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鳳雷石の煌めき短編集

婚約者に「妹のようなものだから」と言われ続けたので、本当の妹を連れてきました。

掲載日:2026/10/24

新作連載あります!

https://ncode.syosetu.com/n9595mp/


王宮騎士警備課リルダ『わぁあ!今日も修羅場!?』~令嬢たちの理不尽な出来事をきっちり警備します!私の婚約者が、世界を滅ぼしたループ2回目のヤンデレ魔王だとは夢にも思ってませんが~

宜しければお読み下さいませ。

「マリー、アリスは妹のようなものだから、大目にみてくれ。」


(はい、出ましたっ。いつものセリフですね。)


私はティーカップの紅茶を1口飲んだ。

口の中にダージリンの香りが広がる。


(今日は、私にとって利益ある時間が送れるといいのだけど。)


私は、マリー・キャラバン。キャラバン子爵家の長女で、三歳年上の兄がいる。


複数の商会を経営していて、私自身も幾つか商会を立ち上げている。


それ故に、私は根っからの商売人。

ついつい、頭の中で利益と不利益の損得勘定をする癖がある。




そして先程、学園時代に、委員会で知り合った赤の他人の令嬢を『妹のようなもの』と私にチンプンカンプンな事を言ってきたのは、婚約者のロン・ミハルド。


同じく領地経営だけに留まらず複数の商会を経営している子爵家、ミハルド子爵家の三男。



商売の関係で深い関わりがあり、非常に馬が合い家族ぐるみの付き合いをしている。


その為、ミハルド子爵家とキャラバン子爵家の縁談が持ち上がった。

双方の『得』になるものだから。




今日は、私の20歳の誕生日で、20歳の節目ということもあり、いつもより盛大な誕生日会。


両親や、多くの友人そして婚約者の家族も参加している。


ちなみに、ロンには事前に招待状を送付した際に、出席者リストも送付してある。


きちんと、私の手紙を確認しているのならば、当然把握していること。



キャラバン子爵邸の大広間の大きな大理石の柱の隅にあるソファーでの出来事。


物陰に隠れた途端、この調子。いつもの調子。


   『妹のようなものだから、』 ってね。


婚約者のロンがふん反り返り、腕を回している隣には、婚約者の私ではなく、ピンク色の髪の毛に黄緑の瞳の『妹のような存在』アリス。


カリビア子爵家の令嬢アリスが頬を寄せ、寄り添うように座っている。


クスッと口の端が笑い、黄緑色の瞳の奥は、勝ち誇った色を滲ませている。


       この仕草、妹??ハテ?


妹のようなものだから、アリスが優先。


細々したものは、数え切れない位、この『妹のようなものだから』で予定はキャンセル又はアリスも一緒についてくる。


例えば最近の出来事で言えば、2週間前のオペラ鑑賞。

何ヵ月も前からとても楽しみにしていた。


そして、当日、アリスが風邪ひいた?可哀想だから一緒にいてやらないと?


