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ギーの子供 一

 それからしばらくして俺達は族長の別荘に遊びに行った。

 佐百合は意識していなかったが、美人の佐百合が願い事を言うと男はみな、佐百合の願いを叶えたがった。

 もし、佐百合が根性の悪い女だったら、自分の美貌を武器に族長の妾におさまり、権力を欲しいままにしていただろう。

 だが、佐百合はそんな事はしない。今まで通り、控えめで自信なさそうな立ち居振る舞いだ。

 男達にとっては佐百合のそんな態度はますます好ましいだろうし、女達にとっては打ち明け話がしたくなるような信頼のおける相手に見えるだろう。

 醜い姿の為に侮られていた佐百合。今は心の美しさと体の美しさがシンクロして、信じられないくらい綺麗な女になっている。

 俺なら彼女を巫女に祭り上げるね。異世界から来た巫女がカーリセンの民を幸福に導く。いざ、巫女に捧げものをするのだ!って感じでね。儲かるだろうな。

 確か宗教法人ってのは儲かるんだったな。ホストをしていた頃、某宗教団体の教祖の自称秘書って奴の相手をした事があったっけ。シャンパンタワーはするし、ナンバーワンホストは呼びつけるし、そりゃあ豪勢だった。

 ここの宗教は、太陽神エグ・パグ・ネイヤエルを最高神にすえて、あとは三人の月の女神と自然神だ。

 そこまで考えた時、俺のダークサイドが囁いた。

 まじで、佐百合を巫女にしてこの国を絶対君主制に持ち込めないだろうか。

 佐百合は最高神エグ・パグ・ネイヤエルの生まれ変わり、いや、その娘ってことにして、二十一世紀の科学知識を応用して数々の奇跡をおこなう。人心を掌握した佐百合の陰からこの国を支配する。男なら国家権力を一手に握ってみたいよな。夢だね、男の夢。

 で、遊んで暮らす。

 ……今と一緒じゃないか?

 俺、遊んでくらしてるし、女の子とはハーレム状態だし。

 後は、元の体に戻れないのがなあ。権力を握ったら国家予算を使って俺の体を元に戻す方法を研究させるんだけどよ。

「疲れましたか? 元気がありませんね」

 別荘のバルコニー、海を見ながら椅子の上に寝そべっていた俺にサララが言う。

「いや、別に。ちょっと退屈してただけ」

「もし、用事がないようでしたら、こちらで基礎訓練を行いたいのですが」

「基礎訓練?」

「はい、体術の基礎です」

「体操みたいなものかな。いいよ、どうぞどうぞ、やっちゃって下さい」

「では失礼して」

 サララは体術の基礎訓練を始めた。柔道や空手に通じる武道の一種ではないかと思うが、俺にはよくわからない。ゆっくりと動くサララの体は舞を舞っているようだ。


「ギーだ! ギーが上がったぞーー!」

 遠くから男達の怒声が聞こえた。

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