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第14話 齟齬

 第一航空戦隊の旗艦を務める空母『コッヴ』は、その巨体を帝都工廠の艤装岸壁に係留されていた。

 その艦尾近くにある長官公室から十数m程離れた航空甲参謀私室に、ふたつの人影が額を寄せ合っていた。片方はこの部屋の主であるジッツー中佐。もう一つの人影は、第一一航空艦隊参謀長であるロウ少将だった。


「ご苦労だった。

 一週間で上げてくるとは、貴様の頭の作りはいったいどうなっているんだ

 それとも、もともと考えていたのかね。

 どうかね、やれそうか、ジッツー?」

 ロウはそれだけ言うとジッツーの答えを待つ。公式の場ではないため言葉遣いは砕けていた。


「いえ、漠然と考えたことはありますが、一から考えたものです。

 ロウさんから言われて、頭を捻りましたよ。

 ですが、呈示いただいた砂雷の使用は、非常に厳しいものがあると考えます」

 ジッツーの顔には謙遜した言葉とは裏腹に、嘘だと書いてある。だが、同時にこれからどうやってロウを説得するか、困り切った表情も覗かせていた。



 数少ない航空通のひとりであるロウは、ひと月かけてある程度骨子を作っていた。

 二月に入り、おそらくはこの作戦を実施する立場になるであろうジッツーに、初めてゴトムの意向を伝えたのだった。もちろん、ロウがジッツーに作戦案を作らせた理由は、それだけではない。ジッツーは戦闘機搭乗員出身の参謀で、航空機について知悉した人物だった。現役搭乗員時代には、三機編隊による巴宙返りを含む特殊編隊飛行を編み出し、『ジッツー曲芸飛行団』とまで呼ばれたほど、操縦の腕も超一流だった。

 そのような生粋の飛行機乗りならば、困難な作戦案もなんとか形にできるだろうと、ロウは判断したのだった。


 ジッツーは僅か一週間で全機爆撃案と、雷爆撃併用案のふたつの案を作りロウに示してきた。

 ハトー泊地への航空攻撃が成功するか否かは、雷撃が可能かどうかであった。なぜなら、ハトー泊地の平均砂深は一二メートルしかなく、現在ソルが保有している航空砂雷は攻撃機が投下し着砂した後、平均数十メートル以上砂に沈んでから航走しつつ調停深度まで浮上してくるものだったからだ。これでは投下した魚雷はハトー泊地の砂底岩盤に突っ込み、その場で爆発するか、信管が起動しないまま破壊されてしまう。

 泊地内での砂雷攻撃は不可能と、ジッツーは結論づけていた。


「つまり、全機爆撃案でいく、ということか?

 それでオリザニアの戦艦を撃沈することは可能なのかね?」

 落胆の表情を隠すことなく、ロウはジッツーに問うた。


「理屈の上では可能です。

 『アーストロン』型戦艦の主砲弾を改造した八〇〇キロ爆弾であれば、オリザニア戦艦の上部装甲板を貫くことはできます。

 しかし、水平爆撃は極端に命中率が落ちますから、二次、三次と攻撃を繰り返さなければ、全艦撃沈は望めません」

 どう言い繕おうと現実は変えられないという意志を視線に込め、ジッツーはロウに答えた。


「そうなると、四ハイでは足りんな」

 そう言うと、ロウは腕を組み、唸った。

 当初、ロウはソル砂海軍が現時点で保有している、制式空母四隻を基幹戦力とする艦隊を考えていた。

 だが、空母四隻で全機爆装では、対艦攻撃力が圧倒的に不足だ。



 対艦攻撃が八〇〇キロ爆弾を装備できる七型艦攻だけだからといって、全艦載機をそれだけで固めるわけにはいかない。

 迎撃機を排除するための戦闘機や、対空砲火を潰すための急降下爆撃機は絶対に必要だ。三種類の艦載機の比率は三分の一ずつから、そう大きく変えることはできない。

 制式空母四隻では、攻撃機はどう多く積み込んでも百機に届かない。せいぜい二度、全艦載機をすり潰す覚悟で三度の航空攻撃が限界だった。

 参加兵力を増やそうにも、他の制式空母は航続距離が短く、ハトーまでの往復が不可能とみられていた。


「やはり、無理か?」

「できないことを、できるとは申せません。

 砂雷投下の技量を磨くことはできますが、砂雷に沈むなと命じることは無理でしょう。

 物理法則を、訓練や精神力で変えることは、不可能です」

 苦い表情を浮かべたまま、だが遠慮などまったくせずにジッツーは答えた。


 結局、ロウとジッツーは、制空任務の戦闘機を増やすため、制式空母四隻に軽空母一隻を追加することにした。そして、雷撃は諦めて攻撃隊は全て爆装とした上で、水平爆撃と急降下爆撃を行うという案をゴトムに提出すると決した。