何歳?アリス。1人で寝てろ。


私は好きなオペラで楽しみにしていた。

…とても損な気持ち。


オペラの鑑賞券…このままキャンセル。

オペラに行かないのは…。非常に損だ。


だから、1人で行った。


そもそも、別にロンと一緒に行きたかったわけではない。


私はオペラを鑑賞したかったのだ。1人でオペラに行けて、少し得した気分。


そこでたまたま『兄のような人』に出くわした、挨拶程度に少し話しただけだったけど、…。


何気ない会話だったけれども、楽しかった。


少し得した気持ちになった。


一週間前は、夜会があった。

エスコートしてたね、アリスを。


私…、壁の花。じっと壁から動かなかった。

ロンと合わせた若緑色のドレスで立つと、まるで観葉植物みたい。


流石にそこからすごく噂になってるよ。婚約者よりも別の令嬢を優先してるってね。


他の令嬢達が、チラチラとロン達と私を見てヒソヒソと話している。


私の令嬢としての価値が下がる、……損だ。


しかし、そこでたまたま『兄のような人』と『妹のような人』に会った。


会話が弾んでたくさん話した、楽しかった。


…非常に得した。



それで、今日。

私の20歳の誕生日会。

いつもより盛大で節目の大切な誕生日会。


そこに、呼んでない、呼ぶ筈ない。


招待してないけれど、来た。


ロンのエスコートでアリスが。


流石にコーディネートは私とロンで合わせてたけど。


アリスも合わせてるね、ロンの瞳の色。


若緑色の髪飾り。若草色のドレスのワンポイントのリボン。


ロンのネクタイピンはペリドットをあしらったネクタイピンにネクタイの色はピンク色。

    

        ぶっ飛んでるね。

        色合いも変だし。


      兄弟でそんな事をするの??


実の兄とお互いの瞳の色のコーディネートをした自分を想像してみる。


(ごめん、お兄様っ。気持ち悪いです。ウェッ。)


私は緑色のドレスの裾をギュッと握りしめ、また1口紅茶を飲んだ。


すると、ダージリンの豊かな香りがする。

この、紅茶は良い、非常に良いものだ。


紅茶好きの母が、特別なルートを用い仕入れている。高価だがそれたけの価値はある。


…得だ!


合理的だからと、安いからといって良いとは限らない。



紅茶を飲んだ後、思わずカッと目を見開いた先には、給仕が運んで来たフルーツの盛り合わせを互いに食べさせあっているロンとアリスが目に飛び込んできた。


アーン、おいしいっ。あま~い、とかなんとか。


(なんだろう!?これは何を見せられているのだろう…。兄と妹の日常?なのか?)


何時間も前から着飾り、たてまえ的にしょうがないので若緑色のドレスに身を包み、同じ色の婚約者と過ごそうとした私。


その結果、婚約者と妹のような人?とのイチャイチャを見せつけられている時間。


…損だな、損っ。大損。


私はため息をついた後、チラリと大きな柱の影を見た。


(あっ。準備万端みたいだわ。)


コホンと軽く咳払いをし、いちゃいちゃし続けている2人に向き直る。


「コホンッ。ところで、アリス様今日はどういった御用でおいでになったのですか?」


「あらっ、やだ、マリー様のお誕生日をお祝いに来たのですわよ。」


(あら、やだ。その割に『おめでとう』の一言もなかったですわよ。)

ずっと、これ見よがしにいちゃいちゃしてただけ。


「アリス様、申し訳ないですが、今日の誕生日会は招待させて頂いた方のみの参加となっておりますので。」


「なっ!マリー、君って人は、面白いことをいう。

ハァー、アリスは俺の『妹のようなもの』なのだから、プレゼントがないだとか、それ位大目に見たまえ。」


(面白い事を言っているのは、あなたです。)


「さいですか、では招待状の件は大目に見させて頂いて、無しとして。」


「では、申し訳ありません。私へのプレゼントはあちらの係のものにお渡し下さい。」


「なっ!君は自分のプレゼントを自分からねだるのか?」


「申し訳ありません、招待状もなくご入場されたため、係のものがご案内してないかと思いまして。」


「ハァッ、君は本当に…。根っからの商売人だね、自分から催促するだなんて。」


「フゥ~、やれやれ。それにアリスは俺のかわいい『妹のようなもの』なのだから、そんな招待状がいるだとか、プレゼントがいるだとか。…!そんな水臭いことを。大目に見るものだろう。」


「妹のようなもの、とは妹と同じ…、つまりは妹ということですか?」


「そうだ、妹なのだから、色々融通を効かせて許してやらなくてはな。」


(こんなに、皆さん近くまで来ているのに、何も気付いてないとは…。自分達に酔ってるのかしら?)


