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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

春の少女と冬の青年

作者:

初作品のひとつめです。文才はないです。

 ある小さな村の外れに周囲の気温を操れる能力を持った少女がいた。

 しかし、普通の人は能力は持って生まれないため、その能力は村人から恐れられ化け物と呼ばれていた。


 少女は石を投げられ、酷い言葉を投げつけられても能力を使ってこらしめるようなことはしなかった。


 ある時、旅人が村に訪れた。若くたくましい青年で、この先の山を越えた雪におおわれた村から来たらしい。


青年は村の外れで暮らしている少女を見て問う。

「なぜ、あの少女は村から外れたところに住んでいるのか」


「あの娘は周囲の温度を操る化け物さ。いつわしらが焼き殺されるか恐ろしゅうてかなわんでな」村長が忌々しそうに言う。


 青年は村長の言葉を聞き、目を輝かせた。

なぜなら青年の村は一年中雪におおわれ、厳しい寒さに植物も生えない貧しい村だからだ。


 すぐさま青年は少女のところへ行き問うた。一緒に自分の村に来ないか?村を暖かくしてくれるなら、生活は自分が面倒みるからと。


 少女はこんな自分でも役に立つなら連れていってくださいませと青年についていく決意をした。


 こうして二人は青年の村に帰り着いた。青年は村の人々に救世主だ、と告げる。少女はさっそく村全体の気温をすごしやすい暖かさに変えた。村の人々は歓喜し、少女を迎え入れることを反対しなかった。







 やがて、少女が村に来てから1年、2年と経つと村は植物が生え、農業が盛んになった。人々は食べ物が尽きることのない喜びにどんどん村を開拓していき、村は大きく豊かになった。


 そんな中、少女は青年に恋をしていた。青年もまた、少女に恋をした。二人はお互いに想い合い、恋人となった。


 少女はついに幸せを手にしたのである。












 だが、大きく豊かになった村は盗賊に目をつけられてしまった。


ある夜、盗賊の奇襲に村人はなすすべなく食料をほとんど奪われてしまった。畑は盗賊達が踏み荒らし、家は燃え、家族をなくした人もいた。


食べ物が無くなり、心に余裕のなくなった村人達は盗賊が来たのは少女のせいだと騒ぎ出した。

「お前が来たせいで村が!家族が!この疫病神め!」

少女は嘆き悲しんだ。


 少女の恋人である青年は、村人から責められ、次第に村が困窮したのは少女のせいだと考え始めてしまう。


 そんなある日、少女の噂を聞きつけた領主が村へやって来て青年に話しかけた。村に金と食料をやるから娘を差し出せ、と。

 青年は一晩くれ、と言い自室で考えこむ。だが、周りの村人に責められ精神的に疲れていた青年は少女を領主に差し出すことに決める。こうして少女は領主のところへ行くことになった。


 去り際、少女は青年に言った。こんな自分で役に立つなら、と。








 少女が去ってから初めての冬が訪れた。暖かい気温がなくなり、青年は暖かい少女のことを思い返す。少女は春の陽射しのような優しい笑顔をしていた。そして、青年は唐突に少女を深く愛していたことを思い出した。


 青年は後悔した。なぜ愛している少女を手放すようなことをしてしまったのか。なぜあんな優しい少女を傷つけてしまったのかと。


 青年は旅仕度をすると、領主のいる町まで寝る間を惜しんで歩き続けた。


 青年が領主の館に着いたのは少女が村からいなくなってから3ヶ月経った頃であった。すぐさま領主に会わせてもらうよう頼みこみ、少女を返してくれと懇願した。領主は鼻で笑うと、青年についてくるように言った。廊下を歩きながら領主は言う。化け物の子どもができたなら同じ化け物なのか気になり、使えるようなら飼い殺してやろうと思って少女を抱いたと。


 青年は自分のせいでつらい目にあった少女を思い、自分への怒りでこぶしを握りしめた。

 しばらくして、領主は地下の扉の前で止まり、ここにいると青年に言った。青年は扉を開けた。










 そこには変わり果てた姿で死んでいる少女を見つけた。









 泣き叫ぶ青年に領主は言う。少女はすでに子を孕んでいて、自分の子でないなら利用価値はないとしておろそうとしたが抵抗されたためなぶり殺した、と。領主は青年と少女を外へ放り出した。


 青年は少女の亡骸を抱えて歩き出した。


 厳しい冬の寒さで冷たくなっていく少女を自分の体で暖めようと抱きしめる。


 とうとう膝をつき、青年は歩くことをやめた。


 暖めれば少女が生き返るとでもいうように、ただただ抱きしめ続ける青年。






 雪はどんどん降り積もる。


 音のない静かな世界で青年は少女を抱きしめる。


 やがて、雪が二人を覆い隠す。









 村には冬しか訪れない。



つたない作品を読んでいただきありがとうございました。

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