「では、取り急ぎ案を見直してくれ」

「ロウさん、それは構わないのですが、ウチの長官には?」

 私室の扉を開け、廊下に出たジッツーはロウの言葉に答えながら、廊下の奥にある長官公室の扉をみた。


「分かっていて聞くな。

 貴様が何の障害もなく作戦を練り上げられたのは、誰のおかげだと思ってるんだ?」

 ロウは、安心しろという表情で長官公室の扉を見ながら言って、『コッヴ』を後にした。



「どういう、ことかね、ロウ君」

 連合艦隊旗艦『アーストロン』の長官公室で、怒りの、いや、憤怒に近い表情で、ゴトムは声を押し出した。


「長官、ジッツー君とも子細に検討致しましたが、雷撃は不可能との結論に」

「そんなことは、読めば分かる!

 私が聞いているのは、なぜ諦めたのかということだ!

 こんな案を出させるために、君に話をしたのではない。

 飛行士官学生に聞いたような案など、私は求めていない!

 雷撃ができないのならハトー攻撃は諦める!」

 ゴトムのあまりの剣幕に、ロウは壁まで吹き飛ばされそうな圧力を感じていた。


「ですが、長官……

 砂雷の性能上、彼の地での使用は」

「ハトー攻撃が成らないなら、この戦は負けだ。

 今の砂雷がダメなら新しく作れ。

 間に合わないなら改良でも構わん。

 オリザニア大東砂海艦隊を一撃で葬り去らねば、皇国は滅びると心得よ」

 ロウに皆まで言わせず、ゴトムは一気にまくし立てると、イスに掛けたまま背を向けてしまった。




「レグル、聞いた?

 私たちの練習航海って、オリザニアには行かないんだって?」

 エルミが言った。


 二六四一年二月二三日から二六日までの予定で行われている、士官学校と飛行士官学校合同の近海航海実習で、レグルとエルミは軽空母『キーラ』に乗り合わせていた。

 第三学期が始まると座学の割合は減り、実戦色の強い実習が両校で行われている。

 飛行士官学生の航海実習は空母に限られていたが、士官学生は居住区に余裕のない潜砂艦を除く、すべての艦種に亘って実習を行わなければならない。このため年明けに帝都に戻って以来、ふたりが顔を会わせる機会はなかった。

 それが今回の航海実習で、たまたま同じ艦に乗り合わせたため、ほぼひと月半振りに邂逅を果たしたのだった。


「ああ、二月の終わりから三月の初めにかけて、一四、五日くらいでソル内砂海と内南砂海だけ回るらしいな。

 オリザニアとは緊張状態にあるから、仕方ないだろう。

 間諜扱いされても、お互い嫌な思いするだけだからな」

 飛行甲板上を吹き抜ける埃っぽい風に顔をしかめつつ、レグルは早口で答えた。

 無風状態であっても艦の航進は風を巻き起こし、艦首が巻き上げた砂の微粒子は、否応なしに目や鼻、口の中に侵入してくる。目はゴーグルで保護できるが、鼻と口は剥き出しのままだ。顔全体を覆う防毒マスクはあるが、普段の勤務には使用が禁じられていた。


「酷いわよね、せっかく遠洋航海に行けると思ってたのに。

 期間まで短くなっちゃうし。

 親善航海の意味もあるんだから、今こそオリザニアに行くべきなのに。

 せっかく空母以外に乗れるんだから、もっと遠くへ行きたいよね」

 エルミは、分かっているけどね、という顔で答えた。


「そうだよなあ、オリザニア本土とは言わないけど、ハトーくらいまでは行ってみたかったな。

 あのオアシスにはソルから移住した人も多いから、さほどソルに対して悪い感情はないはずだし。

 もっとも、オリザニア大東砂海艦隊の基地があるから、無理って言えば無理か」

 そう言いながらも、レグルは残念そうな表情を浮かべている。

 昨年度は早い時期に遠洋航海実習が行われ、ハトーから南洋信託統治領を回ってきている。

 それが今年度は夏の時期に航海実習は行われず、行き先の調整に手間取っているうちに卒業間近になってしまっていた。


「それと、聞いた?

 私たちから少尉候補生の時期が短縮されるって。

 今までは一年だったでしょ、候補生期間って。

 それが噂だと半年になるらしいわ」

 エルミが何かを考えるような顔になって言った。

 これまでは士官学生としての遠洋航海実習の後、卒業後にも遠洋航海が行われ、一年の候補生期間を経て正式に少尉として任官していた。それが、レグルやエルミたちの代からは候補生期間が短縮されると、まことしやかな噂が流れていた。


「俺もその噂は聞いている。

 期待半分、不安半分といったところだな。

 本来なら一年かけて指揮だの実務を学ばなければいけないから、その期間が設定されてるんだろ?