ソファーには幾人かの人影が映る。


(ジャジャーン『本当の妹』です、なんちゃって。)


そう…。ロンとアリスの座るソファーの隣には『本当の妹』、本当の兄達、本当の両親。


私の両親と兄もいる。


「もうやめてっ!!!ロンお兄様、もうこれ以上はもうやめて下さい。『妹』をただのアホで変な奴にしないで下さい。」


『本当の妹』キャロラインが兄に怒り、大声を出す。


握った手がわなわなと震えている。


ロンは、余程驚いたようでソファーから、ずり落ちた。


(ずっと妹のようなものはいたのに、本当の妹が登場したら、この慌てよう。あらら、面白い!)


ロンの妹キャロラインは、私と同じ年で、キャロラインもまた根っからの商売人だ。


最近は、私と服飾部門で幾つか共同開発をしている。


「ロンお兄様!一体全体何をしているの?」


あっ、Gをみるような、見下した眼差しだ。

兄弟ならではですね!?


「私は、マリー様からきちんと、招待状を頂いて、勿論、私なりに考えた贈り物も持参しました!!」


「それとっっ!私は幼児でもあるまいし兄にフルーツを食べさせてもらってません!ましてや…!ましてやこんな皆のいるところでお互いの瞳の色のコーディネートとか、気持ち悪っっ!!!いやっ!心底……気持ち悪っっ。」


キャロライン様は身震いをし、自分の腕をさすった。


こんなに、キャロライン様が怒っているのも無理ないのだ。


何故なら、あらゆるところでロンが妹、妹と言うものだから、一部の事は『本当の妹』のキャロライン様がやったことになっていて、周囲では重度のブラコン扱いになっていたのだ。


そのお陰でまとまりかけていた縁談が一度立ち消えそうになった。


先方との話し合いの場に、私も立ち会い説明し、納得して貰って何とかキャロライン様の縁談はうまくいった。


最近、正式に婚姻を結んだ。


そんな事もあり、共同事業をしていたりと、色々と関わることも多く、いつしか同じ年ではあるが、本当の妹のような、友人のような関係になっていた。


お互いの両親がロンとアリスに歩み寄る。


「私の娘はキャロライン、1人だけです。」


「と、いうか年齢で言うなら、キャロラインとマリーさんは同じ年だから、マリーさんも『妹のようなもの』なのでは?ロンは、もっとマリーさんに優しくしなくてはいけなかった、というか妹に優しくしているロンは、見たことないけども。」


「そもそも、妹は妹。妹のようなものは、他人、…。赤の他人だよ。」


「……と、言うことはロン君は娘の大切な20歳の誕生日会に呼んでもない赤の他人の異性を連れてきて、お互いの色のコーディネートをし、2人ソファーに座り、フルーツを互いに食べさせていた、と言う事になるな。」


「それは……!あまりにも酷い話ですわ。娘の誕生日会で浮気相手と堂々とじゃれ合うだなんて、信じられません。」


「ハァー、、申し訳ございません。うちの愚息が…。学園では経営を学んでおり成績も良く、それなりに事業も上手くまわしているため、商才のあるマリーさんと釣り合いが取れ丁度良いと思っていたのだが…。」


「本当に申し訳ないことをした。」


「こんな愚息とマリーさんとでは釣り合いが取れない。今回の婚約は破棄とさせて頂きたい。勿論、それ相応の慰謝料はお支払いする。本当に申し訳なかった。」


ロンを除いたミハルド一家は、深々と誠意ある謝罪をした。


「それ相応の慰謝料ですか…。」


父の商売人らしい愛想の良い口許とは裏腹に目の奥がぎらついた。


「慰謝料は要りません。」


「……が、代わりに…、次男のキース君とうちの娘を結婚させて頂きたい。」


(えっちょっっお父様っっ!ボケたの?)


