拾った物は正直に届け……なくてもいいんじゃないかなぁ。
上陸。一般の人は毎日町へと繰り出せるが私達は一ヶ月の半分以上海の上だ。
更に入港しても当直がある、階級が低いと二日にイッペンとか三日にイッペン当直がある。
私達にとっては貴重な上陸なのだ。なので罰則として「上陸止め」がかなり有効なのだ。
上陸するためにはオレンジ色の紙に番号が書かれた縦横三センチほどの上陸証とカマボコ板でできている(多分)上陸札が必要だ。
上陸証は無くすと大変なので身分証明書の横に差し込んでいる、身分証明書は鎖付の定期入れに入れている。
上陸札は板に名前と右舷左舷どちらかが書かれていて、上陸時に絃門当番に預ける。
朝に帰艦すると分隊毎に札が並べてあるので、それを取って艦内に入る。
なので誰がまだ帰って来てないかすぐわかる。当時は携帯とな無いので早めに対処しないといけなかった。
幹部は名前の書かれた札があるので艦内に居る時は黒い字、居ない時はひっくり返して赤い字にする。
それをやるのが絃門当番だが、私は顔と名前を覚えるのが大の苦手だった。
「何をやとるんだ! 艦長はもういないぞ」
「ああ、あの人が艦長だったのか」てな感じ。(実話)
私はこの上陸で何回も失敗をして、それこそ何回も上陸止めを食らっている。
その一つが上陸証偽造事件だ。
ある日私は身分証明書を見て愕然となった、定期入れの透明な部分が割れて上陸証がそこから落ちて無くなっていたのだ。
これでは上陸ができない! と焦った私は正直に言えば良い物を上陸証を偽造した。
ノートを切ってその大きさにして、色を塗り自分で上陸証と書いたのだ。近くで見なきゃ分からない、私はこれで数日乗り切ったのだが、ある日突然。
「おい、全員の上陸証を見せろ」
「げげっ!」年貢の納め時である。
どうやら誰かが拾って届けたらしい。……チッ




