続けてみた。
上を向いていたカメラがゆっくりと元の位置に戻ると、まきぐも君をその意外と大きな胸に抱いて和美は衝立の向こうに話しかけていた。
「さあ、まきぐも君私に話して、何があったの?」
「・・・・・・お前には関係無い」
「関係はあります! このままでは番組がー」
「あーもう! もしかしてお前の爺さんは大金持ちで何処かの有力者か? 若しくはお前自身変な格好しているが、実は影でヤバイ仕事を請け負ったりしている仕事人なのか?」
「例えが古いです」
「う、うるせぇ。で、どうなんだ」
和美はフフッと笑うと。
「期待しましたね? もしかしてってぇ思ったでしょう? でもざぁーんねん、私に親戚も含めてお金持ちなんて一人も居ません。居たらこんなにお金に困ってません、仕事人はーフフッ」
ガタン、と衝立が揺れる。
「な! マジかよお前」
「いえいえ、仕事人は先日夢で見ました、格好良かったですよ私。あ、あぶな、ちょっとー」
衝立が倒れそうになるのを和美が支える。
「この野郎ビックリさせるな、・・・・・・まぁいい、話してやる。けどこの後収録があるから手っ取り早くな」
「うん、野郎じゃないけどね」
「クッ、いちいち・・・・・・。あー何と言うかぁ友達だと思っていた奴に騙されたんだよ、完璧に。以上」
「え? そんな簡単に、騙されてお金取られたの? だったらこの間紹介してくれた弁護士のー」
「その弁護士の桂木先生様に騙されたんだよ。本当は弁護士でも何でも無かった、名前も偽名で単なる詐欺師だったんだよ」
「えー! 桂木さんが、詐欺師? あんなキレイな人がー。じ、じゃあ私も桂木さんを信用されるように使われた?」
「みたいだな」
「ええー! そんな・・・・・・。もうどうしょうもないの?」
「ああ、事務所も跡形も無くなっている。完全に消えてたな。ハハ」
「それはー・・・・・・、そうだ!」
和美はまきぐも君を衝立に乗せる胸の前でとパン! と手を叩く。
「今から私と一緒にパチンコに行ってお金を増やしましょう。私の親戚にスロットで勝ったお金で先祖代々のお墓を新しくした神崎の叔父様が居るんです」
衝立の向こうから筋肉質な右腕が伸びてきて、前屈みで乗りだしてお尻のシッポをフルフルさせていた和美の脳天を手刀で叩く。
「このあほ!」
「あだ! 何するんですかっ! ううっ、痛いよぉ」
頭を押さえてうずくまる和美。
「誰がお前と行くかっ、先祖が泣くわっ! ぜってぇ借金が増える。あーホントバカらしくなってきた、おい、そろそろ始めるぞ」
「ウフフ、これで同じ借金持ちですね」
「変なこと言ってないで、外に出ているスタッフ呼んでこい!」
シュタッ、と立ち上がり敬礼する和美。
「了解です、まきぐも君! ではーあ、あれ?」
筋肉質の腕がまきぐも君を装着する。
「どうしたの和美お姉さん、早く呼んでてよ」
「あーうん、まきぐも君あのね、もう放送始まってたみたいー、にゃん。みんな居るにゃん」
「えっ?」