 それを短くしちまって、大丈夫なんだろうか。

 確かに少尉の立場は、早くなりたいもんだけどさ」

 少し考えたレグルは、優等生な発言に終始することにした。


 宙ぶらりんな立場より正式な立場が欲しいと思う者たちからは、期間の短縮を歓迎する向きも多々見られた。

 だが、ただでさえ養成に時間のかかる士官を、軽々しく作り出して良いものかと危惧を抱く者も少なくない。他には、いよいよオリザニアとの開戦が、近いためだと言う者もいた。噂の域でしかない『半年』と言う時間が一人歩きし、任官直後の少尉にいきなり指揮をさせるはずはないと、そこからさらに数ヵ月後が開戦だとしたり顔で話す者までいる。

 ただし、開戦避戦、開戦するならするでその時期などに関しては、国家機密でも最高の部類の事案だ。軽々しく口にして良いものではない。あまりこの話題について話し込んでいては、いつ教官の拳や平手が飛んでくるか分からない。

 レグルは、休憩時間の終了を告げる号令に、救われたような気分になっていた。


「あまり、この話はするなよ、エルミ。

 ガンルームで調子に乗ってて、張り倒されても知らないからな」

 作業帽を被り直し、レグルはエルミに釘を刺して対空射撃訓練へと戻るために立ち上がった。


「分かってるわよ。

 レグルこそ気をつけなさいよ」

 魔力体力を異常に消費する飛行訓練の休息は、他兵科とは異なっている。

 まだ身体を休めるべき立場のエルミは、レグルの背中に悪態をつきながら、飛行甲板直下の搭乗員待機所に降りて行った。




 ゴトムから厳しく叱責され、再度ハトー攻撃案の練り直しを命じられて以来、ロウは南工廠近郊の第一一航空艦隊司令部の参謀長公室で呻吟していた。

 ゴトムの剣幕に押し切られたロウは、雷撃に関しては攻撃前までに攻撃法を研究開発することにして、雷爆撃併用に案を改めることでようやくゴトムの怒りを解くことができていた。その後、軍令部に顔を出し、士官学校同期の軍令部第一部長リューモ少将に作戦準備を密かに依頼している。もちろん、軍令部の了承などまだ取っておらず、公式な依頼ではない。

 帝都泊地を母港とする『コッヴ』に乗艦するジッツーと、直接会って作戦案を練り上げるため、ロウは帝都への出張回数が増えている。だが、第一一航空艦隊参謀長としての業務を滞らせるわけにも行かず、ロウの日常は多忙を極めていた。ロウ直属の上司である第一一航空艦隊司令長官エーキ中将はロウの状態を正確に把握しており、極力第一一航空艦隊内の実務を他の参謀たちに振り分けるようにしている。エーキはエーキなりにゴトムの意図を悟っており、密かにそれを支援する態勢を司令部内に整えていた。

 ロウからの報告がないことも、機密保持の観点から織り込み済みのことだった。


 ロウ少将とジッツー中佐作成によるハトー攻撃の航空作戦草案は、それぞれの上司や部下同僚たちの有形無形の支援を受け、二月二六日にやっとの思いで完成された。

 最初に突っ返されてからほぼひと月後に、ようやく連合艦隊司令部へ提出されたのだった。

 それを元に、先任参謀は旗艦『アーストロン』の私室にこもり全体成案を練り始めた。

 ロウ・ジッツー案は、ハトー攻撃に参加させる空母を、航続距離の長い第一航空戦隊の『コッヴ』、『ブリッツ・ブロッツ』と、第五航空戦隊の『アパテー』、『アルギュロス』の制式空母四隻にしていた。だが、先任参謀は攻撃力不足と判断し、第二航空戦隊の『デットン』、『テレスドン』の二隻を加えた六空母による攻撃計画を立案した。もちろん、先任参謀自身も航続距離の短い『デットン』と『テレスドン』に対する砂海上補給が、最大の問題点であると認識している。

 砂嵐が吹き荒れる砂海上での魔鉱石補給を、いかに上手くできるかどうかに作戦の成否がかかっていた。先任参謀の頭の中は、これを解決する方策を考えることで占められていった。




 近海実習最終日の二月二六日、軽空母『キーラ』は母港である帝都泊地へと砂海上を航行していた。

 『下船準備』の号令まで、僅かの間ではあるが、両校学生には自由な艦内見学の時間が与えられている。級友たちと一通り砲術関連の施設を見て回ったレグルは、ふと思いついて級友たちと別れて、搭乗員待機所へと足を運んだ。

