表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
革職人のおじさん転生したらドワーフだったので最高の武具を作ります。  作者: 爆裂超新星ドリル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/54

軽さという難題

コウジは雷鳥の素材を作業台に広げた。

羽が十枚、革が二枚。

「まずは革の鞣しからだな」

雷鳥の革を洗い、脂を落とし、鞣し剤に漬け込む。

だが、問題があった。

「この革……薄いな」

雷鳥の革は、他の魔獣の革に比べて遥かに薄かった。おそらく、飛行するために体重を軽くするためだろう。

『素材解析』


【雷鳥の革】

品質: 上

特性: 軽量、雷属性付与

付与可能効果: 軽量化(小)、雷耐性(小)

備考: 薄く、柔軟性が高い。防御力は低いが、軽さは最高級

警告: 薄すぎるため、補強が必要


「防御力が低い……補強が必要か」

だが、補強すれば重くなる。

そして、重くなれば飛行に支障が出る。

「軽さと防御力の両立……難しいな」

コウジは考え込んだ。

どうすれば、軽くて強度のある装備が作れるか。

「……そうだ」

コウジは思いついた。

「羽を使えばいい」

雷鳥の羽は、非常に軽い。だが、魔力を帯びているため、ただの羽ではない。

「革の裏側に羽を縫い付ければ、軽さを保ちながら強度も上げられるかもしれない」

理論的には可能だ。

だが、実際にやったことはない。

「試してみるしかないな」

コウジは小さな革の切れ端と羽を使って、試作を始めた。

革の裏側に羽を縫い付ける。

一枚、二枚、三枚――

「おお……」

羽を重ねることで、革の強度が上がった。しかも、重さはほとんど変わらない。

「これはいける!」

コウジは嬉しかった。

「よし、本番だ」

だが、その時――

「あれ……針が通らない……?」

羽の軸が硬くて、針が刺さらない。

「くそ……」

コウジは力を込めて針を押した。

バキッ

「……針が折れた」

針が、真っ二つに折れていた。

「マジか……」

コウジは溜息をついた。

「普通の針じゃダメか……」

どうすればいいのか。

「……そうだ、ボルドに相談してみるか」

コウジは工房を出た。



職人地区の中心部、大きな炉の音が響く工房。

そこが、若い鍛冶師ボルドの工房だった。

「おう、コウジ!どうした?」

赤毛のドワーフが、汗を拭いながら迎えた。

「ボルド、ちょっと相談があるんだが……」

「何だ?」

「硬い素材を縫うための針が欲しいんだ。普通の針じゃ折れちまう」

「硬い素材、ね……」

ボルドは考え込んだ。

「魔法鉱石を使った針なら、どうだ?」

「魔法鉱石?」

「ああ。魔力を帯びた鉱石で、普通の金属より遥かに硬い。これで針を作れば、多少硬い素材でも縫えるはずだ」

「それだ!作ってくれるか?」

「いいぜ。ただ、魔法鉱石は高いから……」

「いくらだ?」

「針一本で銀貨三枚ってとこかな」

「高いな……」

コウジは懐の中身を考えた。

メディアからもらった銀貨五枚。それが今の全財産だ。

「……一本だけ、頼めるか?」

「おう、任せろ」

「ありがとう」

コウジは銀貨三枚を支払った。

「三日後には出来上がるぜ」

「助かる」

コウジは工房に戻った。

残った銀貨は二枚。

「ギリギリだな……」

だが、仕方ない。

良いものを作るには、投資が必要だ。

「三日間は、設計を詰めるか」

コウジは設計図を描き始めた。



三日後、ボルドが魔法鉱石の針を届けに来た。

「出来たぜ」

青白く輝く針。通常の針より少し太いが、美しい輝きを放っている。

「おお……」

コウジは針を受け取った。

「これなら、硬い素材でも縫えるはずだ」

「ありがとう、ボルド」

「いいってことよ。頑張れよ」

ボルドが去った後、コウジは早速作業を開始した。

鞣し終わった雷鳥の革を、型紙に合わせて裁断する。

胸当ての形に切り出す。

「よし、一発で成功だ」

次は、羽を縫い付ける作業。

魔法鉱石の針を使って、革の裏側に羽を縫い付けていく。

一枚、二枚、三枚――

「お、いい感じだ」

針は確かに硬い素材を貫いた。

四枚、五枚、六枚――

順調に進む。

だが、七枚目で――

「あれ……ちょっと曲がってる……?」

羽の配置が、微妙にずれていた。

「まあ、このくらいなら……」

コウジは作業を続けようとした。

だが、手が止まった。

「……ダメだ」

前世でも、今世でも、コウジは完璧主義者だった。

妥協は嫌いだ。

「やり直しだ」

コウジは縫い付けた羽を外した。

そして、もう一度丁寧に縫い直す。

「よし、今度は完璧だ」

八枚、九枚、十枚――

全ての羽を縫い付けた。

だが――

「……全体のバランスが悪いな」

よく見ると、左右で羽の枚数が一枚ずれていた。

「くそ……計算ミスか」

コウジは溜息をついた。

「もう一度やり直しだ」

全ての羽を外して、配置を計算し直す。

そして、再び縫い付ける。

一枚、二枚、三枚――

今度こそ完璧に。

だが、完璧を求めすぎて、時間がかかった。

一日、二日、三日――

気づけば、一週間が経っていた。

「やばい……時間がない……」

期限まで、あと一週間。

まだ胸当ての片側しかできていない。

「急がないと……」

だが、急げば雑になる。

「いや、急いでも丁寧に……」

コウジは自分に言い聞かせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