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oFF-LiNe  作者: 花街ナズナ
43/75

DaTa FiLe [RooT 20]# LaCKiNG DaTa

# FiLe DePLoYMeNT(ファイルを展開します)


・・・・・・


# eRRoR


# ENCoDiNG FaiLeD CouLD NoT ReaD FRoM THe SouRCe

(エンコードに失敗しました。ソースを読み取ることが出来ません)


# WaNT To FoRCiBLY eXTRaCT THe FiLeS?

(強制的にファイルの抽出を行いますか?)Y/N


・・・・・・



〈5/25/2191〉


CIAからの次世代戦略提案が国防省へなされる。

実際の戦場へ即投入可能なレベルまで、新兵たちのメンタルを短期間で強化する研究に関して。

国防省側の[データ削除済み]及び[データ削除済み]と、CIA側の[データ削除済み]との間で非公式に承認。


〈6/3/2191〉


研究の第一段階として、全米軍内から無作為選別された137名の新兵(以下、被験者と表記)へ仮想シミュレーション訓練という名目で【BaBeL PRoGRaMバベル・プログラム】を実行。


〈11/18/2191〉


14名:シミュレーションデータ上で高度実戦適正を獲得。一部は脳波に異常を示すものの、研究の続行に支障無しと判断。[データ削除済み]での実戦部隊へ編入し、研究を第二段階へと移行。


75名:離人・現実感喪失症候群を発症。カウンセリング及び薬物療法による治療を続けるも病状は改善せず。研究開始二ヶ月時点で半数以上が拒食症を併発。五ヶ月時点では全員が罹患。点滴と胃への経管栄養法をおこなっているが、衰弱が激しく状態は極めて不良。特に病状の悪い者にはPEGによる胃ろう処置をおこなう予定。被験者の親族には化学テロによる被害と説明。面会・連絡の一切を禁ずる。


48名:【BaBeL PRoGRaM】実行直後、脳の部分的な機能不全を検知。それから数時間後には全員の完全な脳死を確認。現段階ではこれが【BaBeL PRoGRaM】そのものが原因なのか、薬物への拒絶反応もしくは投薬量の問題なのかは不明。

マニュアルに従い、脳死が確認された時点で速やかに被験者全員を殺処分し、[データ削除済み]の[データ削除済み]施設へ遺体を搬送。爆発火災に巻き込まれたための事故死として処理。


〈4/29/2192〉


11名:実戦部隊としての任務を無事終了。現場指揮官からの評価はおおむね良好。特に統制と命令実行力は古参兵にも引けを取らないとのこと。これをもって初期成功例と記録。さらに研究を進める。


3名:実戦部隊の任務中、戦死。頭部の損傷が大きい1名を除き、2名の遺体は検体として回収。


75名:胃ろう処置などをおこなうも衰弱が著しく、三月までにほぼ全員、四月下旬には最後の1名が息を引き取る。【BaBeL PRoGRaM】実行以前のCT・MRI複合検査画像と比べ、すべての被験者の脳に重度の萎縮が見られる。病理検査・解剖・各種標本化の後、焼却処分予定。


〈10/21/2192〉


11名:[データ削除済み]の紛争へ再び実戦部隊として投入。しかし着任からほどなく、全員が他者との意思疎通が不能になる状態へ陥ったとの連絡があり、ただちに本国へ帰還させる。PET/CTなどを中心とした検査をおこなう。結果、全員が失外套症候群を発症していると判明。[データ削除済み]の[データ削除済み]医療施設に搬送された時点で8名が、到着後12時間で残る3名もβ昏睡に至る。簡易検査では原因を特定することができず、さらに精密な検査を続けながら原因と治療方法を探る。今回も化学テロによる被害として公表するものの、行動を共にしていた[データ削除済み]指揮下の部隊員、全員を隔離せねばならず、情報操作・隠蔽工作に予想以上の手間がかかる。追加予算の申請。


〈3/5/2193〉


11名:昨年末から三月までの間に全員の脳死を確認。長期の観察によって被験者のすべてが失外套症候群を経て、アストロサイトを主としたグリア細胞全体のアポトーシスが起きていたと判明。最終的に脳幹まで壊死は進行し、脳死へと至った模様。しかし何故このように異常なアポトーシスが起きたのかは解明できず。


