ピカール、ピカルとぉーしば、まわーる、まわる……。
航海中の入浴は十九時の甲板掃除前後に行われる。
浴室機前部と後部の二か所、約六畳ぐらいの広さに何とか人が二人入れる浴槽がある。
勿論海水風呂だ。しかし、この浴槽に入ったことが無い、ほとんどシャワーで済ませる。
そのシャワーも六個しかない、考えてみてほしい、二百人が時間を決められて入るのだ、どうなるか。
そう、浴室に入れない。入っても腰を曲げる事も出来ない満員電車状態である。
それだけではない、上下左右に激しく揺れる。これでは入りたくなくなる。
しかし、班長から怒られる。
「お前ら! 臭いだろうが、ちゃんと体を洗え!」と。
仕方なく洗面所まで使ってシャワーが空くのを待つ。
士官の浴槽は艦中央にあり、大きさも変わらない。
掃除にしか入った事がないので良く覚えてない。因みにトイレも別だ。
便器もステンレス製なのでピカールるで磨いていた。
ピカールは至る所で使っていた、護衛艦には真鍮が良く使われていたからだ。
一生懸命磨いていたのがラッタルの滑り止めだ。
どれぐらい磨いていたのかと言うと、溶けて薄くなる程だ。
まったく、滑り止めを滑りやすくしてるとは。
後はハンドレールのタンバックルだ、分かるかな? 分からなかったら近くの自衛管に聞いてくれたまえ。入港時にはこれを磨くのが定番だった。
ああ、なんか今日は面白くないね。えっ、いつも? そ、そうかなぁ。