 エルミとレグルが幼馴染みであり、レグルの許嫁も同様であることを知っている級友たちは、そのままレグルを残してガンルームへと向かっていた。


「どうした、エルミ。

 疲れ果てた顔してるじゃないか」

 搭乗員待機所には、エルミがひとりでぽつんと座っているだけだった。

 余程疲れているのか、上体をテーブルに伏せただらしない格好をしている。万が一、指導教官に見つかりでもしたら、平手打ちの一発も喰らわされかねない。


「なによ、レグル。

 貴重な休息を邪魔しないで」

 顔を上げずにエルミが答える。


「休憩時間じゃないんだけど、今。

 他の生徒はどうしてるんだ?」

 呆れつつもレグルはイスを曳き、エルミの正面に腰掛けた。


「あなたたちと私たちは課業の時間割が違うの。

 みんな仮眠中。

 さっきまで発着艦訓練やってたんだから。

 私も寝たいんだけど、だるくてここから動きたくないの」

 そう言いながらも、エルミはまだ顔を上げようとしない。


「確かに着艦は神経も魔力もすり減らすって言ってたな。

 それにしても、だらしなさ過ぎなんじゃないか?」

 多少認識を改め、レグルは返した。


「前に乗った『ブリッツ・ブロッツ』とか、『デットン』みたいな制式空母なら、こんな疲れないの。

 『テレスドン』は艦橋が左舷にあって着艦はやりにくいけど、ここまで神経は使わないわよ。

 でも、この『キーラ』は別格なの。

 揺れは大きいし、飛行甲板が短いから着艦が怖いのよ」

 ようやく顔を上げたエルミだが、疲れのせいか顔色が良くない。


 『キーラ』は、軍縮条約下で無理矢理建造されたという経緯があり、他の空母に比べいろいろと歪な形状をしていた。

 トップヘビーな上部構造物を持ち、少しでも飛行甲板を広く使うため、実験空母で良好な運用成績を収めたフラットデッキを有している。だが、艦橋を飛行甲板の最前縁直下に設置することは、対空戦闘に際して上空視界を確保するため艦橋より前に飛行甲板を伸展できないことを意味する。

 その結果、『キーラ』は飛行甲板長一五六.五メートル、幅二三メートルと、空母の中では飛行甲板が最も小さい艦となってしまった。


「確かに『ブリッツ・ブロッツ』は二四八.六メートルあるし、『デットン』だって二一六.九メートルだもんな。

 『テレスドン』が着艦し難いのは聞いていたけど、それとはまた違うのか?」

 レグルは座学で聞いた知識から、エルミに質問した。


「そうねぇ『テレスドン』は艦橋が左舷にあるでしょ。

 『コッヴ』もだけど。

 そうなると、着艦空域にちょっとの気流の乱れがでるの。

 その上さ、これは艦橋が左右にあるとか関係ないんだけど、他の艦に比べて後に建ってるのよ。

 この配置だと、着艦する時に艦橋に突っ込みそうになる感じがあるの。

 でも、『キーラ』は着艦時にちょっとでも甲板の中心からずれるとね、眼の下にすっ飛んでいく砂海が見えちゃって、別格の怖さなのよ」

 疲れを顔に滲ませたまま、溜め息をつくようにエルミが言った。


「そうか、知らんこととはいえ、済まなかったな。

 だけど今からそんなんで、大丈夫なのか?」

 どうしていいか解らないまま、レグルは聞いた。

 下手に同情しては、エルミの飛行士官学生としての誇りを傷つけかねない。

 実習中の艦内で、いくら幼馴染みとはいえ、肩を抱くような真似が許されるはずもない。チェルの宿で飲んだくれて潰れたときのようなことができるわけではなかった。


「いいの、こっちこそ悪かったわ。

 『キーラ』で完璧な発着艦ができれば、あとはどの艦に配属されても大丈夫って考えればいいんだもん。

 ただ、ちょっとね、遠洋航海に行きたかったなぁって、ね」

 眠たそうな目でエルミが言った。


「エルミ、俺は内南砂海の航海には、意義があると思っている。

 最近、よく喧伝されている西部大東砂海共栄圏ってのがどんなものか、この目で確かめておく必要はあるんじゃないか?