〈9/22/2193〉


[データ削除済み]の内部告発により、司法省から通達。[データ削除済み]を始めとする上院議員らによる特別調査委員会が設置される準備が整いつつあるとのこと。速やかに全関係資料を破棄。一部を暗号化して[データ削除済み]の[データ削除済み]へと秘匿し、一時的に保管。危険と判断した場合、ただちにこれも廃棄処分するよう厳命。もって当該研究を無期限凍結する。


〈4/3/2196〉


フロントとして使用している民間の複合企業【HeCaTe】にて当該研究の再開が可能との目処が立つ。さらなる安全を確保するため、偽装は慎重を期す。また、[データ削除済み]との間で協定を結ぶ。内容は以下の通り。


1:今後、国内での当該研究はおこなわない。

2:軍人に限らず、すべての米国民を実験対象としない。

3:代替として、第三国の国民を実験対象として使用する。

4:機密が漏洩しないための対策が万全であると判断できた場合に限り、大規模実験を許可する。


〈6/17/2196〉


現地での主要研究員を選考する傍ら、【HeCaTe】へ研究者らを派遣。大規模実験方法が立案される。


〈8/26/2196〉


現地での主要研究員の選考が完了。第三国における研究の秘匿性を高めるため、これを期に本国の研究チームと第三国の研究チームを完全に区分・管理することが決定される。

現地研究チームは【HeCaTe】の管轄とし、二条博和を主任に、大道文明だいどう ふみあき野上英吾のがみ えいご堂島歩美どうじま あゆみ名田部祥子なたべ しょうこの4名を中心とした体制を作る。チームの立ち上げと同時、予定していた大規模実験の実行許可を出す。


〈10/2/2196〉


第三国での研究再開が決定。数万人から数十万人を対象とした極めて大規模な実験となる。現地研究員たちによって飛躍的に改良された【BaBeL PRoGRaM】を主体とし、表向きはゲームという体裁で運用するため、【HeCaTe】傘下の【NeT TRuDe】に研究母体を委譲。中心となる研究員たちもそちらへ移動させ、研究に当たらせる。必要な薬品の調達はさほど困難ではなかったが、機器類に関してはブラックボックス化に時間がかかり、協力先の医療機関への納品が予定より三週間ほど伸びてしまった。


〈10/3/2196〉


本格的に研究を再開。αテストはすでに二条博和ら、主要研究員たちが自身によって終えていたため、すぐにβテストを開始する。本格的運用の妨げとならぬようβテストはあくまで被験者の安全を徹底し、表向きの印象が好意的になるよう細心の注意を払う。

これを期に、研究用プログラム名を公式発表したゲーム名と同じ、【eNDLeSS・BaBeL】へと変更。


〈12/24/2196〉


【eNDLeSS・BaBeL】の正式運用を開始。早くも成果を生む。以前の研究時に謎だった被験者の脳への過剰なダメージの原因は、本来なら知覚されるはずの知覚が得られない、または知覚されないはずの知覚が送られてくることに対する脳の異常反応へ、投薬がさらにそれを助長することで起きるものと判明。早速、すべての医療機関へ設置した機器類に補助電気刺激装置を追加する。これで脳への異常知覚を電気シナプスの操作によって容易に改善できるだろう。


〈1/9/2197〉


研究員、野上英吾に聴覚異常と右上下肢の対麻痺が発症する。以前におこなったαテストが原因と判明。幸いなことに、本国の研究チームが独自に製作していた埋め込み式の補助知覚装置【D.N.N.D】によってこれらの症状は改善され、破損した脳の置換もなされるとのこと。

しかしまだ【D.N.N.D】は動物実験を終えたばかりで危険性も高い。

確実性を考えるのなら、いま少し必要な被験者が揃うのを待ち、適切な治療試験をおこなってから施術をおこなうのが望ましい。

優秀な研究員は替えがきかない。一般被験者を使い、一日でも早く施術の安全性を確立するため、無作為に一定数の被験者を選んで治療試験を出来る限り多く、出来る限り早くおこなうよう指示する。


