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予定外

 続きです。

 他の三群の艦「もちづき」等の月クラスと合流し、艦体を組んだ私達は訓練海域F海域へ到着しました。

 勿論今の月クラスではありません。

 艦首にボフォースを搭載した、一つ前の艦です。

 嵐の日このボフォース発射管が、波にさらわれて捥げてしまったのは有名な話。

 おっと、話がそれました。

 旗艦の「くらま」と月と雲なんか花札が出来そうな艦体で、訓練を始めます。

 午前中、陸上から発射された対艦ミサイルの命中後を調べに何名かが標的艦に乗り込みました。

 小型のミサイルだったらしく、艦橋の横に人が一人立って入れるほどの穴が開いているだけでした。

 午後から射撃訓練の開始です。

 標的艦の周りをグルグルと回りながら約七千から八千離れて射撃開始です。

 各艦が順番に射撃を開始していきます。

 「対艦戦闘ーー! ぅちー方始めー」

 全ての艦が射撃を終えましたが、標的艦は変わらず確りと浮いています。

 命中弾があまり無かった様です。

 まあ、これも予定の内で止めは潜水艦の魚雷で行われます。

 私は夏の日差しに照らされながら、甲板で標的艦に魚雷が命中する所を見てやろうと、ずっと待ってましたが、魚雷が標的艦の艦低を通過したらしく、やり直しも含め二本発射したそうですが、とうとう命中はしませんでした。

 ここから訓練の歯車が狂い始めたのです。


ここで問題です、外れてしまった魚雷はこの後どうなったでしょう。

① 永遠と走り続ける。

② リモコンで爆破。

③ 関係ない船に当たって大爆発。


 答えは、魚雷には海水で溶けてしまう所があり、溶けた場所から海水が浸入して浮力を失い海底へ沈んで行く。でした。


 だけど一発数千万の魚雷を二本も使ってしまいました。

 せめて大爆発する所が見たかった。


 話を戻して、予備の弾薬を使って再び射撃が開始されました。

 でも予備ですから大量には使えません。

 「まきぐも」予備弾を使いつくして、戦闘配備を解除。夕食の準備に掛かりました。

 他の艦では、まだ射撃が続いています。

 私は士官室係でしたので、士官室で夕食の準備をしていました。

 するとー。


 ズズン! ズズン!

 と、まるで射撃を開始した様な振動が伝わってきました。


 あれ? おかしいな。と思っていると艦橋からワッチで見張り員だった者が下りて来ました。

 なんだか様子がおかしいです。


 どうした? と聞いてみると。

 

 初めて弾丸が風を切る、シャリシャリシャリ! という音を聞いた。と言うのです。

 詳しく聞いてみる。

 彼は艦橋の右見張りとして立っていると、先ほどの風を切る音がして艦の前方十メートル程の所に水柱が二本上がった。

 一瞬艦橋の皆は固まった事でしょう。

 艦橋は大騒ぎになりました、直ぐに第二斉射が来て命中するかも知れないのです。


 しかし幸いなことに、二回目はありませんでした。

 原因は夕方になり、シルエットが標的艦と似ているために砲口監視員が間違えてしまった。

 らしいのです。


 もし、命中していたら戦闘配備をしていない「まきぐも」は沈むのに、そう時間はかからなかっただろう。

 それに対して標的艦は一向に沈む気配がありません。

 やはり大砲だけで沈めるのは時間が掛かる様です。

 んでとうとう痺れを切らして、ギリギリまで近づいて喫水線の所に五インチ砲で穴を開けて沈めました。

 標的艦が沈む時に甲板上に整列します。 

 もしかしたら自分が乗る艦が、あのように沈んだかも知れないと思うと……。


 そしてこれには後日談があります。


佐世保に入港して上陸が許可される時、当直士官からこう言われました。


「今回の訓練で我々が射撃を受けた事は、絶対に口外してはならない!」と。


 私達が上陸してから直ぐに「シーラブ」というスナックに飲みに行くと、ドアを開けるなり……。


「あなた達、撃たれたんだって? 大丈夫だった?」


 と聞かれてしまった。


「えっ、どうして知ってるの?」


 と聞いてもその女の子は「ウフフフ」と笑うだけでした。

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