 もう寝ちまえよ。

 帰港するまで、やることはないんだろ?」

 エルミの言葉にレグルは、厳しい目つきでそれだけ言うが、最後の一言は優しげに言葉を投げかける。


「うん。

 西部大東砂海共栄圏ね。

 寝る。

 レグルも、身体休めときなよ」

 そう言ってエルミは欠伸をしながら身体を伸ばし、搭乗員待機所を出て行った。




 西部大東砂海共栄圏とは、現在の外相が初めて公にした言葉だった。

 ドラゴリー大岩盤やバキシム大岩盤の列強諸国の植民地支配から、東ベロクロン、東南ベロクロンを解放し、この地域にソルを盟主とする共存共栄の新たな国際秩序を建設しようという壮大な構想だ。

 ソル皇国、フェクタム帝国、メディエータ共和国を一つの経済共同体とし、東南ベロクロンを資源の供給地域に、南部大東砂海を国防圏として位置付けるものとした、『西部大東砂海がソルの生存圏』であると宣伝されていた。


 外相の外交基本方針は、西部大東砂海共栄圏の完成を目指すこと。その一点に尽きた。

 外相は、北方から大東砂海共栄圏を脅かす共産主義国家のロス共和国とは、何らかの協定を結び、味方に引き入れることができなくとも中立化を図りたいと考えていた。そうなれば、ソル―ロス共和国―アレマニア共和国―ウィトルス王国とベロクロン大岩盤からドラゴリー大岩盤を横断する枢軸国の勢力集団が完成する。このベロクロン・ドラゴリー枢軸構想とも、四国連合構想とも呼ばれるそれは、オリザニアとサピエントを中心とした『持てる国』との勢力の均衡をもたらし、ソルの安全保障ひいては世界平和と安定に寄与する、と考えていた。


 だが、建国の思想からして異なり、ソル国内においては共産主義者を迫害している現状で、ロス共和国との中立化は何にも増して困難と周囲からは見られていた。

 しかし、外相はロス共和国と不可侵条約を結んでいるアレマニア共和国の仲介があれば、充分な可能なことだと判断していた。外相は周囲の雑音に耳を貸すことなく、三国軍事同盟およびソル・ロス中立条約の成立に邁進した。

 そのなりふり構わぬ外交の成果は、まず前年九月の三国軍事同盟成立として表れていた。


 二六四一年三月一三日、外相は三国同盟成立慶祝を名目としてアレマニアとウィトルスを歴訪し、それぞれの総統と総帥の両首脳と首脳会談を行い、熱狂的ともいえる大歓迎を受けていた。

 アレマニアとウィトルスからの帰路は、直接ソルへ戻る船便ではなく、ロス共和国の首都からフェクタム帝国を経由し、メディエータを突っ切って帰国するドラゴリー横断浮遊路線での旅が計画されていた。当然、ロス共和国の首都では、同国の首相との会談が予定されている。このとき外相は、この会談でロス共和国との間に、なにかしらの条約なり取り決めまで持ち込む腹積もりだった。





「まだ修行先に戻るあてはつかないのか?」

 チェルの宿の食堂で、手持ち無沙汰にしているガルが聞いた。


「うん。

 廃業するようなことはないんだけど、あたしたちまで抱えとく余裕がないみたい。

 親方は新しい修行先を探してくれてるんだけど、メディエータ料理自体がね」


 努めて明るく振る舞っているが、焦燥の色が滲み出ているチェルが答えた。


「やっぱり、あれか?

 敵国だからか?」

 躊躇うようにガルは言った。


 ソル・メディエータ基本条約の締結に伴い、両国は表面上友好国となっている。

 だが、共和国政府と共産主義政府との内戦は継続しており、ソルはメディエータ共産主義政府との戦争は継続している。多くのソル人にとってメディエータがふたつの国に分裂しているなど関係のないことであり、大きな括りの中では敵国人でしかなかった。事実、共産主義政府の手の者や、積極的に政治活動に関わってはいないものの大岩盤を侵されている現状を快く思わない在ソルメディエータ人が、ソルの国内情報を共産主義政府に流すなど、それなりの敵対行為も摘発されていた。他愛のない世間話から情報を引き出された一般のソル人が、利敵行為を働いたとして官憲に引っ張られることも少なくなかった。

 このような現状が、未だ戦端を開いていないオリザニアやサピエントに比べ、在ソルメディエータ人や、メディエータ発祥の文化への風当たりを強くしていた。


「そうなのよ。

 やっぱり、ね。

 条約があっても、実際戦争は続いているものね。

 でもさあ、サピエントとかドラゴリー風はいいんだよね。

 オリザニアだってドラゴリーの分身みたいなものなのに。

 ソル以外の料理は、アレマニア風とウィトルス風以外は認めないっていうなら、まだ納得はできるよ。

 でも、メディエータだけダメって、どういうことなんだろうね」

 憤懣やるかたないという表情で、チェルはテーブルを叩いた。


 二年次への進級が決まっているガルは、三月二〇日に春休みになってすぐ村に戻っていた。

 チェルのいない帝都など、ガルにとっては何の魅力もない。そこまで言っては言い過ぎかも知れないが、学友たちが帰省し、レグルとエルミは遠洋航海から戻っていたが、卒業を目前に控え追い込みで多忙を極め外出など夢のまた夢となれば、帝都にいる理由はない。そのふたりも四月になれば、少尉候補生となって一時帰省してくる。

