「病弱な妹の代わりに嫁げ」と言われたので、冷血辺境伯に嫁ぎました
「お姉ちゃん、窓」
母の呼び声に、わたくしは薬の盆を片手へ持ち替えた。
この家でわたくしの名前を呼ぶ声を、もう十年も聞いていない。
窓を細く開けると、朝の風が薬草の苦い匂いをさらった。寝台のアデーレは掛け布を顎まで引き上げる。
「お姉ちゃん、寒い。閉めて」
「空気を入れ替えたらすぐに閉めるわ」
「すぐって今よ。喉が痛くなったらどうするの」
「お姉ちゃん。アデーレは弱いのですから」
母に言われて窓を閉めた。手を離す前に、もう一度外を見る。庭の木には枯れ葉が残っていた。遠くで馬車の車輪が鳴っている。
あの音を、自分を迎えに来た馬車の音だと思ってみたかった。
妹が幼い頃、夜中の咳に眠れず、わたくしも隣で起きていた。
元気になった日は一緒に喜んだ。庭を歩けるようになると、手を引いて花を見に行った。
けれどアデーレが夜会へ出かけるようになっても、わたくしの朝は変わらなかった。
煎じ薬を運び、着替えを選び、母の望むように窓を開けて閉める。
「昨日のお薬は残っているわ。今朝の分は医師に確かめてからにしましょう」
「お姉ちゃんは本当に細かいのね。あの先生、少し歩いてもいいって言ったじゃない」
「お薬を増やしていいとはおっしゃっていないわ」
「アデーレを不安にしないでちょうだい」
母は妹の額に手を当てた。わたくしの言葉には返事をせず、妹の髪だけを撫でた。
父が書状を持って入ってきたのは、盆を下げようとしたときだった。
「アデーレ。北の辺境伯から縁談が来た」
「北の? あの冷血辺境伯?」
妹が身を起こした。昨夜の舞踏会で聞いた噂を、わたくしも着替えを手伝いながら聞かされていた。
亡き妻の葬儀でも涙を見せず、国境の砦へ戻った男。
近づいてきた令嬢に娘の母親は不要だと言った男。
「先方には幼い娘がいる。再婚相手を探しているそうだ」
「嫌よ。わたしは寒いところで子守なんかできないわ。ねえ、お母様」
「もちろんよ。あなたの体に障るわ」
母の返事は早かった。
父は書状を折り直し、ようやくわたくしを見た。
「病弱な妹の代わりに嫁げ」
盆の上で、薬の匙が小さく鳴った。
「わたくしが、ですか」
「伯爵家の娘であれば先方の面目も立つ。お前には縁談も来ないし、世話をするのは慣れているだろう」
「向こうのお嬢様には母親が必要でしょう。わたくしでいいのでしょうか」
「お前が心配することではない。話はこちらでつける」
父は妹に向き直り、夜会の誘いを受けるか尋ねた。アデーレの頬が明るくなる。
「侯爵家の次男様でしょう? 行くわ。今度こそ青いドレスを着たいの」
「北は寒いのに、夜会へは行けるのね」
言ってしまってから唇を噛んだ。
妹は首を傾げた。
「夜会には暖炉があるもの。お姉ちゃん、何を怒っているの?」
「お姉ちゃんはしっかりしているでしょう。アデーレとは違うのよ」
母がたしなめる声はいつも優しかった。
わたくしが何も欲しがらなければ、優しいままでいてくれた。
北へ行くと答えたのは、その日の夕方だった。
冷血と呼ばれる人の妻になるのは怖かった。それでも、ここに残って次の朝も盆を持つほうが怖かった。
自分の部屋へ戻り、箪笥の底から細い紐を取り出した。幼い頃、乳母が髪を結んでくれた紐だった。
「リュディア。今日はどちらの色にする?」
乳母の声だけは、まだ思い出せる。
わたくしは桃色を選び、アデーレは黄色を選んだ。同じ長さに切ってもらって、同じ椅子に順番に座った。
乳母が里へ帰ったとき、わたくしは十三だった。妹の世話はお姉ちゃんに任せましょうと母は言った。
そのまま、わたくしは名前の代わりに役目をもらった。
紐を小箱に入れて荷をまとめる。
父が持たせた縁談の書状には、妹の名を二重線で消し、わたくしの名をその横に書いた跡があった。
「先方には変更を知らせてある。ごねるなよ」
「ごねません」
「ならいい。花嫁衣装は、アデーレの白いものを使え」
妹が舞踏会で一度着て、袖が重いと嫌がったドレスだった。
肩の幅だけはよく合った。裾は自分でほどいて縫い直した。
出立の朝、母は箱を抱えて玄関へ来た。
胸が小さく跳ねた。餞別だろうか。
「向こうでよい毛皮が手に入るそうね。アデーレに送ってちょうだい。寸法を入れておいたわ」
箱の中は妹の手袋だった。
わたくしは蓋を閉じて返した。
「着いてからのことは、まだわかりません」
「そんな言い方をして。夫に頼めばいいでしょう」
「まずはご挨拶をしないと」
