表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/64

シーザー 一

 俺達が助けたギーの子供は、メキメキと回復していった。体の色も灰色からきれいなブルーグリーンに戻った。

 佐百合とサララが協力してギーの世話をしている。俺もワンワン語でギーに話しかけた。ワンワンと吠えてみただけなのだが、ギーの子供が俺になついた。なんとなく、通じているような気がする。

「ワンワン(こっちに来い!)」

 ギーがあしかのように前ビレでついてくる。

「いいね、図体がでかいけど、可愛いじゃないか。よし、一つ名前をつけてやろう。ポチってのはどうだ?」

「ポチ? 犬じゃないのよ! 首長竜なのよ!」

 佐百合が憤慨したように言う。

「じゃあ、ポチザウルス」

「ポチから離れなさいって言ってるの! 私、シーザーにしたい」

「えーっと、ローマ帝国の?」

「そうよ。私、ファンなのよね。だって、カッコいいじゃない。『賽は投げられた』とか『来た! 見た! 勝った!』とか」

「ファンならよけい首長竜につけるのはおかしくない?」

「ポチよりましよ。おいで、シーザー」

 ギーの子供は、佐百合がシーザーと呼んで手招きすると首を佐百合の方に向けた。シーザーという名前が気に入ったようだ。名前はシーザーに決まった。

 元気になったシーザーは海で泳ぐようになったが、俺達のいる浜辺から逃げようとしなかった。餌の時間に浜辺で呼ぶと、すぐに頭を出した。

 シーザーはすっかり俺達になついていた。佐百合がシーザーに棒を投げると喜んで取ってくる。シーザーが俺に棒を投げ返す。俺が走って棒をキャッチ。佐百合に届ける。佐百合が、「えらい、えらい」と言って俺の頭を撫でてくれた。

「佐百合、俺、大人の男だから」

「うふふ、いいじゃない。今は小さなテリアなんだから!」

 佐百合の笑顔。俺に向けられた、俺だけの笑顔。

 ま、小さい犬コロになるのも、悪くないかもな。

 しかし、いつまでも海辺の別荘にいるわけにはいかない。俺達は首都アルキヤに戻る準備を始めた。シーザーにワンワン語で、もうすぐお別れだと話した。

「ワンワン(また、会えるといいな)」

「イヤ、アソンデ、アソンデ」

「な、なんだ? 今のは?」

「ボクダヨ! シーザーダヨ!」

「ワンワン(おまえ、言葉がわかるのか?)」

「ウン、ワンワン、ナラワカル」

「ワンワン(ええ!)

 俺は仰天した。これって、もしかして、異種間コミニューケーションか?

 いや、もしかしてじゃなく、マジで異種間コミニューケーションだ!

「ワンワン(じゃあ、俺達と一緒に来るか?)」

「イッショ?」

「ワンワン(川を泳いで行くんだ)」

「カワ?」

「ワンワン(ああ、真水が流れている所なんだが、真水、泳げるか?)」

「マミズ?」

「ワンワン(じゃあ、俺をのせてくれ。川につれていってやる)」

「ウン」

 俺はシーザーの頭の上に乗った。浅瀬を出て、首都アルキヤに通じるユン川の河口に案内する。

「ワンワン(ここが川だ。海の水と味が違うだろう。これを真水っていうんだ。わかったか?)」

「ウン、ワカッタ」

「ワンワン(この川を遡るんだが、真水の中で泳げるか?)」

 シーザーが河口の水に身をひたした。試しているようだ。

「オヨゲル。オヨゲルヨ!」

 シーザーが嬉しそうに言う。

「ワンワン(じゃあ、俺達と一緒に行くか?)」

「ウン、イッショニイク」

 俺は別荘に戻って、シーザーに乗ったと佐百合に話した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