中が良いことで。フン
「3」「2」「1」「ドッカーン」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
「はい、今週も何故なに自衛隊始まるよー。私は解説の和美お姉さんだよ、そしてー」
「僕は護衛艦の妖精しまゆき君さっ。お姉さん、さっきの僕も一緒に言った方が良かったかな?」
「あら、なに? しまゆき君たら一緒にいきたかったの? ウフ、早く言ってくれればー」
「えっ、お姉さん何やってるの? 衝立の内側に入ってこないでよ。えっ、チョ待て」
「あぁん、しまゆき君何処触ってるの? 相変わらずゴッツい腕ね。挟んじゃおうかな、えい」
「待て和美、それ以上はマジで冗談じゃ済まなくなるぞっ」
「……バカね本番中に、冗談に決まってるじゃない。さあ、今週のお題は何?」
「ふ、フ~ッ、お姉さん冗談がすぎるよ。今週のお題は『ピカール』だよ」
「ピカール! ピカールは護衛艦には無くてはならないアイテムよっ!」
「うわ、凄い食いつきだねお姉さん」
「まあ主に1分隊だけどね」
「なんで1分隊なの?」
「いい? しまゆき君、護衛艦は見た目を重視するの。入港するときは何時も真水で船体を洗うし、他の港に入る時やイベントがあるときはわざわざ塗装してから入港することもあるのよ」
「それとピカールとはどんな関係なの?」
「良く聞きなさいしまゆき君、艦上の金物は錆びないように殆ど塗装してあるの。でも一つの金属だけ塗装しないわ、その金属と言うのはー」
「その金属は?」
「真鍮よっ」
「真鍮?」
「そう! ピカールで磨けば黄金の輝きを取り戻す希有な金属、航海を重ねると真鍮はどす黒青く変色するの、それをピカピカにするのが海士の使命!」
「真鍮てそんなに使われていたっけ?」
「うーん、あんまり使われてないわね。良く使われているのがハンドチェーンに使われているバックルね」
「ハンドチェーンというのは艦の外周を囲っている鎖のことだね」
「そうよ、そのチェーンが緩まないように締め上げるのが真鍮でできているバックルなの。あとは内火艇の手すりでしょ、ああ、玄門にかける艦名が入った板も真鍮でできてたわね。忘れちゃ行けないのが時を知らせる鐘も真鍮ね」
「たしかラッパも真鍮だったよね」
「ああそれは2分隊ね、あれもほっとくと直ぐ青くなっちゃうのよ。うん、兎に角私達は真鍮を磨きまくったわ」
「でも不思議だね、あんなに海水で黒くなっても新品同様にピカピカになるんだから」
「それがピカールの凄いと頃よ。でも気を付けて、新品同様に光るのは表面を溶かして削ってるからなの」
「ええっ、じゃあずっと使ってるとー」
「すり減ったり穴が開いたりするわね、でも大丈夫ラッタルの滑り止め以外すり減ってるのを見たことは無いから」
「あー、ラッタルはすり減ってるんだ。仕方無いよね階段だもの」
「あらもう時間ね、イッキに喋っちゃった感じだわ」
「だね、最初はどうなるかと思ったよ」
「うふ、今度は皆が見てないところでやりましょうね」
「ああ、いいぞ受けて立つ。今夜あたりどうだ?」
「え、こ、今夜!? あ、何笑ってるのよ、もうビックリするじゃない!」
「ははっ、お返しだ。それじゃあみんなー」
「「バイビーー」」
ガタン、と終わりのフリップが落ちてくる。