それだけ言うにも勇気が要った。
「お姉ちゃん、わたしの飾り針は?」
階段の上からアデーレが呼ぶ。
「鏡の右側の引き出しよ」
「あと青い靴も出しておいて」
御者が扉を開けた。
わたくしは荷物を抱え、足をかけた。
「靴は自分で出してね」
妹の返事を聞く前に、馬車の扉が閉まった。
北の館の門で、馬の蹄が止まった。
石造りの館は灰色で、屋根には薄く雪が残っている。門の旗は黒く見えたけれど、近づけば濃い緑だった。
父から三年も着た外套を渡され、北へ送られた花嫁には、立派すぎる館だった。
玄関でわたくしを迎えたのは、黒髪の背の高い男性だった。
「ラザールです。長旅をさせた」
「リュディアと申します。妹の代わりに——」
「変更は承知している。本人の名で書類を用意した」
言い終わる前に、彼は手を差し出した。
馬車から下りて以来、震えていた手を添える。その手のひらは、手袋を通しても温かかった。
「冷えたな。話は中で」
小さな客間に暖炉が燃えていた。侍女が湯気の立つ茶を置き、分厚い敷物に靴の踵が沈む。
机には白い紙と筆が用意されていた。
今度は、消された名前がない。
ラザール様の隣に、リュディア・ヴェルネと書かれている。
「婚礼の前に確認したい。こちらを読んでほしい」
彼が渡したのは婚姻証書とは別の紙だった。
「三年後、あなたが離縁を望むなら私は同意する。その後の住まいと当座の暮らしは保障する」
「三年の妻ということですか」
「あなたをここへ縛るつもりはない。家の都合で来たと聞いた」
目が合った。
父の指図に逆らえずここへ来たと、彼には知られている。
茶に手を伸ばしたが、器を持ち上げられなかった。
「では、それまでに果たす仕事を教えてください」
「仕事?」
「お嬢様のお世話や、館のことを。お嫁に来たのですから」
「娘には近づかなくていい」
声が硬くなった。
「あなたを母親にしようとは考えていない。私の娘は、新しい人を迎えるのが難しい」
来る前に聞いた噂と同じ言葉だった。
わたくしは茶の縁を見る。
「役目がなければ、わたくしは何をすれば」
「まず、休んでほしい」
返事ができなかった。
馬車で疲れた者には休めと言うのだろう。なのに、その先に命令が続かないと落ち着かなかった。
「今日中に署名する必要はない。嫌なら断っていい」
「断ったら、父の家へ戻されますか」
「戻りたくなければ戻らなくていい。別の行き先を一緒に考える」
彼は机から手を離した。
急がせないためにそうしたのだと、わたくしにもわかった。
「リュディア殿。結婚したくないのか」
名前を呼ばれ、遅れて顔を上げた。
「……申し訳ありません。聞き逃したのではないのです」
「私の言い方が悪かったか」
「久しぶりだったので」
「何が」
「名前で呼んでいただくのが」
彼の指が机の上で止まった。
わたくしはまた、余計なことを言ったと思った。
けれど、ラザール様は聞き直さなかった。
「では、リュディア殿。ここを見て決めてほしい」
今度はゆっくり呼んでくれた。
わたくしは紙を読み、離縁の選択がわたくしにあると確かめた。
「わたくしは、ここで暮らしてみたいです」
それから立会人を呼び、小さな婚礼を挙げた。
自分の名前を署名する筆が震えた。妹の袖が手首を覆い、先が汚れないよう折り返す。
ラザール様はそれを見ていた。
部屋の扉を開けると、薪が爆ぜた。
侍女はわたくしの荷を置き、きちんと整えた寝台を指した。
「お休みになる前に湯を使われますか、奥様」
「わたくしの部屋は、ここですか」
「お気に召しませんでしたか」
「広いので、間違いかと」
侍女長のマルタさんは、真っ白な眉を上げた。
「なら、ゆっくり慣れていただかないと。こちらの広さを縮めるのは大工に悪うございます」
冗談かと思って顔を見ると、彼女は澄ましたまま敷物の端を直していた。
笑っていいのか迷い、少しだけ笑った。
湯のあとで運ばれた夕食には、わたくしのための焼き菓子がついていた。
「残ったら下げますので、ご無理はなさらず」
「甘いものをいただいていいのですか」
「奥様が召し上がらなければ、誰がいただくんです」
妹のお菓子を半分もらうのとは違った。
全部食べても、誰の分もなくならない。
匙の先の蜜が舌へ広がる。飲み込むと、張りつめていた喉までほどけた。
夜、廊下へ出たのは、洗った食器を返そうとしたからだった。
奥の扉が細く開いていた。
隙間に、小さな女の子が立っている。栗色の髪を肩へ落とし、布の兎を胸に抱いていた。
