航海中二曹は当直の時、艦橋でコリコリと机に漫画を描いてたんだよ。
「3」「2」「1」「ドッカーン」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
「はーーいみんなー、元気してた? 解説の和美お姉さんだよー。そしてー」
「僕は護衛艦の妖精しまゆき君さ、お姉さん事件です!」
「なに急に、昔のドラマのマネ?」
「あ、いやそうなんだけど、そうじゃ無くて今週は事件のお話だよ」
「なに又財布でも取られたの? あれほどベッドの下に貴重品を入れずにロッカーに仕舞えって言われてたのに」
「そっちの方の事件じゃ無くてー、えっと事故かなぁ」
「なによ、事故なら事故ってちゃんと言いなさいよ」
「あ……、ゴメン」
「で、その事故ってどんな事故?」
「えっとね、まきぐもじゃ珍しくヘリが関わってるんだ」
「へえ、ヘリ甲板を持たない「まきぐも」にヘリが近付くなんて今まで無かった事ね」
「うん、きっと近接訓練か物資の移送訓練なんだろうね」
「まあそんなところでしょうね。でもヘリを誘導できる人が「まきぐも」に乗っていたなんて知らなかったわ私」
「そうだよね、それも1分隊の若い二曹なんだって。普通誘導員は五分隊なのに凄いよね」
「……しまゆき君、今日は何気に解説してるよね?」
「お姉さんが打ち合わせにちゃんと来て、予習もしているなら僕は聞き手のままでいられたのにね」
「ゴメンナサイ、ご迷惑をお掛けしてます」
「そんな道路工事の看板みたいに謝らなくてもいいよ。で、ここからが人為的事故なんだって」
「人為的?」
「そうなんだ、誘導をする二曹は三十二番砲の上に登って誘導をしたんだけどね」
「待ってしまゆき君、まきぐもにはそんな三十個以上も大砲積んでないわよ」
「……わざとだよね? お姉さん、30と言うのは三インチの事で32番は後部の砲と言う事だよ。因みに前甲板にある砲は31番砲って言うけどね」
「え、そうよ当たり前じゃ無い、わざとよワザと。それで誘導中に何がおこったの? ねえ、ねえ!」
「はいはい、風圧に耐えて誘導してヘリが最接近しているときに大砲が動き出したんだよ」
「えっ、そんなことしたら立っていられないじゃないの? 何で動かしたの?」
「そうなんだ、二曹はバランスを崩してしまい大砲から落ちそうになるし、ヘリは緊急離脱で離れるし大変だったらしいよ。なんで動かしたのかは多分砲身が気になって砲身を横に向けたかったんだろう。てえ言ってたよ、だったら始めから横に向けとけよ、てえことだよね」
「砲身て、あんな短い物が気になったの? まあそれだけヘリが近付いてたのかな?」
「まあ作者も直接は見てないし、漫画で見ただけだから何とも言えないんじゃないかな」
「下手な漫画まで描いて皆に知らせたかったのね」
「そうだね。あ、もうそろそろ時間だよお姉さん」
「あら、でも解説はまだ残っているんじゃない?」
「うん、あと大砲の動力の解説があったんだけどこれも又来週でいいよね」
「ええ、来週は私がちゃんと解説するわね。それじゃーみんなー」
「「バイビーー」」
ガタンと終わりのフリップが落ちてくる。
「予習もちゃんとして来てね、お姉さん」
「……うん、頑張る」




