戦い 三
俺達が声を限りに叫んでいる間も怪物とシーザーは死闘を繰り広げている。
「見て! 良ちゃん!」
ジャレスが弓矢隊を岸に並ばせている。
俺達の声が届いたんだ。
「ジャレス、頼むぞ!」
俺は声を限りに叫んだ。
思えば、ジャレスにシーザーを連れて行きたいと言った時、ジャレスは怪物とシーザーを戦わせようと思ったのかもしれない。何だって利用しようとする奴だ。結局、ジャレスの思惑通りになったわけだ。
実際、水の中ではシーザーの方が有利だ。
「シーザー、頑張れ!」
シーザーが怪物を振り切った。怪物は逃げるシーザーを追おうとはしなかった。追ってもおいつけないと思ったのだろう。かわりに、頭を回して俺達を睨みつけた。
「おまえら、殺してやる!」
怪物が俺達に向ってきた。小島に上がって来る。まずい!
「八つ裂きにしてやる。ヘータを殺しやがって!」
怪物の放つ腐臭。ゲー、吐き気がする。
「良ちゃん!」
「こっちだ、佐百合」
俺達は逃げた。しかし、島は小さい。木一本生えていない。俺達は岩と岩のくぼみにもぐりこんだ。
「へへへへ」
怪物が不気味に笑う。岩の隙間から触手を伸ばしてくる。俺はそれに噛みついた。
「ぎゃううう」
小さい牙でも役に立つんだぜ。
怪物が触手を引っ込めて、腕を伸ばしてきた。もう一度噛みつこうとしたが、今度は振り払われ、岩に叩き付けられた。
くそー、か、体が痺れた、動けん。
「良ちゃん! しっかり」
怪物の手が佐百合に届こうとしている。
いやだ、俺の家族を殺した怪物め!
佐百合まで殺させないぞ!
怪物の伸ばされた手。俺は必死でとびかかった。思い切り噛みつく。
それでも怪物は佐百合に伸ばした手を引っ込めない。
「いやー!」
佐百合が無我夢中で腕を振り回す。
その時、怪物のぴーんと伸びた腕が止った。
ずずず
「え!」
怪物がずずずと下がって行く。
シーザーか? シーザーが怪物を湖に引きずり込んでいるのか?
俺は怪物の手を離した。佐百合の側に着地する。
いきなり怪物の体が宙を飛んだ。
ざーっと波が、大きな波が島に。
「きゃあ」
俺達は大量の水に岩場から押し出されていた。
そして見た。




