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革職人のおじさん転生したらドワーフだったので最高の武具を作ります。  作者: 爆裂超新星ドリル


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第34話「ギルドの査察と炎の契約」

クリスタル・ドレイクの鱗の加工に成功した万族工房は、興奮と活気に満ちていた。粉砕した鱗は、予想通り、微細ながらも極めて硬質な結晶質の粉末となっており、その一部は、ボルドの新しい熱音響変換機構の実験素材として残された。残るは、風翼商会が討伐したドレイク本体から鱗を剥ぎ取り、本格的な装備製作に取り掛かることだけである。

「師匠、この粉末、凄まじい硬度ですよ」ボルドが興奮気味に言った。「金属と混ぜて合金にすれば、今までにない硬い刃物が作れるかもしれません」

「革職人の工房で、なぜ刃物の話をしているんだ、ボルド」コウジは笑ったが、その目は嬉しそうだった。革職人としての本分は忘れずとも、弟子たちの探求心を抑えるつもりはなかった。「だが、まずは風翼商会の依頼だ。この硬度を活かした、飛行種族のための防御具を設計するぞ」

しかし、その設計に取り掛かろうとした矢先、工房の扉が荒々しく開けられた。

「コウジ!また貴様か!」

入ってきたのは、前回も工房に圧力をかけてきたドワーフ職人ギルドの副長、グランだった。その後ろには、数名の強面のドワーフ職人が控えており、工房全体に威圧的な空気が広がる。

「グラン副長。何の御用でしょうか」コウジは一歩前に出て、冷静に対応した。

グランは憤怒に顔を歪ませていた。「何の御用だと?貴様の工房から、職人ギルドの伝統を汚す異様な轟音が響いたぞ!音波で素材を加工するだと?そんなものは、ドワーフの鍛冶技術ではない!ましてや革職人のすることではない!」

「それは、新しい技術の探求です。我々は、依頼された素材を加工するために最善の方法を探したまで。結果、加工に成功し、依頼を達成できる見込みです」

「貴様は詭弁を弄するな!」グランは怒鳴りつけた。「貴様の工房は、異種族を弟子に取り、異端な技術に手を染めすぎている!これは正式な査察だ。貴様の工房で何が行われているか、全て調査させてもらう!」

グランは横にいた老年のドワーフに目配せし、査察を開始するよう命じた。老ドワーフたちは、作業台に近づき、ボルドの残した熱音響変換装置の試作品や、ケンタが作成した音波レンズの設計図を検分し始めた。

「この装置はなんだ?炉の熱を音波に変換するだと?正気の沙汰ではない!」

「こんな得体の知れない技術、ドワーフの伝統に反する!」

グランは勝ち誇ったようにコウジを見た。「どうだコウジ!貴様の異端な行為は明らかになった。貴様はドワーフの職人としての資格を剥奪されることになるぞ!」

その時、テイルが前に出た。「お待ちください!師匠の技術は、誰の命も脅かしていません!むしろ、多くの異種族の命を救ってきた技術です!それを伝統の名のもとに否定するのは、職人としての心がありません!」

「ケンタウロスに何がわかる!貴様のような下等種族は黙ってい――」

「黙っていられないのは、あなたの方です」

今度はボルドが、グランの前に立ちはだかった。彼は体躯こそグランに劣るものの、その目には職人としての揺るぎない誇りが宿っていた。

「グラン副長。音波加工の理論と装置の製作は、私とケンタが主導しました。もし、この技術が異端であるというならば、私とケンタも同罪でしょう。ですが、我々はドワーフです。ドワーフは、常に最高の技術を追求する種族ではなかったのですか?」

ボルドの言葉に、グランは一瞬ひるんだ。ボルドは正統なドワーフの鍛冶技術の弟子であり、その才能はギルド内でも一目置かれている。

「貴様まで異端に染まったのか、ボルド!」

「私は、師の教えに従っただけです。師匠は、素材が持つ可能性を最大限に引き出すのが職人の本懐だと教えてくれました。我々の祖先が、鉄を叩く代わりに、炉を使い始めたときも、誰かに異端だと言われたのではありませんか?」

ボルドの真っ直ぐな反論は、グランの威勢を削いだ。しかし、グランは引き下がらない。

「貴様らの言い分は聞いた。だが、この工房は、伝統を重んじるギルドの秩序を乱している。今後、貴様らがその異端な技術を使うことを禁じる。もし再び異音を発すれば、工房を閉鎖する!」