父の突然の発言に戸惑う。こちらがダメだから、こちらって…。品物じゃないんだから。


だけど、心の声とは反対に私の白い肌がみるみるうちにリンゴように真っ赤になった。


深緑の瞳がこちらを見る。


(今まで義兄になるお方だと思っていたから、『兄のような人』だと思っていたから、まさか…まさか…。義兄…『兄のような人』と私が結婚するなんて、そんな、そんなことして良いの?)


(ん?あっ、でも実際は兄ではないし、婚約は破談になったのだし。何も問題はないのでは?)


心の奥に蓋をしていた恋心が溢れる。


(あ、好きだったかも。、話しているとすごく楽しいし。)


けれどもキースは、王宮で騎士をしていて、最近までは大きな戦争に行っていた。


故に事業を共にしていくのならば、ロンのが相応しい、合理的、と両家はそう思って本人達も納得し婚姻が結ばれた。


が、一つ大事なことを忘れていた。


私は、私は、従業員を採用する感覚で婚約をしたけれど、けれども…、違うわ、。


(違うわよね、夫になる方は合理的と言うだけで選んではいけなかったのよね。)


ミハルド子爵がキース様を見た。


するとキース様は私の元に歩み寄り、跪いた。


「一目見たときから、好きでした。」


「『妹のようなもの』だと自分の気持ちに蓋をしてきましたが……。」


「……愛してます!結婚してください。」


(キャーーッ真っ直ぐなプロポーズ。この方を嫌いじゃない限りオッケーするよね!これは。)


唇が震える。

「私も『兄のような方』と気持ちに蓋をしておりました。」


「愛しております。結婚して下さい。」

私の濃い青色の瞳から、涙が溢れた。


大きな手に柔らかなハンカチを持ち、私の涙を拭ってくれる。


深緑の瞳には、安堵と深い愛の色が滲んでいる。


あぁ、この色。


私は薄く明るい緑よりも、深い緑が好き。

損得も大事だけれど、好き嫌いも大事。


(好きです。とてもとても。)






その後、ロンはというと、商会でいちから下働きとして働いている。


元々は、ロンもそれなりに商才があった為、与えられた仕事をきっちりとこなしているみたいだ。


ただ、また懲りもせず『妹みたいな人』と付き合っているらしい、しかもキャロライン様よりも年下で、平民の娘と聞いている。


その辺りは家族は黙認している、もう、子爵家としてロンの結婚相手を探すつもりもないらしいし。


アリスはどうなったかと言うと…。

キャラバン子爵家に、それ相応の慰謝料を払った為、アリスに払う結婚時の支度金がなくなり、支度金無しでOKのとある成金のひとまわり以上年上の男爵家の嫡男に嫁いだ。


今度は『兄のような』というか、『父のような』人だ。


けれども、意外にアリスと相性よく暮らしているみたいだ。


成金とうけど、うちも成金みたいなものだし、成金ってお金があり裕福ということだしね。


お金があって、損な事はないから。





それで、私はと言うと…。


キース様とめでたく結婚。

キース様は、騎士として更に功績を挙げ、王から伯爵位と領地を賜った。


キース様と私は国境沿いの領地に行き、2人で領地経営などに奮闘しながらも楽しく幸せに暮らした。


しかも、その領地には清らかな水とそこでしか取れない染料が採掘出来た為、私は新たな商品開発をし領地は豊かになっていった。


私にとっては、とても『得』だらけの日々だ。


キース様にとっては『損』ではないかと思う位。


……けれどもキース様は、深緑の瞳で、こう言った。


「あの湖は、マリーの瞳の色みたいでとても綺麗だ。この土地に愛しい人と一緒に過ごすことが出来る。幸せだ。」


そして、私の唇にキスをしてくれるのであった。


(終わり)

















最後までお読み頂きありがとうございます!

少しでも良かったよ!面白かったよ!と思っていただけましたら

☆→★~★★★★★

宜しくお願い致します。

今回は?『面白さ』にも挑戦しましたので。

宜しくお願い致します!

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