その 四。
「3」「2」「1」「ドッカーン」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
「よし、続きだ」
「ねえ、挨拶しなくていいの ? 最近ぜんぜんやってないじゃない」
「い、今は特別編で短くやってるからいいの。さっ、続き続き」
「はいはい、確か双眼鏡で直接太陽を見て目が潰れた話だったわね」
「潰れてないから、少し痛めただけだから。とにかく北の、それも冬の空気は澄み渡っているてえこと」
「フムフム、それで同じ水平線でも南と北では距離が違うと ?」
「まあそんなには違わないけどね。なんせ北では水平線の向こうに居る船が見えるんだから」
「水平線の向こうに居る船 ? もしかして虹を渡ってるの ?」
「虹の話はもう止めろ、しつこいぞ。水平線の向こうだからマストしか見えないんだけどね」
「待って、それってどれだけ離れてるの ?」
「うーん、一万五千からー二万メートルは無いぐらいかな」
「へーそんな遠くまで見えるんだ。それにしても水平線からマストがニョキッて伸びてる所私も見たかったなぁ」
「マストかぁ、それで失敗してるからなぁ」
「あっ、前にもそんなこと言ってたわね」
「うん、普通マストはほとんど白で斜めになってたり途中で二つに分かれたりしてるんだけど、ある日見つけたマストは濃いオレンジ色で一本だけ真っ直ぐ立っていて横に幾つも線が入っている変なマストだったんだ」
「ほうほう、それで艦橋にはどう報告したの ?」
「マスト一本、右三十度、水平線、動静不明。とね」
「そしたら ?」
「そしたら急に環境が騒がしくなってー、どうやらソナーがその方向に潜水艦らしき物を探知したみたいなんだ」
「えっ、潜水艦 !? どこの ?」
「もちろんソ連のさ、国境が近いから十分あり得るんだ。見張りの間では潜望鏡を見つけたら賞与がもらえるらしい、とか言われてたぐらいに」
「すごいじゃない、で、いくら貰ったの ?」
「ちゃんと聞いてた ? 私は潜望鏡とは言わずマストって言ったよね」
「でもそれ潜水艦の潜望鏡だったんでしょ ?」
「たぶんね、でも潜望鏡って水面から頭だけを少しだけ出すと思うだろ ? あれってめぇいっばい伸ばしてる感じでとても潜望鏡とは思えなかったんだ」
「怪しいのは全部潜望鏡って言ってたら……そうなんだ、おしかったね。で、結局探知した潜水艦はどうなったの ?」
「うんロストしたらしい。私も直ぐに探したんだけど全然見つからなくてー」
「とっくに潜航してたんだね」
「よし、今日はここまで。久々に長く話したら疲れたよ」
「おおっ、この分だと完全復活は近いんじゃない ?」
「いや、まだまだだよ。それじゃあみんなー」
「「バイビー」」
ガタンと終わりのフリップが落ちてくる。