「こんばんは」
言った途端、扉が閉まった。
皿を持つ手を引き、戻ろうとすると、後ろからマルタさんが来た。
「お嬢様にお会いになりましたか」
「驚かせてしまいました」
「ネル様は五歳です。人の気配には敏いのですが、まだ慣れないでしょう」
「ネル様」
名前を口の中で確かめる。
マルタさんの視線が扉へ向いた。
「お母様が亡くなられてから二年、言葉をお話しになりません。医師も様子を見ております」
「耳は聞こえていらっしゃるのですね」
「呼べば振り向かれます。望むものを指して教えてもくださいます。声が出ないだけで、わからないわけではありません」
「ご返事を待ってしまいました」
「それは、お嬢様もよくわかってしまうんです」
母親の代わりが来たと、ネルは聞かされているのだろうか。
何も知らずに来たわたくしが、たった今、返事を要求してしまった。
「ここへご挨拶に来てもよいか、明日お尋ねしていただけますか。嫌でしたら来ません」
「旦那様にまず伺います」
「お願いいたします」
わたくしは廊下の奥へ向けて会釈した。
「おやすみなさい、ネル。ご返事はしなくていいのよ」
扉の向こうで、布が擦れた。
翌日、マルタさんはわたくしの部屋に小さな絵を持ってきた。
黒い線で扉が描かれ、その隣に丸い顔がある。
「ここに座ってもよいそうです。ただし、部屋へはお入りにならないように」
「ありがとうございます。絵もお返ししますね」
「それは奥様へ差し上げるそうですよ」
受け取った紙を撫でた。自分のための贈り物を、荷物の箱に入れるのがもったいなかった。
寝台のそばに立てかけた。
夕方、ネルの扉の前へ座った。
「リュディアです。夕食までここにいるわね」
何を話せばよいのか迷った。母を失った子に、妹の話はしたくなかった。
小さい頃、乳母が手を取って教えてくれた遊びを思い出す。
指を一本ずつ開いて、膝を叩く。とん、とん。
「ひとつ、ふたつ、ここにいる。みっつ、よっつ、どこにいる」
でたらめな節で歌ったら、最後の音が裏返った。
「間違えちゃった。次は少し上手に歌うわ」
その日は返事がなかった。
帰るときも、名前を呼んで挨拶だけした。
次の日は、扉の下から兎が顔を出した。
入っていい合図かと思いかけ、待つ。小さな手が兎を引っ込めた。
「兎さんも聞いてくれたのね。ありがとう」
扉には触れず、自分の膝を叩いた。
また、その次の日は、兎が扉に押しつけられたまま歌を聞いていた。
七日目。わたくしが膝を叩くと、木の向こうからとんと返ってきた。
胸に飛び込んできた音を、大事にしまうように手を止めた。
開きかけた口を閉じ、もう一度だけ膝を叩く。
とん。
返ってきた。
声はなくても、ネルはここにいると教えてくれた。
「床は冷えますよ」
マルタさんが厚い毛布を持ってきた。
「もう少ししたら戻ります」
「それは昨日もおっしゃいました。旦那様が通られるまで座っておいででしたね」
「覚えていらしたのですか」
「廊下に奥様が座り込んでいれば、忘れたくとも忘れられません」
そう言いながら、彼女は毛布を二つ折りにして床へ敷いた。
「お嬢様の小さな敷物も出しておきます」
やがて扉が開き、ネルが敷物の上に座った。
わたくしの膝ではなく、兎の腹を叩く。とん、とん。
同じようにしたら、わたくしの指をじっと見た。
わざとひとつ多く叩いてみる。
ネルの眉がきゅっと寄った。
「今のは多かった?」
小さな頭が頷いた。
「そうよね。兎さん、もう一度お願いします」
ネルは兎の手を持ち上げて、わたくしの指へ触れさせた。
角を曲がってきたラザール様が、足を止めた。
ネルは兎を抱き直す。わたくしも立ちかけた。
「続けていい」
彼はわたくしの隣ではなく、廊下の反対側に腰を下ろした。
わたくしが歌うと、ネルが膝を叩く。
ラザール様が同じようにしたら、今度は拍子が早すぎた。
ネルは父を見て、もう一度眉を寄せた。
「……これは難しいな」
「砦の皆様と歩調を合わせるよりですか」
「砦では私が合わせてもらう」
わたくしが笑ったら、ネルの口元も丸くなった。
夕食の前、ラザール様は廊下に残った。
「最初の日の言い方を謝りたい」
「お嬢様に近づかないように、というお話ですか」
「前の縁談の相手は、娘のことを話すたびに泣いた。新しい母を呼べば治ると言う者もいた。私はそのたびに止めた」
彼は閉まった扉に視線を置いた。
「あなたにも同じことを言ってしまった」
「心配だったのですね」
「あなたを確かめる前に遠ざけた。すまない」
