字は右肩上がりに書けってお父さんから教わったんだ。
「3」「2」「1」「ドッカーン」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
「はいどーもー、みんなワクチンはもう接種たかな? 私は先週一回目が終わりました。みんなもしまゆき君の様に怖がらずにワクチンうとうね。あ、私は解説の和美お姉さんだよ」
「だ、誰が怖がってるってっ? 僕は護衛艦の妖精しまゆき君さ、だから僕は妖精だからうたなくてもいいんだよっ」
「またまた、素直に注射が恐いって言えないんだからしまゆき君は」
「ぜってい恐くないし、注射ぐらい何本うたれても屁のカッパだし」
「じゃあ携帯貸して、私が申し込んであげる」
「ばか、こっち来んな。何処触ってんだ! 止めろこら本番中になんてことをー」
「フフッ、良いではないか良いではないか、あれ? 持ってないのしまゆき君?」
「僕は妖精だよ、携帯なんか持ってないよ。それより今週のお題だよ、お題は『手紙』だよ」
「そうね、仕方無いわ今週はこの辺にしときましょうか」
「ほっ。……なんで安心したのか自分でも分かんないけど、今回の手紙は遠洋航海中に作者の両親から来た手紙みたいだよ」
「うん、この手紙は自衛隊から配布されていた封筒みたいね。艦は各寄港地を点々してるから、港に入っている三日間のうちに手紙が届かないと宛先不明になっちゃうからね。気を付けないと」
「あ、そうか、特に今回お金を同封してるからね」
「そうよ、作者が遠洋航海中にお金を使いすぎて両親に助けを求めたのね。でも丁度東南アジアに入ってたから当時ちゃんと届くのかが分からなかったのよ」
「作者が原因だったんだね」
「まあそれでも二万円が入っていたそうよ。それと両親とお兄さんからの手紙が」
「心配してたんじゃないかなぁ、お金がない、とか手紙で伝えてたから」
「いいえ、もういい大人ですもの。外国とは言え食べ物も寝床もちゃんとあるし、数百人規模で移動してるんだもの、そんな心配は無用よ」
「手紙にはどんなことが書いてあったのかな?」
「プライバシーに関わるので詳しいことは言えないけど、作者の字が汚いって父親から苦言を呈されてるわ」
「物書き目指してるのに字が汚いって……」
「まあ当時はそんなこと考えて無かったし、手紙なんか出したことは殆ど無い生活をしてたのよ」
「日記とか書いて字の練習したらいいのに」
「あぁ無理無理、絶対続かないわよ。作者はもの凄く飽きっぽいから」
「そっかぁ、字は心を映す鏡、とか言うもんね。たしかお姉さんもー」
「アラ! もう時間よしまゆき君」
「えっ、まだ少し早いよお姉さん」
「いいえ、もう時間よ。それじゃあみんなー」
「ええっ「バイビーー」」
ガタン、と終わりのフリップが落ちてくる。




