第3話「雷鳥の翼」
翌朝、コウジが工房の掃除をしていると、約束通りハーピーの少女が訪れた。
「お、おはようございます……!」
「ああ、おはよう。入ってくれ」
少女は緊張した様子で工房に入ってきた。翼をたたんで、椅子に腰掛ける。
「えっと、昨日は名前を聞いてなかったな」
「あ、はい!フィーって言います!」
「フィーか。よろしく」
コウジは作業台の向かいに座った。
「で、どんな装備が欲しいんだ?」
「あの、その……」
フィーは恥ずかしそうに翼を広げた。
淡い青色の羽毛が美しい。翼の長さは両翼合わせて三メートルほどもある。
「私、斥候をやってるんです。空から敵の動きを見たり、情報を伝えたり……」
「斥候か。それは大事な仕事だな」
「でも、翼があるから……普通の鎧は着られなくて……」
フィーは困った顔をした。
「背中に翼が生えてるでしょ?だから、背中部分がある鎧は着られないんです」
「なるほど」
コウジはフィーの体型をじっくりと観察した。
上半身は人間とほぼ同じだが、背中から巨大な翼が生えている。腕の代わりに翼があるわけではなく、腕とは別に翼がある。つまり、腕が二本、翼が二枚。
「それに、重い鎧だと飛べなくなっちゃうんです」
「軽量な装備が必要なんだな」
「はい!それと、翼の動きを邪魔しないもの……」
フィーは真剣な目でコウジを見つめた。
「あの、作れますか……?」
「正直に言うと、作ったことはない」
「やっぱり……」
フィーは落胆した表情を浮かべた。
「でも、作ってみたい」
「え……?」
「俺、異種族の装備を作るのが好きなんだ。普通の職人が作らないものを作る。それが、面白い」
コウジは笑った。
「だから、挑戦させてくれ」
「本当ですか!?」
フィーの顔が輝いた。
「ただし、素材が必要なんだが……」
「あ、それなら!」
フィーは嬉しそうに言った。
「昨日、雷鳥を狩ったんです!その羽と革、使えますか?」
「雷鳥……!」
コウジは興奮した。
雷鳥――電撃を操る魔獣。その羽は軽量で、しかも雷属性の特性を持っている。
「見せてもらえるか?」
「はい!」
フィーは背負っていた袋から、羽と革を取り出した。
鮮やかな青色の羽。触れると、わずかにピリピリとした感覚がある。
『素材解析』
【雷鳥の羽】
品質: 上
特性: 超軽量、雷属性付与
付与可能効果: 軽量化(中)、雷耐性(小)、雷属性攻撃(小)
備考: 飛行能力を持つ魔獣。羽は非常に軽く、装備に適している
「これは……素晴らしい素材だ」
「本当ですか!?」
「ああ。これで胸当てを作れば、軽くて、翼の動きも邪魔しない装備ができる」
「やった!」
フィーは嬉しそうに翼を羽ばたかせた。
「じゃあ、お願いします!」
「わかった。ただ、時間はかかるぞ。二週間はみてくれ」
「大丈夫です!待ちます!」
「あと、料金なんだが……」
「素材持ち込みなら、加工費だけでいいんですよね?メディアさんから聞きました」
「ああ。じゃあ、銀貨十枚で」
「安い!ありがとうございます!」
フィーは深々と頭を下げた。
「じゃあ、二週間後にまた来てくれ」
「はい!楽しみにしてます!」
フィーは工房を出ていった。翼を広げて、空に舞い上がっていく姿は、本当に美しかった。
コウジは一人、工房に残された。
「さて……どう作るか」
新しい挑戦が始まった。