謝ってくれる人に、何と返せばよいのだろう。
「わたくしも、ご挨拶をするのにご返事を待ってしまいました」
「マルタから聞いた。娘に聞いてくれたそうだな」
「嫌なときはわかるように伝えてもらえると、助かります」
「私にもそうしてほしい」
その言葉を聞いて、彼を見上げた。
「あなたが嫌なことも、私に教えてほしい」
冬に入る頃、ネルはわたくしの部屋にも来るようになった。
マルタさんと一緒に来て、絵を描いたり、縫い物を眺めたりする。
母の形見だという兎は、左袖が破れていた。
「直してもいい?」
尋ねると、ネルは兎を背中へ隠した。
「では、そのままにしましょう」
ネルはしばらくわたくしの手を見たあと、針山を指した。
「他のものを縫うところが見たいの?」
頷いたので、自分の花嫁衣装の袖を直した。
着る機会は少ないが、折ったままだった袖を自分の長さにしたかった。
ネルが帰ったあとで、ラザール様が小さな縫い物を持ってきた。
「これを見てくれるか」
布の隅に、糸が固まっている。
「何をお作りに」
「兎の着替えだ。娘が欲しがっているらしい」
「お針子さんに頼まれなかったのですか」
「娘に頼まれたのは私だから」
ラザール様は真顔だった。
口元を押さえたが、笑い声が漏れた。
「これをほどくところからですね」
「そんなに悪いか」
「兎さんが、両腕を上げたままになってしまいます」
「戦う兎にはしたくない」
今度は声を出して笑ってしまった。
彼も短く笑った。眉間に刻まれていた皺が、笑うと浅くなる。
「色を選んでくれないか。あなたはどれが好きだ」
「ネルなら、黄色がお好きだと」
「娘の好みはあとで尋ねる。今はあなたに聞いている」
紐の入った小箱に、思わず視線をやった。
「桃色が好きでした」
「今は嫌いなのか」
「嫌いではありません。似合うものを考えるようになって、自分では選ばなくなってしまいました」
「なら、あなたのための布も頼もう」
「わたくしはこれを直せば」
「足りるかどうかではない。あなたが着たいかどうかだ」
わたくしは妹の白い袖を見る。
もう一度、彼に向き直った。
「桃色の襟なら、つけてみたいです」
「そうか」
ラザール様の口元が上がった。
彼が嬉しそうなとき、わたくしはまた何か言ってみたくなる。
その夜、ネルの咳で目が覚めた。
廊下へ出るとマルタさんが医師を呼びに行くところで、ラザール様はネルを寝台に座らせていた。
わたくしが入口に立つと、ネルの手がこちらへ伸びる。
初めて、兎を持っていない手だった。
医師の診察が終わるまで、わたくしはその手を握っていた。
薬を飲ませるのはマルタさんが手伝った。わたくしは指示されたように、水を少しずつ口へ運ぶ。
急がせず、首を振られたらやめた。
ラザール様は枕を直し、次の指示があれば聞き逃すまいと医師を見ていた。
医師が隣室で休むことになると、マルタさんが言った。
「旦那様、奥様。交代でお休みください。お嬢様が落ち着かれたら、まず奥様に眠っていただきます」
「わたくしなら起きていられます」
「起きていられることと、起きてよいことは違います」
小言を置いて、彼女は湯を取りに行った。
ネルは目を閉じた。けれどわたくしが手を緩めると、指が追いかけてきた。
「ここにいるわ。離すときは先に教えるから」
わたくしが歌の節を小さく口ずさむと、指が一度だけ動いた。
ラザール様が寝台の向こうで額に手を当てる。
「二年前も、急な熱だった」
わたくしは彼を見た。
「妻から使いが来たとき、私は砦にいた。戻って、娘を抱いた。娘は私に、母が寝ていると教えた」
暖炉の薪が崩れた。
「それから娘の声を聞いていない。最初は、この子まで連れていかれた気がしていた」
彼の手が寝台の端を掴んでいる。
「ネルは、ここにいますね」
ネルが眠りながらわたくしの指を握り直した。
「これで、嫌なときは教えてくださいます。声がなくても」
「そうだな。あなたが来て、娘の合図が私にも少しわかるようになった」
彼は兎を枕のそばへ置いた。
「話すようになるかは、わからない。私もそこばかり見てしまうことがある」
「わたくしも間違えたら、おっしゃってください。ネルのことは、まだ教わっているところです」
「私もだ」
窓の雨戸に雪が擦れる。家の灯りが消えたあとも、誰かと一緒に起きている。
妹を看病した夜には、母を起こしてはならなかった。父は明日の仕事があるからと、部屋の隅へわたくしを座らせた。
