喪失 4
あれから何日経っただろうか。
少女は膨らんだ幾多もの地面を見つめながらぼんやりと考える。
幸せな夢から目を覚まし、現実を突きつけられた少女は何度も死のうとした。けれど出来なかった。自分可愛さか、はたまた死なせてしまった妹の分まで生きようという前向きな考えからか。
とにかく少女は自分を殺せなかった。
自らの死を諦めた少女は次に穴を掘った。
これ以上、無惨な姿になっていく妹たちを見たくなかったのだ。
堅いはずの乾いた地面。
一つ一つ素手で掘っていくという拷問にも似た作業はなぜか、順調に進んだ。そして穴をすべて掘り終わったというのにその手は血にまみれることもなく、それどころか傷ひとつもついてはいなかった。
しかし、それすらも気にせず少女は一体一体穴に収めていく。
そうしていくつもの山ができた。
けれど少女の空白は埋まらなかった。
心にポッカリと空いた穴はとても深く広い。
それだけ失ったものが大きすぎたのだ。
虚ろな瞳は絶えず、数多くの小さな山を見つめる。
と、肌に冷たい物が触れた。
視線を上げる空は黒い雲に覆われていた。
自然と少女はまるで自分の心みたいだな、と思った。
雨はゆっくりと降り始め、少女をじわじわ濡らしていくと徐々に雨脚を強めていく。
――――いい機会だ。
そう思い彼女はゆっくり立ち上がった。
「あれ、ない……」
立ち上がると少女は自分の周り見渡した。けれど、ない。少女にとって妹の形見とも言えるべきクリスタルがない。
そういえば、と少女は思い出す。
自分が目を覚ましてから近くにあっただろうか。いや、見ていない。ということは誰かが持って行ってしまったのだろうか。
「……まあ、いいか」
そう思い至るも、少女はあっさりと諦めた。所詮はあっても意味のない物。それどころか逆に妹を思い出して辛くなってしまう。
だからもういいのだ。
歩き出す少女は亡霊のように。
「……バイバイ」
呟く声は雨にかき消され、それこそ何を言ったか本人にしか分からない。
降りしきる雨の中、少女はただただ歩く。
幸せだった自分に別れを告げるように。