ジャイーダ
俺は種馬に選ばれて妙に恥ずかしかったが、異世界でハーレムってどっかで聞いたような話だったし、苦労するより楽しい生活と思って、相手が決まるのを待った。
俺の最初の相手は、なんとジャイーダだった。
「あの、えーっと、族長の妹さんが、いいんですか?」
「私からお願いしましたのよ。夫を亡くして数年、独り寝を守ってきましたわ。でも、私も女ですの」
しなを作るジャイーダに男心がそそられる。
静かな夜だ。俺の寝間は屋敷の離れに移されていた。樹々のざわめき、虫の声、風の音が遠い。
だがロマンチックな雰囲気とは裏腹に、俺は今の状況を想像して心の中で苦笑した。人が見たらさぞ滑稽だと思うだろう。寝台の上に半裸の熟女が、小犬の前で身をくねらせているんだからな。その熟女が、大胆に胸を持ち上げながら言った。
「ねえ、どうしたら宜しいの」
「じゃあ、色っぽく脱いでくれる。俺、脱がせられないから」
「あら、あなたの可愛い牙と爪でこの薄衣を引裂いてほしいですわ」
「え、いいの」
俺はジャイーダの薄衣に噛みついた。ぐいっと引っ張る。スルスルと脱げて行く薄衣。
薄衣の下には何も身に付けていなかった。
「ま、眩しい! なんて、白い肌だ」
「嬉しい!」
目を閉じ、身を震わせるジャイーダ。
俺は胸に飛びついた。肉球にふくよかな胸があたる。ふわふわだ!
ポーン!
人に戻りましたーーーー!
翌朝、俺はジャイーダの満足そうな寝顔を見つめていた。
気配に気づいたのか、ジャイーダがうっすらと目を開ける。広がった微笑みが美しい。
「ありがとう、幸せでしたわ」寝床から出て行くジャイーダ。
俺が人間の男ならここで一服する所だけどよ。犬コロじゃあ、様にならねえぜ。
俺はもう一眠りした。いやー久しぶりだったからついはりきっちゃってよ。疲れた疲れた。昼近くになって外にでたら、太陽が黄色かった。
その夜もジャイーダはやってきた。次の夜も。さすがに四日目の夜は休みを取った。
すると、書記官のカスケルがやって来た。狐目の目尻が下がって何やら不安そうだ。
「今日は一人で寝たいとジャイーダ様に伝えられたそうですが、どこかお加減でも」
「悪いけどさ、このままだと俺の身が持たないんだよね」
「変身がとけて人間に戻るのに疲れるんですか?」
「いや、そうじゃなくて、あれそのもので疲れるの」
「ですが、まだ、四日目ですよ」
「一晩に一度じゃないの。熟女ってのはこう、歯止めがきかないんじゃないかってくらい求めてきてさ」
「私には羨ましい限りですが。ジャイーダ様はあのような豊満な体をしていますし、お心もお優しい」
「確かにそうだけど、しかしなあ。とにかく、今日と明日は休ませて」
「わかりました。そのように伝えましょう。……ジャイーダ様は自分に落ち度があったのではないかと心配しておられましたよ」
「ううん、俺に体力がないせいだから。そう言っといて」
取り敢えず、二日休んで俺は体力を回復させた。
こんな生活が二十日ほど続いただろうか、食べて寝てやってという生活、男にとっちゃ極楽のような毎日だ。が、不思議な事に、俺は飽きてきていた。なんとなく、相手を替えたいなと思っていたらジャイーダが女の子を連れて来た。
さすが熟女。男心がわかってる。




