第16話「祭りの衣装」
砂漠用装備を納品した翌日、工房に賑やかな集団が訪れた。
「こんにちはー!」
明るい声。扉を開けると、色とりどりの服を着た人々が立っていた。
人間、エルフ、ドワーフ、ハーピー――様々な種族が混じっている。
「いらっしゃいませ」
「あの、万族工房はこちらですか?」
先頭に立つ若い人間女性が尋ねた。
「ああ、そうだが」
「良かった! 私たち、『虹の旅団』という旅芸人の一座です」
「旅芸人?」
「はい! 街から街へ旅して、歌や踊りを披露してるんです」
女性は名乗った。
「私はリーダーのセレナです」
「コウジだ。で、何の用で?」
「実は……来月、王都で大きな祭りがあるんです」
セレナは説明した。
「そこで私たちも出演するんですが……衣装が足りなくて」
「衣装?」
「はい。祭りの衣装です」
「……衣装を作る依頼か」
コウジは少し困った顔をした。
「悪いが、うちは防具専門で……」
「でも! 噂を聞きました!」
セレナは食い下がった。
「万族工房は、どんな種族にも対応できるって!」
「まあ、それは……」
「それに、ハーピー用の装備も作れるって聞きました!」
セレナは後ろのハーピーを指した。
「私たちの一座にも、ハーピーの踊り子がいるんです。でも、普通の仕立て屋じゃ、羽に対応した衣装は作れなくて……」
「……」
コウジは考えた。
確かに、防具ではない。
だが、異種族対応という点では、自分たちの得意分野だ。
「どんな衣装が必要なんだ?」
「本当ですか!?」
セレナは目を輝かせた。
「ありがとうございます! えっと、必要なのは……」
セレナは一座のメンバーを紹介し始めた。
「人間の踊り子が五人、エルフの歌い手が三人、ドワーフの楽士が二人、ハーピーの踊り子が二人」
「合計十二人分か」
「はい! それぞれに合った、祭りらしい華やかな衣装が欲しいんです!」
「華やか……」
コウジは頭を抱えた。
「俺、そういうの作ったことないんだが……」
「でも、挑戦してくれませんか?」
セレナは真剣な目で言った。
「私たち、この祭りにかけてるんです。王都で認められれば、もっと大きな舞台に立てる」
「……」
「お願いします!」
一座のメンバー全員が頭を下げた。
「……わかった」
コウジは溜息をついた。
「やってみる。ただし、保証はできないぞ」
「ありがとうございます!」
「祭りの衣装……」
コウジは弟子たちを集めた。
「正直、俺にはよくわからない」
「師匠」
リリアが手を挙げた。
「私、これやりたいです!」
「リリア?」
「はい! 私、装飾が好きなんです!」
リリアは目を輝かせた。
「今まで、防具ばかりで装飾する機会がなかったんですけど……今回は思い切りできます!」
「そうか……」
「お願いします! 私にメインを任せてください!」
リリアの熱意に、コウジは頷いた。
「わかった。リリア、お前がメインだ」
「やった!」
「ただし、一人じゃ無理だ。みんなで協力しよう」
「はい!」
「ピピ、お前はハーピー用の衣装を担当してくれ」
「わかりました!」
ピピも嬉しそうだった。
「シルフィは、全体の縫製監督だ」
「はい」
「ボルドとギギは、装飾用の金属パーツを作ってくれ」
「了解です」
「ケンタとテイルは、素材の準備と補助作業だ」
「はい!」
「よし、じゃあまず……どんな衣装にするか考えよう」
コウジは頭を抱えた。
「祭りの衣装……どんなのが『華やか』なんだ?」
「師匠、任せてください!」
リリアは自信満々だった。
リリアは、まずセレナたちに詳しく話を聞いた。
「どんな祭りなんですか?」
「『光の祭り』といって、秋の収穫を祝う祭りです」
セレナは説明した。
「一年で一番大きな祭りで、王都中が華やかに飾られるんです」
「テーマは?」
「光と豊穣です。だから、明るい色、実りの色が好まれます」
「明るい色……黄色、オレンジ、赤、金色……」
リリアはメモを取った。
「踊りは、どんな感じですか?」
「激しく動きます。回転したり、ジャンプしたり」
「じゃあ、動きやすい構造が必要ですね」
「はい!」
「音楽は?」
「管楽器と打楽器が中心です」
ドワーフの楽士が答えた。
「だから、楽器を持ちながら演奏しやすい衣装がいい」
「わかりました」
リリアは次々と質問し、メモを取っていく。
「ハーピーの踊りは?」
「飛びながら踊ります」
ハーピーの踊り子が答えた。
「だから、羽の動きを邪魔しない衣装が必要です」
「それから、風の影響も考えないと」
「風?」
「はい。飛ぶと、風で衣装がめくれたりするんです」
「なるほど……じゃあ、重りをつけるか、固定する工夫が必要ですね」
「そうなんです!」
リリアは全ての情報を集めた後、設計を始めた。
「よし、それぞれに最適な衣装を考えよう」




