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革職人のおじさん転生したらドワーフだったので最高の武具を作ります。  作者: 爆裂超新星ドリル


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第36話「伝説の炎と冷鉄の均衡」

氷結の谷から帰還したコウジとボルドは、伝説級のサラマンダー革と、それに対抗しうる冷鉄の鉱石を工房へと持ち帰った。工房の空気は、革が放つ灼熱と冷鉄が奪う極寒という、相反する二つのエネルギーによって異様な緊張感に包まれた。

「師匠、この冷鉄は、常温の空気中の熱すら奪います。このままでは、工房全体が凍結してしまう」ボルドが警告した。冷鉄の鉱石は、置かれている台の表面に霜を発生させている 。

コウジは即座に指示を出した。「ボルド、急いで冷鉄を炉に入れ、魔力制御の炎で安定させろ。ケンタ、お前の設計した熱音響変換機構を使い、炉内の熱で冷鉄を制御するための理論値を計算し続けろ。ピピ、冷鉄とサラマンダー革、二つの熱源の魔力的な歪みを監視しろ」

工房内は、炎と氷の制御という、究極の二律背反を克服するための戦場と化した。



まず、サラマンダー革の熱を隔離するため、コウジは工房の片隅に革専用の「熱隔離室」を急遽設営した。リリアとテイルが持ち帰った空蝉の繊維を多層に重ねて壁とし、革が放つ熱を閉じ込める。この繊維の微細な空気層が、熱の伝達を劇的に遅らせる役割を果たした。

同時に、ボウルドは冷鉄の安定化に取り掛かった。冷鉄は、炉の炎に近づけると、その熱を猛烈に吸収し、炉内の温度を急激に低下させようとする。

「炉の炎が、瞬時に青白く変わります、師匠!熱が奪われすぎている!」ボルドが焦りの声を上げた。

ケンタは計算板を叩きながら指示を出す。「ボルド先輩、炎の魔石のエネルギーを、炉内の特定の魔力線に集中させてください!冷鉄に直接触れさせず、魔力的な制御炎で包み込むんです!」

ボルドは、鍛冶の加護を極限まで集中させ、冷鉄を炉内の炎で包み込んだ。炉の炎は、冷鉄の極低温と均衡を取り、熱くもなく冷たくもない、不思議な「中和炎」へと変化した。



二つの素材が安定したところで、コウジはゾルグの鎧の最終設計に取り掛かった。鎧のコンセプトは、サラマンダー革の「炎無効化」と「炎属性付与」の特性を最大限に活かしつつ、着用者を熱暴走から守る「冷却装置」を組み込むことだった。

「鎧の構造は、三層にする」コウジは設計図を広げた。「最外層はサラマンダー革。炎の魔力を最大限に受け止め、炎属性を付与する。中間層は空蝉の繊維。外部の熱を遮断する断熱層。そして、最内層は冷鉄の薄板。着用者の体温と、中間層をすり抜けた熱を吸収し、制御する」

この三層構造は、革と金属、そして特殊繊維を組み合わせた、究極の環境制御システムだった。特に、最内層に組み込まれる冷鉄の薄板が肝となる。

「ボルド、冷鉄の薄板には、ゾルグの炎の魔力と均衡を保つための魔力制御回路を刻み込む必要がある。少しでもバランスが崩れれば、熱暴走か、着用者の凍死につながる」

「魔力制御回路ですか……」ボルドは息を飲んだ。「冷鉄に魔力回路を刻むのは、通常の金属とは比べ物にならないほど困難です」

「だからこそ、ギギの出番だ」コウジはギギに目を向けた。「ギギ、お前の精密な加工技術で、冷鉄の薄板に微細な魔力回路を刻んでくれ。その回路に、リリア、お前のエルフの**『静寂の呪文』**を込める。冷鉄の熱吸収の暴走を防ぐための、緩衝材だ」

