並走するのは難しいよね。
二隻の艦が横に並んで走る訓練があります。
一つは「洋上給油訓練」文字通り補給艦から走りながら給油する訓練です。
そして「洋上移乗訓練」これも文字通り走りながら物や人を移送する訓練です。
最後にサンドレット「投擲訓練」これは艦どうしでの競技でもあります。
先ずは「洋上給油訓練」ですが当時補給艦は旧式の「はまな」しかおらず、そんなに頻繁には行われなかった。と思う。
まず補給艦の後方に待機して順番が来たら近付いて行く、真横三十メートル辺りに来ると補給艦から舫い投射策が飛んで来る。
舫い投射策と言うのは火薬で軽い重りを飛ばして相手にヒモを送る道具だ、受け取った私達はこのヒモにロープを繋ぐと相手側はそのヒモを引っ張る。
相手側にロープが届くと今度はそのロープに舫いを繋ぐ、そうして相手の艦と繋がるのだ。
詳しいことは分からない、当時私は艦橋当番でマイク係だったのだ。
なので号令などをマイクに向かって叫んでいた。
その中で「舫い投射策が来る、物陰に入れ」の号令が・・・・・・、言えなかった。
元々口べたで滑舌が良くなかった私をよくもまあマイク係にしたものだ。
舫い、とうしゃしゃく、も、舫い、どうしゃしゃしゃ・・・・・・・、ううっ。
次に「移乗訓練」だが遠航等では実習幹部が移乗していた。
舫いを繋いでその舫いに椅子付の籠を吊して、そのかごに乗せて移乗させる。移乗する者はなかなかのスリルを味わう。
勿論並走して走るのだから離れたり近付いたりを繰り返すからだ。
片方が舫いを固定して、もう片方は舫いを引っ張りながら調節しなければならない。
緩めすぎると海へボチャンだ。
あ、この時私は前甲板で距離策なるものを引っ張ってました。
距離策とはロープに距離を表す色が巻かれており、艦橋から見て直ぐに相手との距離が分かるようになっています。
これも相手側に固定して、こちらで引っ張ります。前甲板なので風が強かったり波が高かったりすると大変です。
緩まないように引っ張っていないと正確な距離が分からなくなります。
一度移乗訓練中、両艦が急接近したことがあります。それこそ移乗するのに籠なんか必要ないぐらい、手を伸ばしてまたいだら相手の艦に移乗できるぐらいに。
一瞬乗り移ってやろうか、と思ったのですが・・・・・・後の事を考えて止めておきました。