艦長次第でいろいろ変わるもんだと思う。典型的なのがワッチだね」
「どんな風に違うの ? さっきからワッチてぇ言ってるけど艦橋当直だよね」
「そうそう一分隊だから当直は艦橋なんだ。それでワッチ(当直)なんだけど最大五直制まであるんだ」
「あっ、知ってる五直って遠洋航海の時でしょ」
「正解。では四直は ?」
「えっ四直 ? 艦内哨戒は三直からだからー」
「答えは航海直。戦闘行為をしていない普通の航海、だからヘルメットもカポック(救命胴衣)も着けずに艦橋に立てる」
「えーっ、あんまり聞いたことないわっ」
「『まきぐも』に乗艦してた頃は出航してしばらくはこの航海直だったんだ。訓練開始前に哨戒配備が普通だったんだけどー」
「『しまゆき』では違ってたのね」
「うん、なぜか『しまゆき』では航海保安が解除されるなり『艦内哨戒第三配備、第三直当番残れ』の号令が入るんだ」
「へー、やっぱり艦長しだいなんだ」
「一番違いを感じたのは遠洋航海の帰りの航海かな」
「帰りっていうとハワイから横須賀まで ?」
「それは『しまゆき』のときだね。『まきぐも』ではフィリピンから横須賀までだったけど、ぜんぜん違っていた」
「どんな風に ?」
「『まきぐも』では訓練が全く無くなってた。ワッチも五直制だったから物凄くゆっくりできたよ怖いぐらいに」
「半年ご苦労様~、てぇ感じだったんじゃない」
「ところが『しまゆき』ではいきなり艦内哨戒第三配備で訓練の連続。何をとち狂ったかって思ったよ」
「もうすぐ終わりだけど気合入れちゃう !! てぇやつよきっと」
「そうだろうけど遠洋航海だよ、ハワイから横須賀まで一週間だよ、酷くない ?」
「まーまー、それでその艦内哨戒なんだけど第一と第二はどんなの ?」
「おっと、それは次回へ回そう。それじゃあみんなー」
「「バイビー」」
ガタン、と終わりのフリップが落ちてくる。




