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#6-3.7月18日

7月18日

俺と凛子さんは休暇をとり鎌倉に来ていた。

凛子さんの両親のお墓参りの為だ。

凛子さんの両親のお墓は湘南の海が見渡せる丘陵地にあった。

綺麗に掃除をして墓石にたっぷりと水をかけて、凛子さんが選んだお供え物とお花を供える。

線香に火をつけ手向ける。墓前に2人並んでしゃがみ手を合わせた。

俺が目を開けると隣で凛子さんはまだ両親と何かを話しているようだった。

彼女の横顔を見ているとゆっくり目を開き俺に気付いた。

「ゆっくりお喋りできた?」

「うん、いっぱいお話したよ。瑞貴君は何を話したの?」

「俺? 内緒」

「うぅ、ずるい」

凛子さんに言えるはずが無い

「娘さんを僕に下さい」

なんて言ったらそれこそ恥ずかしがって一日中俯いたままになるだろう事は簡単に予想できた。

「はい、凛子さん。お誕生日おめでとう」

俺はポケットから可愛らしいリボンのついた小箱を取り出した。

「え、ありがとう。開けて良いの」

「良いよ」

凛子さんが慎重にリボンを解いてラッピングを外していく小箱の中にはリングケースが入っていてケースを開けるとシンプルなV字ラインのプラチナの指輪が現れた。

「これって……ルビー?」

「うん、誕生石だよね。凛子さんの」

「ありがとう」

そう言って抱きついてきた。


お墓参りの後は鎌倉の町をブラブラとして湘南の海が見えるイタリアンレストランに来ていた。

「瑞貴君はこの辺も詳しいんだね」

「ええ、そんな事ないよ。それに今の時代はネットで調べられない事なんて殆ど無いからね」

「それじゃ、私のリングサイズもネットで調べたの?」

「それは、トップシークレットです」

「うぅ、ずるい」

数日前に『恋の秘書課』を名乗る人からメールが来てお勧めのお店やスポットが網羅されていて追伸に凛子さんのリングサイズが書かれていた事は伏せておこう。

何故って? それは俺の目の前で嬉しそうに微笑んでいる彼女の薬指に指輪が光っていたから。


そして営業マンにとって辛い夏がやって来た。

「あっちぃ……」

仕事をひと段落させ机に突っ伏す。

「まるで暑さでだれているヒバゴンみたいだな」

「なんにしても俺は珍獣なんだ。そう言えば藤堂は盆休みどうするんだ?」

「特に決めていない」

「あっそ、『小町』とどこかに行くのかと思った」

普段の藤堂はデスクでパソコンを使っている時は顔も見ずに打ち込みをしながら普通に会話をして的確な返事をしてくるが、その藤堂の指がぴたりと止まった。

「どう言う意味だ」

「別に、そのままだよ」

『小町』とはもちろん秘書課の御手洗さんの事である。

「お前はどうするんだ?」

「う、う~ん。お墓参りかな」

「お袋さんのか?」

「うん、彼女がどうしても行きたいって言うからね」

「どこにあるんだ?」

「沖縄の宮南島の離島」

「夏の沖縄か……」

何だか嫌な予感がしてきた。



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