そう言い放ち、グランは怒りを残しながら工房を後にした。

グランたちが去った後、工房には重い沈黙が残った。コウジはボルドの肩に手を置いた。「よく言ってくれた、ボルド。誇らしかったぞ」

「師匠……しかし、異端な技術の使用を禁じられてしまいました。クリスタル・ドレイクの鱗を音波なしで加工することは不可能です」ボルドは悔しそうに顔を歪めた。

「ああ、承知している。だが、諦めるわけにはいかない」コウジは深く息を吐いた。

その時、リリアが静かに進言した。「師匠、ギルドの禁止事項は『異音を発すること』です。音波を空気中に放つことが問題なのであれば、別の媒体を使えば良いのではないでしょうか」

「別の媒体?」

「はい。音は空気だけでなく、水や固体の中も伝わります。例えば、ボルド先輩の鍛冶技術で『音波制御炉』を製作し、炉内の溶融金属を媒体として音波を伝達し、加工を行うのはどうでしょうか?炉の外に音は漏れません」

コウジの目が大きく見開かれた。「リリア、それは素晴らしい発想だ!溶融金属を音波の伝達媒体にする。それなら、ギルドの査察が入っても音は漏れない!」

熱音響変換機構を炉と一体化させ、加工を炉内で行うという、前代未聞の「音波制御炉」の設計がすぐに開始された。この技術は、従来の鍛冶技術の概念を覆すものとなるだろう。

しかし、コウジが熱音響変換機構の改良に没頭している最中、工房に新たな訪問者が現れた。

「やあ、革職人さん。君が、音波で素材を砕く異端なドワーフだと聞いたよ」

入ってきたのは、一人の屈強な人間の男性だった。彼は全身に、古びた革の鎧を身につけており、その革からは微かに炎の魔力が立ち上っている。背中には、巨大な両手斧を背負っていた。

「私は炎斧のゾルグ。君に、是非とも頼みたい依頼がある」

「炎斧……」コウジは彼から放たれる熱気と、鎧に宿る魔力に目を細めた。「どのような依頼でしょうか」

「単刀直入に言おう。私の炎の魔力を、最大限に活かせる鎧を作ってほしい。そして、その鎧の素材として、この魔獣の革を使ってくれ」

ゾルグが差し出したのは、コウジも見たことのない、赤く波打つような特殊な革だった。その革からは、ボルドの炉に匹敵するほどの熱気が放たれている。

『素材解析』

【サラマンダー・ドレイクの鱗革】 品質: 伝説級(L) 特性: 超耐火性(特大)、熱吸収(永続)、炎属性付与(極) 付与可能効果: 炎無効化、温度制御(極)、魔力燃焼効率向上(特大) 備考: 火口に住む伝説級ドレイクの鱗が、極度の熱により革質化したもの。着用者に炎の魔力を無限に供給する。 警告: 通常の革職人が素手で触れると、重度の火傷を負う危険性あり。

コウジの職人としての血が沸騰した。至高の素材はキメラ革が初めてだったが、「伝説級」は、文字通り初めてだ。

「この革は……」

「触れることもできないだろう?」ゾルグは笑った。「だが、君の工房なら、この革を加工できると信じている。この革の炎の魔力を制御し、私専用の鎧へと昇華させてほしい」

「代価は?」

「私が持つ全ての財産だ。金貨五百枚と、炎の魔石一ダース。そして、君の工房がこの先、ドワーフギルドから不当な圧力を受けた場合、私がこの炎斧でギルド本部を焼き払う契約を交わそう」

ゾルグの提案は、あまりにも魅力的だった。伝説級の素材、莫大な報酬、そして、ギルドの圧力から解放されるという最大の保証。

「伝説級の素材、炎の制御、そしてギルドからの独立……」コウジは口角を上げた。「その契約、受けよう。サラマンダー・ドレイクの革、必ずや最高の炎の鎧にしてみせる!」

究極の硬度を乗り越えた万族工房に、今度は「伝説の炎」を制御するという、さらなる難題が突きつけられた。そして、コウジは、ドワーフギルドの支配から、完全に独立した職人としての道を踏み出したのである。


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