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修行僧、異世界に落ちる

世界は広い、自分が知りうる世界がどれだけ狭いのか分からないほどに。


辺りには木、風、土、川、自然物が溢れ盛る、この世界が俺の知りうる限りの世界。


此処は山の奥深く、物心付いたときから山しか知らず、山の先に何が広がっているのかも分からない。


昔はお爺と二人で暮らしていたが、お爺は俺が十の歳を越えると共に死んだ、俺はその死体を、お爺の言いつけ通りに処理して燃やし、骨を砕いて川へと撒いた。


それからは俺と言う人間はいつも一人だ、けど寂しくは無い、自然物は山に溢れているし、腹が減ったらイノシシを狩って食ったり、人肌寂しくなれば小さなクマを抱いて寝たこともある。


今日も一日、薪割りと食料調達、山の動物達と戯れれば、後は何時も通り、お爺が残した時夜家秘伝の異術の習得の為の修行が始まる。


最初に行なうは精神統一、心を無にして行なわれる瞑想の一つ。


心を無にするって事は案外難しい、心を無に、心を無に、そう言う考えすらしちゃいけない、煩悩を殺し、欲望を殲滅し、不条理で邪なモノを全て摘出する感覚。


その直感に似た感情が沸き起これば、後は目を見開くだけ。


視界の先は、黒く濁る醜悪な世界。


世界には、ありとあらゆる"厄"が溢れている。


それは目には見えない物で、人の苦しみであったり、災いの元凶としても言われている。


お爺が言うには、"降夜家は、『厄』を視認し、対処する為に生まれてきた一族"であるらしい。


その降夜家のみに赦されたこの異能、名称"視忌"。


まあ要するに、不浄を振り払う能力が備わっていると云う事だ。


「――――しっ!!」


さて、此処からが所業の本髄、この視界に捕らえた不浄を振り払うのだが、


その"厄”、範囲にして無限。


この世界には"厄"が多すぎる、振り切っても振り切っても、不浄はまた何処から埋め尽くしていくように空間を侵害し、犯していく。


俺はまだ歳が若いために、不浄を振り払う能力は目で視認して、身体に集中した神経部位でなければ振り払う事はできない。


この場合、右手で"厄"を振り払うイメージを行い、右手に集中させることで"厄殺し"の能力が連動し、目から通達された"厄"の情報を脳で理解し、その脳から右手の神経に発達させている故に、"視忌"の能力が一時的に右手にも備わり、"厄殺し"として完遂するのだとか。


詳しい話は良くは知らない、けれど"視忌"の能力は持って五分しか使えない、脳への情報機能が酷使し過ぎて、オーバーヒートを起こす可能性もあるらしいからだ。


故に、この修行は十分そこらで終わる、お爺レベルになれば"視忌"は広範囲を覆いこみ、その覆いこんだ"厄"を消し去る事も出来るのだとか。


そのレベルになるには最低でも五十年、技術を費やし、能力を成長させなければならない。



「――――ぁ?」



そうして"厄殺し"に気を取られている中、地面が妙に黒ずんでいる。


多分、これも"厄"の一種なのだろうが、あまりにも黒ずんでいる。



腰を下ろして、その厄を浄化しようと、地面に指先を突き立てた、



「ぉう!?」



その瞬間、黒ずんだ"厄"が、亀裂を作り出して大きな穴となる。


穴は俺を悠々と飲み込むと、瞼を閉じるかの様に穴は消えた。
























―――黒い闇の中。


恐怖すら口に出すことの無い、その世界は瞬く間に色を取り戻す。


一度感じた浮遊感は、重力を取り戻し、上も下も分からない空間は、絶景の大空へと変貌する。


そうして方向感覚を取り戻すと、下から上に付き上がる突風が重力に逆らいながら身体を突き抜ける。



「落。ち……!?」



落ちてる、と言わなくても分かる、地面に生える森が小さく見えるほどの上空、周りを見渡せば、多種多様に広がる建物や村。


何故いまこの状況で、こう言わなければならないのか、つくづく痛感する。


しかし、やはり凄い。


世界は広いのだ、掛け値無しにそう言える。


まあ、だからと言ってこの状況をどうにか出来る訳でも無し、地面に激突する寸前まで迫る。


脳裏に走り出す過去の映像、それが走馬灯と知るには、少なくとももう少し時間が掛かる。


頭からまっ逆さま、そのまま地面に激突する瞬間。



「おぉー、すごーい到来人だ」



と、空気抵抗を無視して聞こえる女性の声。


首元に掛かる重圧に、思わず噎せ返りそうになって、地面ギリギリだった筈の距離が段々と遠ざかる。


誰かが服を掴んで、飛んでいる?


強引に首を上にあげて、その救ってくれた物体の顔を視認する。


―――驚く事に、なんとも可愛らしい、童顔な少女。


「な。あ……」

「んー?だいじょーぶ、だいじょーぶ、とって喰わないから」


それ以上に驚愕すべき事もある。


少女の肩甲骨辺りから生えるのは、確かな翼。


そして右肩から生える血液の塊は巨腕と有し、俺の身体を支えている。


ひとまず俺は、一つだけ少女に質問をする事にした。


「あの、これ何処に向かってるんだ?」

「んー?"癒善殿"、君一応地面にはぶつからなかったけど、多分捕まえた衝撃で内臓やられてると思うからさ」


言われて気が付いた、なにやら腹部に原因不明の痛みが響き渡る。


しばらくは動くことも出来ない、俺はなすがままにその羽の生えた少女に身を委ねた。









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