#4-2.と一緒にいたい
午後の仕事を終えて俺は会社の玄関前にいた。
あの後。藤堂があの場を鎮めたが友長は仕事にならず早退した。
俺は課長に事の顛末を報告したが時間が昼休みと言うプライベートタイムだったので不問に付された。
しばらくすると秘書課の3人が現れ一ノ瀬さんは俺と目が合うと視線を外した。
すると御手洗さんが一ノ瀬さんの背中を後押しした。
「何やってんの、凛子さん? 誰の事をのっちが待っていたと思っているの? ほら、行った。行った」
双葉さんは何も言わずにこちらを見て微笑んでいた。
「一ノ瀬さん、少しだけで良いから話がしたいんだけど」
俺がそう言うと一ノ瀬さんは小さく頷いた。
2人で会社の前にある公園を歩く。
初めてデートした公園、今はすっかり暗くなりところどころにある街灯だけが2人を照らしていた。
「座って話をしようか」
「うん」
ベンチに座ると一ノ瀬さんが少しだけ間を開けて俺の横に座った。
そして俺の決意を伝えるために一ノ瀬さんの顔をみた。
「一ノ瀬さん、俺と一緒に……」
「嫌、嫌だ。私はそんなの嫌」
一ノ瀬さんが俺の伝えようとした事を遮り泣き出してしまった。
「また、泣かせちゃったね。先輩、聞いてくれる? これからも先輩の事をたくさん泣かせてしまうと思う。それでも俺と一緒にいてくれる? 俺は先輩と一緒にいたいんだ」
俺の決意、もう逃げないと決めた。俺には仲間が居ると教えてもらったから。
「駄目かな?」
「駄目じゃない、ずーと後輩君と一緒にいたい」
「ありがとう」
右手で優しく流れ出す涙を拭い、頬に手を当てて軽く口付けをする。
もう一度。2人の思いを確かめ合うように深く長く。
そして左手で携帯から空メールを送ると近くの草むらから着信音が鳴り響いた。
その音に驚いて一ノ瀬さんが俺から離れた。
「覗き見は感心しませんね。先輩方」
「花の馬鹿!」
双葉さんの御手洗さんを叱責する声がする。
「えっ、ええええええーー」
一ノ瀬さんの声が夜の公園にこだました。
「さぁ、凛子さん。先輩方に何かご馳走してもらいましょう」
近くのレストランで双葉さんと御手洗さんに食事をご馳走になる。
一ノ瀬さんは始終俯いて真っ赤になったままだった。