 実家の仕事を手伝わなければならないことも、ガルが帰省している大きな理由だ。


 チェルは年明けから二〇日ほどは、滅多にない機会だとばかりにのんびりと村で過ごしていた。

 親方からの魔通を待っていたが、『モウ暫ク待タレタシ』という魔通が三回送られてきただけだった。チェルは先の見えない待機生活に痺れを切らせて、一度修行先まで行ってみた。だが、家族だけで店を切り盛りする親方の姿を見て、チェルは店に入ることも、親方に面会を求めることもせず、帰ってきてしまったのだった。確かに店は繁盛してはいるが、弟子を食わせておけるほどではなかった。 それ以上にチェルの足を止めさせたのは、近くの街角やカフェに張り込む特高と思しき目つきの鋭い者たちの姿だった。


 対メディエータ戦争を戦っている皇国にとって、それが例えソル風にアレンジされた料理であってもメディエータを賞賛するような行為は利敵行為と取れてしまう。メディエータの料理を出しているだけで、戦争に反対し、メディエータに肩入れし、国家に対して良からぬことを企む輩が集まっているように疑われているのかもしれない。

 国家が総ぐるみで、疑心暗鬼に陥っているといっても良かった。


「こう言っちゃなんだけどさ、それはしょうがないよ。

 サピエントもオリザニアも、ちょっと前まで手本にしてただろ。

 それに比べてあれは、料理以外……」

 吐き捨てるようにガルは言った。

 そして、料理以外に良いところを探そうとして口ごもる。


 まだソルが文化を持つ遥か以前、既にメディエータでは高度な文化が発達していた。

 ソルはメディエータから様々な知識や技術、文化を吸収し、急速に発達してきた歴史がある。長い間、メディエータはソルの先生だったといっても過言ではない。

 だが、二百年ほど前からメディエータの国情は廃頽し、とても文化的とはいえない国家に成り下がっていた。プライドだけが肥大化し、新たな技術開発もせず、太平の世に眠り込んでいった。

 人口や国土は世界有数の国であり、潜在能力は計り知れないものがあるが、メディエータが眠りを覚ますことはなく、『眠れる獅子』と呼ばれていた。もちろん、その潜在能力に恐れを抱いての呼称ではなく、『何をしても目を覚ますことのない図体だけでかい無能者』という意を込めた蔑称だった。


「ガル、そういうことを言うもんじゃないよ。

 ひとりひとりは良い人なんだよ、あの国の人は。

 確かに集団になると……」

 チェルは言い返したが、思い当たるふしが多すぎて、ガル同様に口ごもってしまった。


 個々人の付き合いにおいて、メディエータの人々から不利益を受けた記憶を、チェルはほとんど持っていない。

 修行先の店にいたメディエータ人たちの大半は、戦況の泥沼化に伴って帰国してしまっていたが、僅かに残ったメディエータ人がソル人に対して悪意を以て向き合うことはなかった。ベロクロン大岩盤に帰るところを持たない弱みもあるのだろうが、地域に溶け込み、経済活動を継続するための努力は積極的に続けている。

 だが、コミュニティ同士に諍いが起きた場合は、暴力に訴えることこそなかったが、頑迷な対応に終始することが多かった。


 コミュニティ同士が問題解決のために話し合いに席を設けたとして、その席までは和気藹々と肩を並べて歩いてくるソル人とメディエータ人が、いざ議論を始めると殺伐とした雰囲気を纏い、ついには掴みかからんばかりになる。そのメディエータ人の豹変した剣幕に、ソル人がたじたじになる場面がほとんどだった。

 場が紛糾し、暫く頭を冷やそうとなって休憩を取り、議会の席から一歩出たメディエータ人がそれまでの剣幕を一切消し去り、日常の話題を笑顔で振ってくるに及んで多くのソル人は混乱するばかりだった。メディエータ人にしてみれば、集団の利益を自身の一言でふいにしたと、後々仲間内から攻められまいという処世術だったのだが、その豹変ぶりはソル人の理解を遙かに超えていた。中にはメディエータ人から苦しい胸のうちを打ち明けられ、その立場に同情するソル人もいるにはいる。しかし、多くのソル人には表裏のある、ソル人の倫理では最も嫌われる態度と受け取られていた。

