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プロローグ ~新たなる仕事発見!!~

 古ぼけたバーのカウンター席に少女が座っていた。

若干むくれた顔でオレンジジュースをすすっている。

 まだ明るい時間だからか少女の他には誰も客がいない。

据わった目の少女が朝っぱらから酒場でグラスをかたむけ

ているのはなんとも奇妙な光景だった。

 もっとも、飲んでいるのはオレンジジュースだが。

フェクトリア村の法律では二十歳以下の娘に酒を飲ませる

ことは固く禁じられている。

「おかわり!!」

「まだ飲むのか?」

 酒場のマスターは苦笑交じりに尋ねた。

少女は当たり前でしょ!!と喚く。赤に近い金の

三つ編みにした髪とぱっちりとした瞳が印象的な子だ。

 彼女の名前はエミリナ=レイズ。ここフェクトリア

村の住民で、あだ名はエミである。

 彼女が何故こんなに荒れているのかというと、仕事を

クビになってしまったからである。

 この世界クイーエルズには、人間、魔術師、魔術師と

人間のハーフの三種類の種族がいる。

 酒場のマスターこと、銀の髪に紫の瞳の涼しげな容貌の

カイウェルズ=コールは人間だ。ちなみに、エミの種族は

ハーフにあたり、魔力を魔術師よりもコントロールしにくい。

 なのでよく魔力を暴走させてしまいクビにばかりなっているのだ。

「カイ兄!! あたし悔しいよ!!」

「落ち着けよエミ。お前の良さは俺がよーくわかってるから」

「カイ兄だけが知ってても意味ないでしょ!!」

「俺にどうしろって言うんだよ……」

 ヒステリックになったエミをなぐさめるカイ。だが、エミに

理不尽にも怒鳴られてしまいため息をつくのだった。

 おかわりのオレンジジュースを差し出すと、エミは一気に

グラスの中身をあおる。そして、ぷはぁっ、と年配の親父の

ように息をついた。カイはもうあきれ顔だ。

「エミ、お前年頃の女の子だろ?」

「カイ兄うっさい!! 早くおかわりのジュース入れてよ!!」

 だったら金払え。カイは思わず笑顔のままで青筋を立てたが、

あまりに大人げない気がしたので文句を言うのをやめた。

 ちなみに、エミに飲ませたジュースは六杯以上だが全て

カイのおごりだったりする。エミとカイは幼馴染なのだ。

 黙ってジュースを差し出すと、エミは奪うようにそれをあおる。

再び年配の親父のような息をつくや、いきなり立ち上がる。

「おい、エミ。どうしたんだ!?」

「……ごちそうさま、カイ兄。あたし帰る。仕事も探さなくなくちゃだし」

 エミの顔が元気ないのを見てカイは若干顔を曇らせたが、仕事を放り出す

訳にはいかなかったので彼女をただ見送った。

 エミはため息をつきながら道を歩いていた。道行く人から声をかけられるが、

エミはあいさつしながらもまだ調子が出ない。

「ハーフの、どこが悪いのよ――!!」

 絶叫したその時だった。黒いマントをはおった背の低いまだ子供だと思われる

少年が何かを落とした。スタスタと気づかずに行こうとする少年をエミが呼びとめる。

「ねえちょっと君!! 落としたわよ!!」

「……」

「君ってば!!」

 エミが強い力で彼の腕を掴む。その際に、フードがずれて少年の顔があらわ

になった。不思議なエメラルド色の瞳をした少年である。髪はフードと同じ

黒だった。

「いらないよ。お姉さんにあげる」

「えっ?」

「僕には必要ないものだけど、お姉さんには必要あるものなんじゃない?」

 にやりと少年が笑う。かわいらしいけれどどこか薄気味悪い物を感じ、エミは

思わず後じさった。少年は不思議な微笑みをたたえたままだ。

「その住所に行った方がいいよ? お姉さんの運命が開けるからね」

「あんた、誰なのよ……。一体何者なの!?」

「くすくす。秘密、だよ。言ったら面白くないじゃないか。お姉さんが、ちゃんと

自分の力で真実を見つけないとね。……じゃあ僕はこれで」

「待ちなさい!!」

 エミが腕を伸ばす。が、確かに少年のか細い腕を捕えたかと思った手は空を切った。

代わりに掴んだのは異国に咲く花と言われる幻のサクラの花弁はなびらである。

 目が見えないほどの強い風と花吹雪でエミの視界がさえぎられた。

『また会おうね、お姉さん。会える日を待っているよ』

 その声を最後に、少年の姿はどこにもいなくなっていた。

エミが拾った紙を見てみると、そこには『魔術師の弟子募集中。魔女見習い、つまり

女性に限る。ハーフでも魔術師でも大歓迎。ぜひ興味ある者は来られたし レイシェル』

 と美麗な文字で書かれていた。仕事の募集!! エミは目を驚いたように見開く。

何故あの少年が自分が仕事を探していると分かったのだろう、とも思ったが、それより

なにより、エミが喜んだのは『ハーフでも大歓迎』という記述だった。

「よおおおおしっ!! 明日こそ仕事見つけるぞおおおおっ!!」

 急に元気になったエミに、村人たちも嬉しそうな顔になっていた――。

ヒロインと兄代わりの青年だけではお話が

進まなかったので謎の少年を出しちゃいました。

 次回はエミが元宮廷魔術師に出会いますので

よかったら見てやってください。

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