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革職人のおじさん転生したらドワーフだったので最高の武具を作ります。  作者: 爆裂超新星ドリル


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設計の苦悩

翌日、メディアが工房に森狼の毛皮を持ってきた。

「五枚あるわ。足りる?」

「十分です。ありがとうございます」

「じゃ、よろしくね」

メディアが去った後、コウジは毛皮を広げた。

五枚の森狼の毛皮。どれも状態は良い。

「まずは、なめし作業からだな」

コウジは毛皮を洗い、脂を落とし、鞣し剤に漬け込んだ。

そして、待っている間に設計図を描く。

「蛇の体に合わせた装備……どう作るか」

紙に、メディアの体型を思い出しながらスケッチを描く。

蛇の体は常に動く。硬い一枚板では動きを妨げる。だから、分割式にする必要がある。

「腹側を覆う革製のプレートを複数作り、それを連結させる……」

コウジは何度も設計図を描き直した。

一枚目――「これじゃ重すぎる」

二枚目――「固定方法がダメだ」

三枚目――「動きを妨げる」

四枚目――

「くそっ!」

コウジは紙を丸めて投げた。

「なんで上手くいかないんだ……」

設計の段階で躓いている。

これでは、作る以前の問題だ。

「落ち着け……考えろ……」

コウジは深呼吸した。

問題は何か?

蛇の体は、常に動く。曲がる、伸びる、縮む。その全ての動きに対応する装備。

「動きに対応する……」

コウジは何かを思いついた。

「そうだ、鱗だ」

蛇の鱗は、重なり合っている。だから、伸び縮みできる。

「同じ原理を使えばいい」

コウジは新しい設計図を描き始めた。

小さな革製のプレートを、鱗のように重ねて配置する。それぞれのプレートが少しずつ重なり合い、動きに対応する。

「これなら……いけるかもしれない」

設計図が完成した。

複雑だが、理論的には機能するはずだ。

「よし、あとは作るだけだ」

コウジは気合を入れ直した。


三日後、鞣し作業が完了した。

柔らかくなった森狼の革を、コウジは慎重に裁断し始めた。

小さな革製のプレート。一枚一枚、丁寧に切り出していく。

一枚、二枚、三枚――

「よし、順調だ」

十枚、二十枚、三十枚――

「あっ」

三十一枚目で、手が滑った。

切るべきでない部分を切ってしまった。

「くそっ……」

一枚無駄にした。

「まあ、一枚くらいなら……」

コウジは作業を続けた。

四十枚、五十枚――

必要なプレートは全部で百枚。まだ半分だ。

六十枚、七十枚――

「よし、もう少しだ」

八十枚、九十枚――

「……っ!」

九十三枚目で、また手が滑った。

「畜生!」

二枚目の失敗。

「集中しろ……集中……」

九十四枚、九十五枚――

疲れが溜まってきた。

手が震える。

「大丈夫……あと少し……」

九十六枚、九十七枚――

「はあ、はあ……」

息が荒い。

九十八枚、九十九枚――

「最後の一枚……」

コウジは慎重に、最後のプレートを切り出した。

「……できた」

百枚のプレートが完成した。

だが、コウジは疲労困憊だった。

「疲れた……」

作業台に突っ伏す。

「でも、まだ終わりじゃない……」

次は、縫製だ。

百枚のプレートを、一枚一枚縫い合わせていく。

「よし、やるか」

コウジは針と糸を手に取った。

だが――

「あれ……手が震える……」

疲れすぎて、手が安定しない。

「くそ……」

無理に縫おうとして――

「痛っ!」

針が指に刺さった。

血が滲む。

「畜生……」

コウジは作業を中断した。

「今日はもう無理だ……」

工房を片付けて、部屋に戻る。

ベッドに倒れ込んだ。

「俺……本当にこれ、完成させられるのか……?」

不安が胸に広がった。

期限まで、あと七日。

まだ縫製すら始まっていない。

「間に合うのか……?」

コウジは天井を見つめた。

答えは出なかった。


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