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怪物 一

 湖の上に月が登っている。カーリセン特有の三つの月だ。三つの満月が照らす岸辺は、意外に明るい。これなら照明無しで野球が出来そうだ。

 三つの月が正三角形を描く夜中、湖の底から不思議な光が射して来た。

 湖面に光の輪が出来る。

 その光が揺らいだ。みるみる泡立つ。

 俺は総毛立つのがわかった。何か、禍々しい物がやってくる。辺りに満ちる瘴気。

 出たー!

 でかい!

 予想をはるかに上回る 湖の上に月が登っている。カーリセン特有の三つの月だ。三つの満月が照らす岸辺は、昼間のように明るい。照明無しでナイターが出来そうなくらいだ。怪物退治なんてなきゃ、この景色の美しさを堪能できただろうに。

 俺の家族を殺した殺人鬼。蝦蛄しゃこの怪物に変身する殺人鬼野郎。変身は性格や人柄に影響される。あいつが蝦蛄しゃこの化け物ってことは、あいつの残忍性が反映されてるってことなんだろう。負けない。俺は小さなテリアになっちまったが、化け物やろうをだまくらかして、絶対やっつけてやるんだ。

 体が自然に震える。武者震いだろう。

 三つの月が正三角形を描く夜中、湖の底から不思議な光が射して来た。

 湖面に光の輪が出来る。

 その光が揺らいだ。みるみる泡立つ。

 俺は総毛立つのがわかった。何か、禍々しい物がやってくる。辺りに満ちる瘴気。

 出たー!

 でかい!

 予想をはるかに上回る大きさだ。

 怪物はシャコのような体をぬらぬらと光らせ、真っ赤な触手をうごめかせて岸に上がってきた。

怪物が一声吠える。辺りを揺るがす咆哮だ。兵士達の間に一瞬怯えが走る。

 頭部は人の頭なのに。あそこから声が出ているんだろうか? とても、人の声とは思えない。

「おい、おまえら、今年もやってきたぞ。川に毒を流されたくなかったら生け贄を寄越せ!」

「ようこそ、怪物殿。生け贄は、ほらそこに。その牛達は、あなた方の世界から召還した男達です」

 怪物の咆哮にもびくともしないジャレス。堂々と怪物に対している。さすがだ。

「俺達の世界だと? は、自分達が犠牲になるのがイヤで、俺達の世界から、生け贄用に召還したのか? お前達も相当根性が悪いな。女は? 女はどこだ?」

「まずは男達からご賞味下さい。その男達は菱友商事の社員だそうですよ」

「何? 何故、知っている?」

「その者達の持ち物に書いてありました」

「持ち物だと?」

 俺はジャレスにこっそり言った。

「社員証と言え」

「社員証?」

「いいから、さっさと言え!」

 俺は小さな声で怒鳴った。

「社員証に書いてありましたよ」

 怪物がにたっと笑った。

「けっ、菱友商事の社員もこうなると形無しだな!」

 怪物はげたげたと笑いだした。いきなり触手で牛を捕まえる。牛の四本の足を掴み、捻り上げた。

「モウー」

 牛の悲鳴が辺りに響く。牛の足がひきちぎられ、辺りに血が飛び散った。別の牛は首を引っこ抜かれた。腹が裂かれ内蔵が飛び散る。もの凄い力だ。

 他の牛達が我れ先に逃げようとする。怪物は触手をびゅっと伸ばして牛の体を貫いた。

「なんて固い触手なんだ!」

「触手には幾つか種類があります。顔の周りの八本の触手が、特に固いのです」

「他の触手は?」

「固くありませんが、切っても切っても生えてくるのです」

「生えてくる早さは?」

「すぐにです」

 くそー、なんて怪物なんだ。

 怪物は牛の血を浴びて、興奮してきた。ゲラゲラと笑っている。大きく頭を持ち上げた。腹が見える。腹の真ん中が割れ、何かがニョキニョキと伸びた。男根だ。デカイ!