 決して悪人ではないのだが、問題が起きる度に両者の間には溝が深まっていった。


 気まずい沈黙の中、唐突にチェルが口を開いた。 

 「ねぇ、あたしの料理食べてみてくれないかな。

 メディエータの料理って味が強いから、ソルの人にはちょっときついよね。

 ソル人向けにならないか、少し調整してみたんだ。

 当分、ここでやっていかなきゃいけないみたいだし、帝都みたいに本格メディエータ料理が売りになるとは思えないのよ」

 そう言うとチェルは、一般的にメディエータ鍋と呼ばれる大きな両手鍋をコンロに乗せた。


 魔鉱石が配給制になり、必要以外はコンロに火を入れることはない。

 だが、メディエータとの戦争が長引き、新たな戦乱の予感がある今、どこの宿も客足は落ちる一方で魔鉱石には却って余裕が出るという皮肉な状況になっていた。チェルの宿も例外ではなく、軍関係の出張の中継地として利用される以外、観光はもちろん商用の客足も途絶えがちになっている。

 多少魔鉱石を仕事以外に消費しても、それほど影響があるとは思えなかった。



「そういえば、チェルの料理を食うのは久し振りだな。

 楽しみにしてるよ。

 でも、いいのか?

 夜の仕込みとかあるんだろ?」

 腹の中では、それを独占できるレグルに対しての嫉妬が渦巻いているが、ガルはその状態を自虐的に楽しむことで開き直っている。

 とにかく、今はチェルの料理を独占できる千載一遇の機会だ。

 それも新作とあっては、まだレグルも知らない料理のはずだ。

 チェルの仕事を気遣いながらも、あとで自慢してやろうと、ガルは年に似合わない幼い優越感に浸っていた。


「大丈夫だよ。

 今夜のお客さんは一組だけだから」

 そう言うとチェルは保冷庫から材料を探し出し、まな板に載せて切り始めた。


「なあ、レグルが帝都以外に赴任することになったら、いや、勤務地が帝都でも、乗艦勤務になったらどうするんだ?」

 料理の完成を待ちながら、ガルはチェルに訊ねた。


「悩んでる」

 手を休めることなく、チェルは正直に答えた。


「ついて行くことは間違いないよ、夫婦になるんだもん。

 でもなぁ、ただ待つだけは嫌。

 料理の修行は続けたいし、レグルの俸給だけを宛てにするのも、なんか、ね。

 基地勤務なら、その近くの料理屋で修行するのもいいなぁって思うよ、あればだけどね。

 それか基地の士官食堂で雇ってくれないかなぁ。

 そうすれば、側にいられるもんね。

 でも、乗艦勤務になったら……」

 具材を刻み、下味をつけながらチェルは続けた。

 ガルは黙ってチェルの手元を見ながら聞いている。


「乗艦勤務になったら、この村で待ってるのも手だけどさ。

 いっそ、あたしも軍属に応集して、レグルが乗る艦に配属してもらおうかしら」

 チェルの言葉に、ガルが盛大に噴き出した。だめだ、俺の入る隙間なんかこれっぽっちもねぇや。


 解っていたことだったが、チェルが村に残ることに僅かとはいえ望みを抱いていた自分が滑稽すぎた。

 たとえ、チェル独りが村に残ったとして、レグルの妻に言い寄るなど質の悪い間男でしかない。ガルは、今まで自分が考えていたことがそういうことだと気付き、己が倫理観に照らし合わせて愕然としながら噴き出してしまった。


「何よ、ガル、失礼ね。

 そんなに笑うようなこと?」

 鉄製のお玉を振り回し、チェルが口を尖らせた。


「ごめん、太平楽に考えてる自分が莫迦みたいでさ。

 将来のこと、俺以外はみんな真面目に考えてるんだなって」

 家業を継ぐことが決定しているガルは、学問を修めることが村の発展のためという、漠然とした考えを持ってはいた。

 だが、己が一生を賭け、何かを追い求めようという夢を持っていないことに、このときはっきりと気付かされていた。

 チェルの側にいたい。この一心だけで帝都への進学を決め、チェルが村に戻ることを期待して家業を継ぐ決心をしていた。


「どうしちゃったの?

