次回は終わりの裏から。
「3」「2」「1」「どかーん」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
「・・・・・・・・・」
和美はただ立ったまま下を向き、何も言わないし動かない。
「どうしたの和美や姉さん? もう始まってるよ。ハーイみんな、護衛艦の妖精まきぐも君だよー」
「ハッ! ごめんなさいまきぐも君。みんなー、解説の和美お姉さんだよー」
「もう確りしてほしいなぁ……、でないと僕ー」『いろいろと困るよ』
「ヒッ、いきなり声を変えないでよ! ビックリするじゃない」
「ハッハッハ、冗談だよ。さあ、早くしないと時間がないよ」
「そ、そうね、ではサイドパイプの続きを始めます」
「確かサイドパイプを何処で使うか、で終わってたよね?」
「えっ、そうだったっけ? 二週も前の事だから私ー」
「ハァー、やっぱり覚えてないんだね? じゃあ地域で雑令の音が違うと話したのもー」
「へえー私そこまで話したんだ、……でもこれは話してないよね? 私が物凄く不器用なこと」
「うん、始めっから知ってた。でもただ吹くだけのパイプなのに不器用が関係あるのお姉さん?」
「それが関係オオアリクイなのよ! ……あ、ゴメンナサイつい」
「いいからイッテミソ、お姉さん」
「う、うん、『別れ』号令があるんだけど、これがね、私にはね、難しかったの」
「どんなふうに難しかったの?」
「……舌を使って、ッルルルルルって震わせるじゃない、この号令にはこれを使うんだけどー」
「ちょっと待って、今全然震えてなかったんですけど」
「うん、私これがー、できなかったの。あーそれと、それとね、『総員』という号令があってね、これもお姉さん苦手なの」
「えっ、じゃあ吹けなかったってこと? 大変じゃん」
前かがみになって手もみまでする和美。
「フッフッフ、そこはそれちゃーんと抜け道がありまんがな。旦那さん」
「なに急に、気持ち悪いなぁ。で、どんな?」
「喉を使うの」
「喉を? どんなふうに?」
「こう、うがいをするみたいに。ゴ―――! てな感じで」
「えー、それ大丈夫なの?」
「これが意外と大丈夫なのよ、これは音をニゴすと言って濁らせる手法で古い人ほど良くやってたの。別れ、でやってたのは私だけだけど。吹いてみるわね」
ホヒ~~ホ~~ヒッ!
「最後にヒッ! てえ上げるのが特徴ね」
「えへ、結構カッコいいね。ちゃんと震えてたよ」
「最後にさっき少し話した総員なんだけどー、ざーんねん、今日も時間切れね」
「あ、また次に伸ばしたね」
「仕方ないのよ、時間よ時間。それじゃあみんなー」
「待って和美お姉さん、なんでオンユワマークしてるの? 逃げる気満々だよね?」
「クッ、だってーだってー」
「いいから、そこに座る!」
「は、はい!」
衝立の前に正座する和美。
「よし、それじゃあみんなー」
「バイビーー」「バイビ……」
「ちゃんと合わせろよ」「ご、ごめんなさいー」
ガタン、と終わりの文字が落ちてくる。