 まさか、あれをジャレスの母親や妹に突っ込んだのか。なんて奴だ。

 怪物は牛を捕まえ肛門に突っ込んだ。腰を振りよだれを流して、快感に酔いしれる。

 怪物が油断しきっているのがわかる。

 ジャレスがさっと、腕を振り下ろした。弓矢隊が一斉に矢を放った。尻尾に下げられた袋を狙う。

 が、袋は落ちない。

 怪物が気が付いた。

「おまえら何をする! 殺してやる!」

 そそり立った男根が腹に仕舞い込まれる。

 怪物は掴んでいた牛を兵士に向って投げた。避ける兵士達。

 誰かが、袋に向ってムチを放った。アシアンだ。アシアンがムチを使って、袋を取ろうとしている。ヒュンとうなるムチ。見事に袋に絡み付いた。ぐいっと引っ張るアシアン。袋がぶちっという音と共に怪物の尻尾から、アシアンの腕の中へ。

「貴様ー!」

 怪物がアシアンを追いかける。逃げるアシアン。袋を別の兵士に投げた。同時に偽の袋を持った数十人の兵士達が一斉に別方向へ走った。

「返せ! その袋を返せ!」

 一人の兵士が追いつかれそうになった。兵士は袋の中からビンを取り出し、フタを取って投げた。大きさだ。

 怪物はシャコのような体をぬらぬらと光らせ、真っ赤な触手をうごめかせて岸に上がってきた。

「ガオー」と一声吠える。辺りを揺るがす咆哮だ。頭部は人の頭なのに。あそこから声が出ているんだろうか? とても、人の声とは思えない。

「おい、おまえら、今年もやってきたぞ。川に毒を流されたくなかったら生け贄を寄越せ!」

「ようこそ、怪物殿。生け贄は、ほらそこに。その牛達は、あなた方の世界から召還した男達です」

 怪物の咆哮にもびくともしないジャレス。堂々と怪物に対している。さすがだ。

「俺達の世界だと? は、自分達が犠牲になるのがイヤで、俺達の世界から、生け贄用に召還したのか? お前達も相当根性が悪いな。女は? 女はどこだ?」

「まずは男達からご賞味下さい。その男達は菱友商事の社員だそうですよ」

「何? 何故、知っている?」

「その者達の持ち物に書いてありました」

「持ち物だと?」

 俺はジャレスにこっそり言った。

「社員証と言え」

「社員証?」

「いいから、さっさと言え!」

 俺は小さな声で怒鳴った。

「社員証に書いてありましたよ」

 怪物がにたっと笑った。

「けっ、菱友商事の社員もこうなると形無しだな!」

 怪物はげたげたと笑いだした。いきなり触手で牛を捕まえる。牛の四本の足を掴み、捻り上げた。

「モウー」

 牛の悲鳴が辺りに響く。牛の足がひきちぎられ、辺りに血が飛び散った。別の牛は首を引っこ抜かれた。腹が裂かれ内蔵が飛び散る。もの凄い力だ。

 他の牛達が我れ先に逃げようとする。怪物は触手をびゅっと伸ばして牛の体を貫いた。

「なんて固い触手なんだ!」

「触手には幾つか種類があります。顔の周りの八本の触手が、特に固いのです」

「他の触手は?」

「固くありませんが、切っても切っても生えてくるのです」

「生えてくる早さは?」

「すぐにです」

 くそー、なんて怪物なんだ。

 怪物は牛の血を浴びて、興奮してきた。ゲラゲラと笑っている。大きく頭を持ち上げた。腹が見える。腹の真ん中が割れ、何かがニョキニョキと伸びた。男根だ。デカイ!

 まさか、あれをジャレスの母親や妹に突っ込んだのか。なんて奴だ。

 怪物は牛を捕まえ肛門に突っ込んだ。腰を振りよだれを流して、快感に酔いしれる。

 怪物が油断しきっているのがわかる。

 ジャレスがさっと、腕を振り下ろした。弓矢隊が一斉に矢を放った。尻尾に下げられた袋を狙う。

 が、袋は落ちない。

 怪物が気が付いた。

「おまえら何をする! 殺してやる!」

 そそり立った男根が腹に仕舞い込まれる。

 怪物は掴んでいた牛を兵士に向って投げた。避ける兵士達。

 誰かが、袋に向ってムチを放った。アシアンだ。アシアンがムチを使って、袋を取ろうとしている。ヒュンとうなるムチ。見事に袋に絡み付いた。ぐいっと引っ張るアシアン。袋がぶちっという音と共に怪物の尻尾から、アシアンの腕の中へ。

「貴様ー!」

 怪物がアシアンを追いかける。逃げるアシアン。袋を別の兵士に投げた。同時に偽の袋を持った数十人の兵士達が一斉に別方向へ走った。

「返せ! その袋を返せ!」

 一人の兵士が追いつかれそうになった。兵士は袋の中からビンを取り出し、フタを取って投げた。

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