ふぅ、来てくれる人が増えるといいな。
「3」「2」「1」「ドッカーン」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
いつものスタジオに何時もの二人が並んで立っているが、和美は思いつめた表情をしている。
「・・・・・・・・・」
「ど、どうしたのお姉さん、黙り込んで。もう始まってるんだけど」
「……まきぐも君、聞きたいことがあるの」
「……和美お姉さん。それより早く自己紹介をして始めないとー」
「いいから聞いてまきぐも君、まきぐも君は何で変身を解かないの?」
「えっ、だって今解いたら番組がー」
「先週からずっとその格好だよね?」
「うっ、それはー……」
「ねえどうして、まきぐも君。やっぱり元の人格にー」
「違うよお姉さん! 僕は僕だよ! 元の人格なんて存在しない、元々僕なんだから!」
「だったらなんで元の、人の姿に戻らないの?」
「そ、それはー、この格好が好きだからさ、人間に戻る必要性を感じないね」
「うそ、まきぐも君はもう分かってるはずよ」
「えっ、なにが? 僕はずっとこのままでもかまわないよ、いやずっとこのままがいいんだ!」
「……そう、もう慣れてしまったのね。その匂いに」
「え……、匂い?」
「そう、物凄いー匂い。隣にいると胃から何かがこみ上げて来るような、甘酸っぱいような兎に角物凄い匂いよ。臭いなんて一言では言い表せないわ」
「そ、そんなに匂うかなぁ。毎日艦体の至る所から海水を噴き出して洗ってるのに」
「それは核攻撃を受けた時、放射能を洗い流すのに使うやつでしょ! 外側じゃなく中身を言ってるのよ!」
「中身?! な、中の人なんか存在しないよ。僕は護衛艦の妖精だからね、だから大丈夫なんだ、匂ったりしないよ」
「クッ、あくまで白を切るのね。分かったわまきぐも君、でも私あなたの秘密を知っているのよ」
「秘密? 僕に秘密なんてー……、あ、もしかしてあの時」
「そう、伊達に元悪の組織の女幹部なんかやってないわよ。ここからはテレビじゃ放送できないから今週はこれで終わりましょうか」
「待ってお姉さん、何その手、怖いよ、ホントに待ってよ、話し合おうよ、ね、お姉さん、僕襲われるの? 無理やり? ……優しく、して」
「ええい。変な事を言うんじゃないわよ! はい、今週はこれで終了! バイビーー」
ガタン、と終わりのフリップが落ちてくる。
「ああん、お姉さんーそこはーー」