眠ってしまうと、母は翌朝悲しそうに言った。お姉ちゃんに任せたのに、と。
「何を考えている」
ラザール様に尋ねられ、首を振りかけた。
嫌なことも教えてほしいと言われたのを思い出した。
「妹は、本当に体が弱かったのです」
誰に言い訳をしているのか、自分でもわからなかった。
「でも、わたくしは疲れていました。もう元気でしょうって、ひどいことを思っていました」
「世話をやめたかったのか」
「世話だけをする人になるのが嫌だったのだと思います」
言葉にすると、胸を押していたものの形がわかった。
「笑えば、自分だけ楽しんでいる。寝れば、薄情な姉。妹の薬が苦い日には、なぜ甘くしなかったのかと。いつも何か、わたくしの間違いがあるのです」
ネルの手を強く握らないよう、肩の力を抜いた。
「向こうでは、あまり眠れませんでした」
ラザール様が立った。
何か失望させたのかと顔を上げると、彼はわたくしの肩へ毛布をかけた。
「ここで働きすぎないでほしい理由ができた」
「お役に立てないと、わたくしは」
「あなたは妻だ」
毛布の端を整える手が止まる。
「言い方が足りないな。家のために世話を続けないといけないとは、思わないでほしい」
「妻が何もしなくてもですか」
「何かしたいならしていい。休みたいなら、そう言っていい。私に頼むことも覚えてほしい」
彼はネルの手を見た。
「この子が離したら交代しよう。その間、あなたには寝ていてほしい」
朝が雨戸の隙間を白くした頃、ネルは指を開いた。
わたくしが立つと、ラザール様は隣の椅子を引き寄せる。
「よく寝てくれ、リュディア」
初めて、殿をつけずに呼ばれた。
わたくしは何も言えず、自分の部屋へ帰った。
寝台に横になると、掛け布はとっくに温められていた。マルタさんが湯を入れた袋を取り出しに来た。
「眠ったらお嬢様の様子を見られません」
「起きられたらお伝えします」
「ラザール様のお茶も」
「わたしにお任せになって」
目を閉じても、誰も咎めなかった。
ネルがまた兎を持って歩けるようになった日、桃色の襟が届いた。
縫い物の礼だと言われたので、つけてみた。鏡の中で、見慣れた白いドレスがわたくしの服になった。
午後のお茶に着ていくと、ラザール様はしばらく何も言わなかった。
「おかしいですか」
「よく似合う」
わたくしが椅子を引く前に、彼が後ろへ回った。
「座ってほしい。今日は娘の見舞いではない」
食卓には二人分の茶がある。ネルはマルタさんと庭へ雪を見に行っていた。
「これは、何のお話のためでしょうか」
「あなたと茶を飲みたいと思っただけだ」
「わたくしと」
「ここに来て好きになったものはあるか」
領地の感想を聞かれるのだと思った。豊かな倉、頑丈な門、よく働く人たち。
答えようとして、やめた。
「干した林檎の入ったパンが好きです」
「料理長が喜ぶ」
「蜜より、少し酸っぱいところが。あと廊下の敷物は滑らないので、急いでも怖くありません」
「あなたが急いでいるところは、よく見る」
「呼ばれた気がしてしまって」
少しだけ笑うと、彼は笑わなかった。
「急がずに来ていい。私なら待つ」
冷めないうちに茶をいただいた。
林檎のパンは半分に割り、彼にも差し出す。
「どうぞ。わたくしが好きなほうです」
「大きいほうを渡してくれたな」
「半分にできなかったのです」
「なら、次はあなたに大きいほうを渡す」
ラザール様はパンを受け取った。
こういう話をする間、わたくしは何の役にも立っていなかった。ただ、お茶を飲んでいた。
それを望んでくれる人が、向かいにいた。
翌週、父から手紙が届いた。
侯爵家の次男とアデーレの縁談がなくなった、と書いてある。
続いて北の毛皮の取り引きが盛んだと聞いたこと、辺境伯家は十分豊かで、妹の体にも快適な暮らしがあること。
最後に、冬至の前に迎えに行くから準備しておくようにとあった。
アデーレを正式な花嫁にする。
お前はもう、戻ってよい。
手紙を折る音が、部屋でやけに大きかった。
以前なら、荷物をまとめていただろう。大丈夫だとネルの頭を撫で、どうして大丈夫なのか説明できないまま帰っただろう。
今は、戻りたくない。
その望みを持ってしまった自分が、怖かった。
扉を叩く音に振り向くと、ネルが兎を抱いて立っていた。
わたくしの手紙を指し、次に棚の小箱を指す。
あれは、ここへ持ってきた荷物だった。
「まだ、何も決めていないわ」
安心させたいのに、声がうまく出ない。
ネルをマルタさんに託して、わたくしは夫の書斎へ行った。
