思い出した!
思い出した、まきぐもに乗艦中一度だけの訓練があった。
それは僚艦が機関故障、又は被弾の為航行不能となった。という想定で僚艦を曳航する訓練だ。
一度だけだったので良くは覚えていないが覚えている事だけをお話ししよう。
この訓練が行われたのは午後からで晴れ渡る空の下、波もあまり高くない絶好の訓練日和だった。
我らがまきぐもは艦を引っ張る役になった、引っ張る役になると色々と準備する物がある。引っ張られる艦の方は錨を外して錨鎖にワイヤーを付けるぐらいの作業で終わる。
さて、用意する物はロープと舫いとワイヤーだ。それとワイヤーが勝手に出て行かないようにするストッパーだ、艦を引っ張ることができるワイヤーなのでどれぐらいぶっといワイヤーか想像して欲しい。それを固定できるストッパーは角材を使うのだ、まず角材を三本用意して端っこをボルトで固定する。
そうしたら真ん中の角材を上に上げて下の二本の角材上にワイヤーを並べるのだ、真ん中の角材でワイヤーを挟んで固定する。これを三個から四個使用するのだ。
だけどぶっといワイヤーなので角材の上に並べるのも一苦労だった、スムーズに出せるように8の字を書くように並べていく。
普通の軍手では使い物にならない、革手袋が必要だ。その革手袋もワイヤーのトゲトゲで直ぐにダメになる。
そしていよいよワイヤーを僚艦へと渡すのだが、先ずは僚艦からサンドレッドが飛んで来る。それにロープを括り付けて海へと放り投げる、つづいて舫いで最後がワイヤーとなる。少しずつ大きくしていくのだ。
僚艦も途中まで人力で引き込むのだから、たるませると引き込めなくなる。舫いが届いたら揚錨機に巻き付けて引き込むのだが、無理をすると舫いが切れてしまう。
なのでワイヤーストッパーが必要なのだ。ワイヤーを角材ではさみながらイッキに出て行かないように調節しながら僚艦へと送り出す。
ワイヤーと錨鎖が繋がれたらいよいよ曳航だ、暫く微速で引っ張って航行する。
そしていよいよワイヤーの回収だ、後部には揚錨機が無いので人力でワイヤーを引っ張らないと回収できない。
その時! 登場したのが2分隊のラッパ隊だ。彼等は一段高い所に陣取りラッパを吹く、行進の時のラッパよりアップテンポな曲だ、多分駆け足のときに吹く曲なのだろう。
我々はその曲に合わせてワイヤーから舫い、舫いからロープと次々に艦上へと引き込んでいく、だがワイヤーはメッチャ重かった。更に海水に浸かっていたので赤さびとトゲトゲで又手袋がー。
あ、我々は綱引きのようにその場で引っ張ったりはしない、舫いを掴んだらそのまま後方に走るのだ。そしてある程度走ったら又元に戻って舫いを掴み又走る。
なのでラッパは駆け足ラッパだったのだろう。
さて、今回は一回だけ経験した訓練をご紹介した。もしかしたらまだ忘れている訓練があるかも知れない。




