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#1-2.珍獣か何か

藤堂に今夜付き合えと言われ馴染みの店『居酒屋たぬき』で落ち合う事になった。

約束の時間に少し遅れて店に入ると奥の座敷に案内された。

たぬきは藤堂の先輩がやっている店で会社からも近く飲み会はいつもここを利用していた。

「悪いな、遅れた」

「構わないさ、いつもの事だ」

とりあえずビールを頼み乾杯する。

「お疲れ。で、今日はなんなんだ?」

「お前、彼女とどう言う関係なんだ?」

「はぁ? 彼女って誰?」

「惚けるな、一ノ瀬だよ。秘書課の」

「…………」

恐らく藤堂は昼休みの事を言っているのだろう。

しかし、俺には何を言っているのか理解できなかった。

「侍がどうした?」

「あのなぁ、野神。お前の頬に口紅が付いていたという事はそう言う事だろう」

「判らん」

「殴って良いか?」

「いや、それは困る。寝起きだったからあまり記憶がはっきりしない」

とりあえず、昼休み屋上で起きた事を全て藤堂に話した。

寝ていたら誰かの視線を感じた事、目を開けると彼女ぽい女性の顔が見えた事。

「それで、全部か?」

「俺がお前に嘘を付いた事があるか?」

「そうだな、しかし何でお前なんだ?」

「俺が知りたいよ、何で俺にキスなんかしたのか」


その時、開いている障子の影から声がした。

「ああ、瑞貴がいる!」

「下の名前で呼ぶな!」

この無駄に大きな声は同期で総務の宮里里美だった。

振り返るとショートカットが似合う元気100倍娘のような里美がいた。里美の後ろには後輩だろうかワンピース姿とパンツルックの女の子2人が立っていた。

「サトサト、今日はどうしたの?」

「そんな蟻が寄って来そうな名前で呼ぶな」

そう言いながら俺の首を絞めてきた。

「宮里、そこら辺にしとけよ」

里美が藤堂の声で一瞬動きを止めた。

「ああ、一弥、発見! ラッキー」

「俺は珍獣か何かか?」

「うんにゃ、珍獣はこっち」

「うらぁ! 誰が珍獣だ」

俺が暴れて中里の手を解くと連れの女の子が笑っていた。

確かに俺はそんなに背は高くないし(自称170センチ)それに少し童顔だが珍獣は無いだろう。

「で、何の用なんだ。里美は」

「同席して良い?」

「駄目」

「そんな事、言わないの。後輩ちゃんがここに来たいって言うから連れて来たの」

里美の言葉で直ぐに理解した。

ここは営業一課の溜まり場だから恐らくここに来れば藤堂に会えるかもしれないと思ったのだろう。

「ほらほら、のっちは奥に行って」

渋々、藤堂の横に座りプチ合コンみたいな状態になってしまった。

藤堂は背も高く落ち着いていて営業部の貴公子なんて呼ばれていたりして女子社員に人気があるのだ。


「それじゃ、改めまして。お疲れ様!」

乾杯を皮切りにサトサトが仕切り始めた。

「それじゃ、まずは自己紹介から」

「今年入社の総務の片桐美和です。宜しくお願い致します」

パンツルックの利発そうな女の子だった。

「わ、私も今年入社の村田果歩です」

大人しそうなワンピース姿の、お嬢様タイプの女の子だった。

「俺らは良いだろ自己紹介は。俺が藤堂で、こっちが珍獣だ」

「だから、珍獣言うな」

藤堂の首を絞めて揺すると彼女達が声を上げて笑い出した。いつも俺がこんな役割を担当している。

同期の中では藤堂は容姿端麗・沈着冷静で俺がムードメーカーと言うかおちゃらけた役回りになっていた。

「そう言えば、さっきは何の話をしていたの? 何でお前だとかキスしたとかなんとか」

「別に、そう言えばそちらの可愛らしい後輩ちゃん達は仕事に慣れたかな?」

何事も無かったかの様に話題を変えて、サトサトが興味を示した事をかわす。

「まだまだですね」

「そうだよね、まだ研修中だもんね。俺なんか研修中は怒鳴られてばかりいたからね」

「そうなんですか」

「うん、でも直ぐに慣れると思うよ」

藤堂は相変わらずの口数の少なさだったが、それでも後輩ちゃん達の質問にはきちんと答えていた。

他愛の無い話をしていると時間も遅くなって来たのでお開きになった。

駅まで皆で歩き別れた。



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