「読んでいただけますか」
手紙を渡すと、ラザール様は机を離れた。
読み終えて、わたくしを見る。
「あなたは帰りたいか」
「帰りたくありません」
今度はすぐ言えた。
「なら、そのように返事を書こう」
「でも、最初にお望みだったのは妹です。妹のほうが若くてきれいです。お話も上手です」
「あなたと話すとき、私はそれを比べたことがない」
彼は手紙を机へ置いた。
「娘があなたを慕うから留まってほしい、という話でもない。リュディア。私はあなたがここにいてくれると嬉しい」
「わたくしが、ネルのお世話をしなくても?」
「私の手から針を取り上げて笑うあなたも好きだ。自分の好物を教えるのに迷って、パンを食べるとほっとするところも」
逃げたいほど顔が熱くなった。
「そんなところをご覧になっていたのですか」
「見ていた。あなたが私の隣で笑う時間を、増やしたい」
彼は手を伸ばし、届く前に止めた。
「手を取っていいか」
わたくしから、その手に指を重ねた。
「わたくしも、ラザール様とお茶を飲むのが好きです」
夫の指がわたくしの指の間へ入った。
「役に立ったお礼をもらう時間ではなかったから」
「それなら、これからもそうしよう」
彼の手を握っていると、返事を待つ父の顔が遠くなった。
ネルに大丈夫と言う前に、自分の望みを伝えに来てよかった。
冬至の前日、伯爵家の馬車が門に着いた。
すでに返事を送ったのに、両親とアデーレは荷物を持って現れた。
玄関で父が言った。
「お姉ちゃん。まだ支度をしていないのか」
わたくしの隣にはラザール様がいた。彼を見れば庇ってくれるとわかっていたけれど、先に口を開いた。
「わたくしは帰りません。ここにいたいのです」
「家へ帰らないということか」
「そうです」
「辺境伯殿。娘は慣れない土地で張り切りすぎている。妹に任せて休ませようと思っていまして」
「私は妻の話を聞いている。伯爵もそうしてくれ」
父の笑顔が固まった。
母がわたくしに近づいた。
「お姉ちゃん。アデーレが嫁ぐのだから、あなたは助かるでしょう」
「お母様、わたくしはもう嫁いでいます」
「もとはあの子の話だったのよ。そこを取り戻すだけでしょう」
わたくしの袖に母が手を伸ばした。
桃色の襟を留めた、白いドレス。
「そのお召し物だって、アデーレので」
「この服は、もらったものです」
わたくしは一歩下がった。
「返したほうがよければ返します。でも、わたくしまで妹のものにはなりません」
背中へ小さな手が触れた。
マルタさんといたネルが、わたくしの後ろに立っている。
アデーレの視線が下へ向いた。
「まあ、可愛い子。わたしが新しいお母様よ」
妹は膝を折り、両手を出した。
ネルはわたくしの服を握る。兎を抱く腕が胸に上がった。
「こちらへいらっしゃい。お姉ちゃんのお仕事は終わりよ」
「ネルは、こちらにいたいそうです」
わたくしは妹の前へ手を添えた。
「触れないでください」
「お姉ちゃんが離れないからでしょう。ねえ、辺境伯様。わたしならちゃんと母親に」
「娘の母はセシルだ。リュディアは私の妻だ」
ラザール様がネルのそばへしゃがんだ。
「マルタと奥へ行くか。ここにいるか」
ネルはわたくしの袖を握り続けた。
「では、ここにいよう」
父が縁談の書状を出した。
妹の名の横にわたくしの名が書かれた、あの紙だった。
「正式な縁談は妹のほうに来ています。ここを見ていただければ」
「変更を申し出たのは伯爵だ。私はリュディア本人と婚礼を挙げた」
「こちらの事情を汲んでくださったのは承知しております。今度はこちらが事情を」
「妻は帰らないと言った。それが私の返事でもある」
夫は書状へ手を伸ばさなかった。
父が差し出した紙の端が揺れる。
「お姉ちゃん、アデーレに恥をかかせるの」
母の声が低くなった。
昔、妹の菓子を先に食べてしまったときと同じ声だった。
自分の居場所を欲しがると、誰かのものを盗んだように責められる。
わたくしはネルの手に、そっと手を添えた。
「わたくしの名前は、リュディアです」
母は口を閉じた。
「妹のために戻る約束はしていません。ラザール様の妻として、ここで暮らしたいのです」
ラザール様が立ち上がり、わたくしと手を繋いだ。
「伯爵。近くの宿へ案内する。今日は日が暮れる前に休まれたほうがいい」
「館に部屋もないと?」
「妻と娘が落ち着いて過ごす日だ。ここへは泊められない」
アデーレが父の袖を引いた。母はわたくしを見たまま動かなかった。
父が先に踵を返し、母と妹が後に続いた。
