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族長の妹ジャイーダ・ジャサイダ 二

「お母様、僕にも抱かせて!」

 さっきの息子だ。俺が断ろうと思った時にはすでに、息子に抱き上げられていた。

「これ、いけません。そのような姿をしていても、その方はあなたより大人なのですよ。失礼な事をしてはいけません」

「はーい、お母様。この方は、言葉がわかるのですか? 倭国のお話が聞きたいのですが」

「今はやめなさい。お客様はお疲れですよ」

「はーい」

「わんわん(おい、坊主、名前は?)」

「僕、ユーリー」

「わんわん(よし、ユーリー。今はまだこっちの世界に馴れてないんだ。来たばかりだからな。落ち着いたら話してやる)」

「本当?」

「わんわん(ああ、約束する)」

「まあ、ほほほ、ユーリー、良かったわね。さ、食事が済んだら部屋に戻りなさい」

「はーい、お母様」

「わんわん(元気な子だ)」

「それだけが取り柄ですのよ、ほほ」

 ジャイーダが誇らしそうに目を細める。

「さあ、どうぞ、もっとお肉を召し上がれ」

 俺の前に新しい骨付き肉が置かれた。食べ過ぎるとまずいかなと思いながら、肉の誘惑に勝てず俺はかぶりついた。

「わんわん(うまいなあ、この肉、何の肉ですか?)」

「それは、スズカゲルの肉ですわ。私共は焼いて食べますが。ほほ」

「わんわん(スズカゲルというのは?)」

「鳥ですわ。家畜用に改良した鳥ですのよ」

「へえー、鶏みたいなものかな?」

「あら、あなた、わんわん吠えなくても、言葉が通じますわ」

「え? あれ、ホントだ」

 俺は人と同じように話せるようになっていた。どうしてだろう?

 隣に座っていた神官長アルギルが言った。

「ふむ、その体とあなたの魂がうまく融合したのでしょう」

「ふーん、魂の融合ね。まあな、最初は拒絶反応起していたからな」

「よかったじゃありませんか、さ、お祝いに一献、いかがです?」ジャイーダが酒を勧めてくれた。

「それでは、少しだけ」

「ほほ」

 出された酒は芳醇な香りがした。俺は一口、舐めてみた。旨い。俺は出された杯を飲み、いや、舐め干していた。うー、強い。くらっときた。俺はテーブルの上で踏ん張ろうとしたが、千鳥足になっていた。思わず尻餅をつく。

「あ、すいません酔ったみたいで」

 回りで笑い声が起きる。

「客人方はお疲れの様子じゃ。お休みいただこう」

 族長の一声に、俺と佐百合は宿舎に連れて行かれた。佐百合には寝台が、俺には敷物が敷かれたカゴが用意されていた。

 俺はさっきの酒が効いたのか横になるとあっというまに眠ってしまった。



 そして、夢を見た。

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