〈2/23/2197〉


かなり無理な被験者確保をしたせいで、【eNDLeSS・BaBeL】は危険であるとの一部情報がインターネット上で散見されるようになったが、すでに政府筋へは根回しをし、マスコミの報道規制も多方面からおこなってきたので問題は無いだろう。

研究員、野上英吾に続いて名田部祥子にも味覚及び触覚障害が発症したが、早期に安全性を確立するのに成功した【D.N.N.D】の頭蓋内埋め込み手術によって両名とも現在は順調に回復している。

予防措置として残る二条博和、大道文明と堂島歩美にも【D.N.N.D】施術を受けるかどうか確認したところ、3名とも了承。即日、施術を終えた。


〈2/26/2197〉


主任の二条博和が【D.N.N.D】施術後、意識障害を発症。数回、治療中に意識を回復したものの、その後すぐに昏睡状態となる。β昏睡。

【D.N.N.D】使用以前の症例から、β昏睡の原因は投薬と【D.N.N.D】の埋め込みが相互に作用して起きたものと医師団は判断したが、投薬の減量・中止、【D.N.N.D】の一時的な機能停止などの処置でも根本的な改善は見られず。根治は困難との見解。

2日後、脳幹を含むほぼ脳全域の壊死を認める。事故死として処理。

【D.N.N.D】に対する拒絶反応での死亡例は本国でも確認されていないため、貴重な症例として速やかに遺体を検体に回す。

治療中にサルベージした彼の記憶情報はサブ・サーバへ保管。

大道文明を主任に昇格。


〈4/4/2197〉


本国より通達。

日本国政府から、これ以上秘密裏に情報統制を続けることは困難であるとの判断を受け、問題の表面化前に撤収するようにとのこと。

両国の国益を考えれば、やむを得ない決断だろう。少なくとも必要な研究はほぼ終えた。問題は無い。

【eNDLeSS・BaBeL】はそのまま表向きのサービスを続行するよう指示。国民の目が離れるのを待ってから、自然な形で終了させる予定。不必要な動きをして注目を浴びることの無いよう、関係各所の人間たちにも命令を徹底する。


〈5/2/2198〉


第三国での研究撤退後、一年以上が経過。【eNDLeSS・BaBeL】に関する奇妙な情報が入る。

本国に置かれていたサブ・サーバはすべて閉鎖し、サービスの終了を指示したにもかかわらず、【NeT TRuDe】が独断で日本国内にサーバを新設、サービスを続行すると公式発表したという。

急ぎ、【HeCaTe】へ確認を取ったが、そちらでも事実確認が取れていないとのこと。

最悪のケースを想定し、【HeCaTe】との関係を示す人的・物的証拠の隠滅がいつでもできるよう、内外で調整を図る。


〈7/17/2198〉


問題が決定的となる。

どうやら【HeCaTe】は独自に我々が残していった【eNDLeSS・BaBeL】のシステムを、何かに流用しようとしているらしい。

とはいえ、あれは到底一般の商業目的で利益を生み出せる代物ではない。そしてそれを彼らも知りえているはずなのに、この事態は理解不能としか言いようが無い。

いずれにせよ、我々はすでに目的を果たし、彼らの利用価値は失われた。


〈8/3/2198〉


【HeCaTe】の上層部で我々の情報を知りえる者、及び【NeT TRuDe】で【eNDLeSS・BaBeL】の運用を続行していた研究員らを始めとする関係者の処分を完了。同時に物的証拠も回収、または破棄した。

かなりの短期間で相当数の人間を処理する必要に迫られてしまったが、想定していたような騒ぎも、状況を不審がる動きもほとんど伝わってこない。


〈8/4/2198〉


当該研究を完全に終了。


・・・・・・


# eRRoR


・・・・・・


〈**/**/****〉


本国にて【eNDLeSS・BaBeL】の都市伝説がインターネット上で散見される。

情報の風化と推測。望ましい傾向。


・・・・・・


# eRRoR


# LaCKiNG DaTa(欠落したデータです)


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