門が閉まるまで、わたくしは夫と手を繋いでいた。
馬車の音が遠ざかる。
膝が緩み、夫の腕を掴んだ。
「怖かった」
それだけが口から出た。
「よく言ってくれた」
ラザール様が支えてくれた。
「夫でなくても、味方でいていただけましたか」
「あなたが選ぶためなら」
わたくしは彼の胸に額を預けた。
ネルは服の裾を引き、その下で兎の耳をこちらへ伸ばしていた。
泣いているわたくしに、貸してくれようとしていた。
冬至の大広間には、樅の枝が飾られた。
蜜蝋の火が温かい匂いを連れてきて、長い卓では焼いた肉が切り分けられていく。
歌いたい人が歌い、騎士が昔の失敗を話し、厨房の者たちが笑った。
わたくしの席はラザール様の隣で、ネルの小さな椅子も横に置いてあった。
ネルは入口で足を止めた。
いつもより人が多く、椅子の脚が床を擦る音も大きい。
「部屋で食べてもいいのよ」
わたくしがしゃがむと、ネルは卓を見た。
それからわたくしの襟に触れた。
「わたくしと一緒?」
頷くのを待って手を差し出す。
ネルは兎をマルタさんに預け、わたくしの手を取った。
卓に着くと、マルタさんが兎用の敷物を椅子へかけた。
新しい服を着た兎も隣に座る。
「ラザール様、袖が上がっています」
「縫ったのはマルタだ」
「わたしが直したのは片方だけでございます。もう片方は旦那様がどうしても、と」
「娘に見せる前に、やり直せばよかった」
ネルが父を見て、兎の袖を引っ張った。
ラザール様はおとなしく針仕事の失敗を認め、ネルの前へ小さなパンを置いた。
わたくしは笑いながら、温かい汁をいただく。
食事が進むと、マルタさんがわたくしの耳元へ言った。
「林檎のパンを出しました。あちらにございます」
卓の端の籠に、丸いパンが重なっている。
ひとつ取って、ネルとラザール様と分けよう。
そう思って立ちかけたとき、裾を掴んでいたネルの手が離れた。
「……リュディア」
椅子から浮かせた腰を、わたくしは下ろした。
騎士の笑い声がまだ向こうにあり、卓のそばで皿が重なった。
その間に届いた、小さくかすれた呼び声だった。
見下ろすとネルがわたくしを見ていた。
唇が開いたまま、息をしている。
返事をしなくては。
なのに、喉の奥に熱いものが詰まった。
「ここにいるわ」
わたくしは椅子を降り、ネルの隣に膝をついた。
「パンを取りに行こうと思ったの。黙って立ってしまったわね」
ネルの指が、わたくしの手のひらを叩く。
とん、とん。
いつもの合図を返すと、小さな腕が上がった。
「抱いてもいい?」
ネルは自分から、わたくしの首へしがみついた。
名前を呼んでくれた子を、わたくしは抱きしめた。
栗色の髪から、いつもの石鹸の匂いが上がった。涙がそこへ落ちないよう顔を上げる。
何が起きたのか確かめたいのに、もう一度言ってと頼みたくなかった。
今の声を、言えたかどうかの試しにしたくなかった。
ラザール様は、椅子の横に手をついたままこちらを見ていた。
口を開いても何も言わず、眉間を押さえた。
マルタさんが背を向けて、卓へ器を置いた。肩が一度揺れたが、いつもの口調で厨房の者を呼ぶ。
「パンをこちらへお願いします」
誰もネルを囲まなかった。
わたくしたちのそばだけ、食事の流れがゆっくりになった。
夫がわたくしの隣へ膝をついた。
ネルの背へ手を置き、わたくしの肩にも手を添える。
「リュディア」
彼もわたくしを呼んだ。
「聞こえましたか」
「聞こえた」
それから、夫は何度か息を継いだ。
「私には、言えないことがたくさんある。今も、うまく言えない」
「急がなくていいです」
ネルに言ってきた言葉が、そのまま口から出た。
夫の手が、わたくしの背でしっかり止まった。
「あなたと娘と、明日も同じ卓で食べたい」
涙が頬を滑った。
ラザール様を見て、頷いた。
母の呼び声には、いつも用事がついていた。
窓を開けて。薬を持ってきて。妹の靴を出して。
この子は、わたくしが少し席を離れようとしただけで呼んだ。
してほしいことより先に、ここにいてほしいと、小さな手が伝えてくれた。
「呼びたいときに呼んで。わたくしはここにいるから」
ネルは頬へ手を当てて、涙を拭こうとした。
指が、とん、と触れた。
パンが届くと、わたくしはネルを膝に乗せたままひとつ割った。
今日は上手に半分にできた。
ラザール様にも渡そうとすると、彼は首を振り、もうひとつ取った。
「それはあなたの分だ」
ネルは父のパンを指した。
夫は自分の分をちぎって、娘の小さな皿へ置いた。