 ガルらしくないよ。

 ガルだって、鍛冶屋の仕事をより良くするために学校に行ってるんでしょ。

 自信持ってよ。

 はい、味見てね」

 チェルは自分自身が主たる原因であることにまるで気付くことなく、ガルの前に料理を出した。

 ガルの前に置かれた皿には炒めた挽き肉と豆腐を軽く煮込み、とろみつけたものが湯気を立てていた。


「これ、前に修行先の店で出してもらったやつに似てるけど?」

 箸をつける前にガルが聞いた。

 確かに見覚えはあるが、具材や仕上がりの色と香りが別物だった。


「まあ、いいから食べなさいって。

 麻婆豆腐を改良したんだよ。

 蒜苗なんて手に入らないからね。

 修行先では農家に特別に頼んで作ってもらってたから。

 レグルかエルミの家で作ってもらうにしても、需要があたしの宿だけじゃ、ねぇ。

 何か代わりのものって考えて試してたら、これが一番良かったの」

 得意げにチェルは鼻を動かした。


「これは……醤油が主役の味付けか。

 これもご飯に合うな。

 うん、俺は、この方が好きだな。

 親方の料理も美味かったけど、毎日食うにはきついんだよな。

 これなら毎日でもいけるよ。

 ソル人にはこの方がいいんじゃないか」

 汗を拭いながらガルが言った。

 辛みはかなり控えめにしてあるが、普段から辛いものを食べ慣れていないソル人のガルにとっては結構な辛さだった。


「花椒が手に入らないからね、代わりに山椒を使ってみたんだよ。

 美味しいでしょ。

 親方の作る本格メディエータ料理もいいんだけどさ、あれって口に合わない人も多いからね。

 ソル風に作り替えてもいいんじゃないかって思うの。

 親方の前でやったら張り倒されそうだけど。

 ウチの売りにできるかな」

 そう言ってチェルは笑った。


「うん、でも、気を付けてやってくれよ。

 メディエータに肩入れしてるって思われると、痛くもない腹を探られることになっちゃうぜ。

 レグルの立場を考えると、あまり勧められることじゃないな」

 ガルは、率直な意見を言った。


 帝都でもメディエータ料理店が、共産主義者の集まりの場に使われることがあった。

 すべてではないが、そういった店のオーナーや店主がメディエータ共産主義政府に連なる者であったり、そのシンパであったりで、集まりの場を提供していたのだった。もちろん、客が共産主義者と知らずにいた店主も多いが、心情的に隠れ蓑になっていることを黙認する者も多かった。中にははっきりと断るチェルの修行先のような店もあったが、メディエータ料理を出す店は、官憲から目を付けられているといっても過言ではない状況だった。

 その状況下で宿の売りに改良しているとはいえ、メディエータ料理を持ってくるなど、ガルには危険に思えた。


「大丈夫だよ、ガル。

 憲兵も特高も、こんな田舎まで来るほど暇じゃないでしょ。

 でも、ありがとう。

 レグルのこと考えると、あまりやらない方がいいよね」

 そう言うとチェルは、少し寂しそうな顔をした。


「うん、まあ、客を選べばいいんじゃないかな。

 この辺りの人なら大丈夫だろうし、帝都からの客には出さないようにすれば」

 しゅんとなったチェルを見て、ガルは慌てたように取り繕う。

 チェルが憲兵や特高に目を付けられたらと思っての物言いだったとはいえ、チェルに全否定と受け取られたようにガルは感じてしまったのだった。


「うん、気を付けるよ。

 ありがとう、ガル。

 あたし、ちょっと焦ってるのかもね」

 気を取り直したように小さく笑い、チェルは食器を片づけ始めた。

 確かにガルの言うとおりで、レグルの立場を考えればメディエータ料理の修行は暫く諦めるべきだった。


「うん、別にチェルを否定するわけじゃないんだ。

 最近よく魔導放送で聞く西部大東砂海共栄圏が上手くいったらさ、大手を振ってやれるんだからさ。

 今はちょっと我慢しておくだけだよ。

 改良料理の味見なら、村にいる限り引き受けさせてもらうぜ」

 言外に自分以外、せいぜい家族とレグル、そしてエルミだけにしておけとの意味を含め、ガルはことさら明るく言った。


「そうだね、もうすぐレグルも帰ってくるし。

 それで封印しようかな」

 暗い目になりつつ、チェルが呟いた。




「大尉、ここが今夜の宿であります」

 背中に鉄棒でも入れているのではと思えるほど、きっちりと背筋を伸ばした男が真っ直ぐ前を向いたまま言った。


「少尉、軍人然とした態度はここまでにしてくれ。

 せっかくの休暇が、堅苦しくなっては敵わん。

 それに、一般の宿だぞ。

 宿の方に余計な気を使わせるようなことはするなよ」

 仕立ての良いスーツを肩にかけ、柔和な笑みを浮かべたもうひとりの男が嗜めるように言う。


「はっ、失礼致しました。

 では、ここから改めさせていただきます」

 それでも上官に対する最低限の礼を失しないように男は答え、スーツを片腕に抱えなおして歩き始めた。

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