いつまで続く事やら。
「3」「2」「1」「ドカーン」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
いつもの様にスタジオが映し出され、和美がウインクしながら前かがみで胸を強調して右手を振っている。
「みんなぁ、元気? 解説の和美お姉さんだよ♡」
まきぐも君は、縦に真ん中から割れたのを無理やり画布テープでくっ付けた衝立の上で和美を見上げ。
「お姉さんどうしたの? 気持ち悪いよ」
「き、気持ち悪いって、ほら大きいお友達が喜んでくれるように、と思って」
「ハッ、物好きなお友達の間違いでしょ」
和美が黒いオーラを纏う。それと、なぜかお尻のシッポが太くなっている。
ガッ! とまきぐも君の手首らしいところを掴んで。
「物好き……まきぐも君、あんた私をゲテモノ扱いするの? そんなことしないわよねぇ?」
「ウッ、そ、そんなことするわけ無いよ。綺麗で可愛い和美お姉さん。痛い、いや苦しいから放してぇ」
手を離した和美は黒いオーラは消えて、バアッと花咲く笑顔になる。シッポも細くなる。
「いやだぁ超美人だなんてほめ過ぎよぉ」
「いや、だれも美人なんてー」
「え゛っ?」
「ヒッ! いやいや、和美お姉さん続き、先週の続きしないとぉ」
ポン、と手を叩く和美。
「そうだったわね、ゴメンネまきぐも君。続きを始めましょう」
「わ、わーい。確か3直の続きだったよね」
「そう、3直の当番さんの時は甲板掃除が1900から始まるの。そして掃除が終われば巡検よ」
「あ、いよいよ巡検ラッパだね?」
「そう、お姉さんはあの巡検ラッパ好きなのよ、なんかしんみりして心に響いてくる。と言うかぁ」
「あー、艦内の特殊なスピーカーから流れる音には味があるよね」
「そうそう、分かっているじゃない。巡検は当直士官がちゃんと掃除ができているのかを見回ることなんだけど最後に絃門に来るの、そしたら当直士官が明日の予定を知らせるの」
「え、当直士官が喋るまで予定が分かんないの?」
「そんなことある訳ないじゃない、ちゃんと予定表が一ヶ月決められているのだから」
「ああ、そうだよねゴメンナサイお姉さん」
「あ、ただね、予定表通りだったらこの後マイクを入れる時も『巡検終わり、明日の日課、定時起床、予定表通り』で済むんだけどぉ」
「うわ、急に予定が変わる時があるんだ」
「そうなの、予定が変わっちゃうとー『巡検終わり、明日の日課、〇五〇〇起床、〇六〇〇出港、午前〇九〇〇より防火防水訓練、一一〇〇から……』と続いて大変なの。言い間違えると直ぐ整列だからね」
「うわぁ、頑張れとしか言いようが無いよね」
「うん、巡検が終わって2200になったら産直は終ね。次は4直てぇことて今日はここまで」
「やっと最後の直だね」
「そうね、でも4直は次の日の朝が本番よ」
「あ、4直が交代するのは次の日の朝だもんね」
「そうよ、じゃあみんな、また来週!」
「「バイビーー」」
ガタン、と終わりと書かれたテロップが落ちてくる。
「和美お姉さん」
「ん、なにかな? まきぐも君」
「実は僕を騙した詐欺師ハワイで見つかったんだ」
「ワオ、良かったじゃない。で、お金戻って来るの? フン、フン」
「鼻息が荒いよお姉さん。でね、お姉さんは……何者?」
「えっ……」