昔のテレビはスイッチ入れてから暫く待たないと映像が現れない。
「3」「2」「1」「ドッカーン」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
「はーーーい、みんなーー元気してたーーー、解説の和美お姉さんだよーーー! そしてーー」
「ぼ、僕は護衛艦の妖精しまゆき君さーー。釣られちゃったけど今週は元気だねお姉さん」
「フッフッフー、なんでだと思う? しまゆき君」
「うーん、卵の黄身がニコ入ってた! とか、おみくじが凶じゃなくて末吉だったとか」
「……私そんな不幸じゃ無いわよ。一体私を何だと思ってるのよしまゆき君、ポイントよポイント」
「ポイント?」
「そう、この番組の評価ポイントよ。この間なんと! 二百を突破してドンドン増えてるのよっ」
「へぇ、それは凄いね。で、他の番組のポイントは平均どれぐらいなの?」
「えっ、他の番組? えっとー……知らないー、かな」
「それじゃあどれぐらい凄いのか凄くないのか全然分かんないじゃ無いかっ」
「い、いいの、ポイント増えてるからいいのっ。気にしたら負けよしまゆき君」
「……ハイハイ、じゃあ先週の続きお願いするよお姉さん」
「う、うん、任せて、今週もドンドン増えるように頑張っちゃうから。先週はー……どんな話しだったっけ?」
「・・・・・・」
「呆れないでよしまゆき君、なんか言ってよっ。あっ、思い出した、確か大砲の話しだったわよね?」
「ハァ~~そうだよ、今週は三インチ砲の動力の話しだよ」
「そうそう、動力の話しよ。もちろん覚えてたわよ、えっと三インチ砲の動力室は第6居住区の中にあってハッチを開けると四畳半ぐらいの部屋の中に食器棚みたいなのが三っぐらい並んでいて、その中がぜーーんぶ真空管なのよ」
「まあ昭和四十年頃に作った艦だからね、仕方無いのかな。この頃の古いテレビもラジオも前部真空管だったし」
「そうね、でもスイッチ入れても真空管が暖まるまで動かないんだから大変よね」
「でもそれだけの量の真空管が一斉に光るところ見てみたいね、お姉さん」
「うーん、なんでもブ~~ンという音と共に一斉に青白く光るので恐いと言うか、身体に悪そうな光だったそうよ」
「……そうなんだ、見なくていいや」
「動力に関してはこんな所ね、他に何かある?」
「他にはー、そうだ! 僕の七十六ミリ単装速射砲は全自動だよね。つまり中に人が入らない」
「そうね、後方にハッチがあるけど、そこから出入りしているところは見てないわ」
「だよね、なら弾薬の装填はどうなってるの? 全自動でもパッケージから取り出して装填しなきゃ撃てないじゃん」
「あーっ、しまゆき君もう時間だよ! 今週はここまでだよ」
「まだ大丈夫だよお姉さん、ねえ、どうやってるのお姉さん」
「うっ、うー、終わりっ、終わりったら終わり。それじゃあみんなー」
「「バイビーー」」
ガタン、と終わりのフリップが落ちてくる。
「ねえ、ねえ、お姉さん、おねーさーん」