兎の袖を誰が直すか、マルタさんを交えて相談しながら、林檎の酸っぱいパンを食べた。
その夜の食卓に、誰かの代わりの席はなかった。
春になっても、ネルが話す日は多くなかった。
言いたいことは相変わらず、わたくしの手に指で叩いて教える。
ときどき名前を呼ぶと、次の言葉を探すように口を動かす。わたくしたちは返事をして、その先は待った。
雪が解けた庭で、ネルと花の種をまいた。
母親が好きだった花の場所はそのまま残し、別の土を柔らかくする。
「これは、わたくしの好きな桃色の花よ」
ネルは種の袋を見て、兎の服を指した。
「お揃いね。ネルは何色を選ぶ?」
子は黄色を指した。
乳母の手の中にあった紐を、ふと思い出した。
同じものを順番に選ぶだけで、こんなに楽しかった。
王都の知人から届いた手紙には、父たちのことがあった。
先の縁談がなくなったあと、姉の夫へ妹を嫁がせようとした話を、父は新たな縁談先にもしたらしい。
結婚した娘の意向を聞かずに進める家だと警戒され、話はまとまらないという。
最後に、わたくしは北で元気に暮らしているかと尋ねてあった。
わたくしは便箋を用意し、庭のことと家族のことを書いた。王都へ戻らないと答えたあと、夫とお茶を飲んだ。
そのとき、ラザール様は机に別紙の契約を置いた。
「これを、まだ必要としているか聞きたい」
初日に渡された、三年後の暮らしを保障する紙だった。
「なくしたら、わたくしの部屋もなくなりますか」
冗談のつもりだったのに、彼は真面目に首を振った。
「部屋を与えたからいてほしいとは思っていない。あなたが、ここを自分の家にしてくれると嬉しい」
わたくしは紙へ手を置いた。
「わたくしは、ここで暮らしたいです。三年後の行き先を考えるより、来年の春に何を植えるかラザール様と考えたい」
彼はわたくしの手を取り、指先へ唇を触れさせた。
「あなたに改めて、妻でいてほしいと頼みたい」
「もう妻ですよ」
「家の都合でなく。私から、あなたへ」
向かいの顔を見て、笑った。
「それなら、わたくしからも。わたくしの夫でいてください」
三年の生活契約を、二人で解消した。
婚姻証書はそのまま残した。あの日の署名も、今なら少し違って見える。
初めて自分のために北へ来たわたくしの名前だった。
ラザール様は新しい紙を取り出した。
「何を書けばいいのでしょう」
「さっきの言葉を書いて残したい。誰にも見せなくていい」
紙の上に、互いを選ぶと書いた。
ラザール様が先に名を書き、次にわたくしが筆を持つ。
ネルは椅子を引き寄せて見ていた。わたくしが書き終えると、手のひらを二度叩く。
「ネルも描きたい?」
頷いたので、空いたところに線を引いてもらった。
背の高い人と、裾の広がった人。その間に小さな子がいて、兎までいる。
わたくしは子の下へネルと書き、夫は兎の下に丸い耳を描き足した。
「リュディア」
今度はネルが、夫のほうを指した。
お父様も呼んで、と言っているのだろうか。
ラザール様はわたくしを見て、もう一度呼んだ。
「リュディア」
用事のついていない呼び声に、わたくしは顔を上げた。
「ここにいます」
今日の返事は、すぐにできた。
わたくしの署名の両側で、ネルが描いた手が家族の手に繋がっていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
書き始める前、冬至の食卓をもう少し賑やかにしようかと迷っていました。結局、パンを取ろうとして立つくらいの夜です。兎の袖を直す相談まで書けたところで、ようやくわたしも落ち着きました。
兎の服は、ラザールが諦めずに直していると思います。マルタなら全部縫い直してしまえそうですが、きっと今度も片袖だけ手伝うのでしょう。ネルはそのうち、もう一着ほしいと布を持ってくるかもしれません。
リュディアの桃色の襟を書いていると、子どもの頃に選んだ好きな色を思い出しました。しばらく着ていなかった色を、また選んでみるのもよさそうです。
◇◆◇ 「捨てられ令嬢は最後に笑う」シリーズ ◇◆◇
それぞれの場所で、自分の暮らしを選び直す令嬢たちの短編です。
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「お前は道具だった」と笑った婚約者が、5年後に物乞いになって戻ってきた件
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