「はい、お師匠!心臓手術を行うつもりで、集中します!」ギギは、極細のタガネを手に、冷鉄の薄板に向かい合った。

リリアは、冷鉄の薄板に刻まれた回路に、静かに魔力を流し込み始める。彼女の込める『静寂の呪文』は、魔力の流れを穏やかに整え、熱吸収のムラを打ち消す役割を担う。



裁断と縫製は、シルフィとケンタの役割となった。サラマンダー革の熱に耐えるため、二人は常に冷水の加護を受けたシルフィのアラクネ糸を使い、冷却しながら革を裁断する。

「ケンタ、裁断は常に$45^\circ$の角度で斜めに入れろ。熱による繊維の硬直を避け、革の柔軟性を残すためだ」コウジが指示する。

ケンタは革包丁を慎重に滑らせ、サラマンダー革を裁断していく。熱によって刃が焼けないよう、シルフィのアラクネ糸が絶えず冷水を供給する。

「師匠、この革は、触れるたびに熱が魔力となって糸に伝わってきます。縫い合わせると、この炎の魔力が、鎧全体に均一に広がるはずです」シルフィが報告した。

コウジは頷いた。「そうだ。サラマンダー革の特性を活かし、鎧全体がゾルグの炎の魔力を増幅させる導体となる。そして、冷鉄の薄板が、そのエネルギーを制御する心臓部となるのだ」

冷鉄の薄板は、ギギとリリアの精密な作業を経て、中間層の空蝉の繊維の内側に縫い付けられた。冷鉄の極度の冷たさは、空蝉の繊維の多層構造によって、着用者の肌に直接伝わることはない。

最終的に、この三層構造の鎧は、外部の熱を遮断し(空蝉)、内部の熱をコントロールし(冷鉄)、炎の魔力を増幅する(サラマンダー革)という、完璧な熱力学的魔力制御システムとして完成を迎えることになった。


数週間後、三層構造の炎の鎧が完成した。見た目は深紅の革鎧だが、手に取ると、革が放つ熱とは裏腹に、内部からは微かに冷気が感じられる。冷鉄の薄板が、革の熱を絶えず吸収し続けている証拠だった。

『サラマンダー・ドレイクの炎鎧ゾルグカスタム

品質: 伝説級(L)

特性: 炎無効化(特大)、温度制御(極)、魔力燃焼効率向上(極)、熱力学的制御回路(特殊)

付与可能効果: 炎耐性無効、炎魔力無限供給、内部冷却機能

備考: 伝説級の革と金属を融合させ、究極の熱制御を実現した鎧。着用者の炎の魔力を増幅し、無限に炎を放出できる。

「伝説級の品質を維持し、制御回路まで刻み込まれた。これ以上のものは作れない」コウジは、最高の出来に満足した。

その時、工房に再びゾルグが訪れた。彼は完成した深紅の鎧を見て、その放つ魔力のオーラに息を飲んだ。

「これか……私の求める炎の鎧は」

ゾルグは鎧を装着した。鎧はゾルグの屈強な体に吸い付くようにフィットする。そして、ゾルグが炎の魔力を込めた瞬間――

バチッ!

鎧全体が赤く輝き、炎の魔力が鎧を媒介として全身に満ち渡るのが目に見えた。冷鉄の薄板が、その莫大な熱量を制御し、着用者を守っている。ゾルグの周囲には、熱気が渦を巻き始めた。

「完璧だ!これなら、私は炎そのものとなれる!」ゾルグは歓喜の叫びを上げた。

彼は契約通り、金貨五百枚と炎の魔石一ダースをコウジに渡し、そして不敵に笑った。

「コウジ、約束通り、君の工房は私の炎斧が守る。ドワーフギルドの連中が再び現れたら、彼らのケツに熱い炎をくれてやろう」

ゾルグの言葉は、万族工房の正式なドワーフギルドからの独立を意味していた。コウジは、その炎の鎧を見つめながら、職人としての新たな自由と、伝説級の依頼を達成した誇りを噛みしめていた。


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