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革職人のおじさん転生したらドワーフだったので最高の武具を作ります。  作者: 爆裂超新星ドリル


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初めての素材

翌日も、コウジは朝から晩まで工房にこもった。

革を切り、穴を開け、縫う。同じ作業の繰り返し。

『基礎裁縫スキル熟練度が上昇しました』

少しずつ、だが確実に上達していた。

三日目の午後、工房の扉が開いた。

「おう、コウジ。調子はどうだ?」

入ってきたのは、赤毛の若いドワーフだった。記憶によると、グレンという名の同期の見習い職人らしい。

「まあ、ぼちぼちだ」

「そうか。俺はさっき、初めての剣を完成させたぜ」

グレンは自慢げに言った。

「ギルドの師匠にも褒められた。『才能がある』ってな」

「それはすごいな」

「お前も頑張れよ。革職人は地味だけど、需要はあるからな」

グレンは笑って去っていった。

コウジは複雑な気持ちになった。

悪気はないのだろう。だが、その言葉の端々に、革職人への軽視が滲んでいた。

「地味、か……」

コウジは作業を続けた。

その日の夕方、工房の外から笑い声が聞こえた。

「なあ、聞いたか?あの革職人の見習い」

「ああ、三日間も工房にこもって、何も作れてないらしいぞ」

「マジかよ。何やってんだ、あいつ」

「革なんて、所詮は二流の仕事だからな」

ドワーフたちの嘲笑が、扉越しに聞こえてくる。

コウジは手を止めなかった。

「……関係ない」

彼らが何と言おうと、自分のやるべきことは変わらない。

丁寧に、確実に、技術を磨く。

それだけだ。

だが、心のどこかで、小さな棘が刺さったような痛みを感じていた。

第四章:初めての素材

一週間が経った。

コウジは、ようやく基礎的な作業に慣れてきた。

革を真っ直ぐ切れるようになり、等間隔に穴を開けられるようになり、綺麗に縫えるようになった。

『基礎裁縫 LV2になりました』 『革なめし LV2になりました』

「よし、少しずつだが進んでる」

だが、問題があった。

素材だ。

家畜の革で練習するのもいいが、それだけでは面白くない。神様が言っていたではないか。「モンスターの素材で武具を作る」と。

「魔獣の素材が欲しいな……」

その時、グレンが工房を訪れた。

「おい、コウジ!お前、魔獣の素材が欲しいって言ってたよな!?」

「ああ、欲しいけど……」

「なら来い!冒険者ギルドに行くぞ!」

グレンはコウジの腕を掴んで、工房から引きずり出した。

   *

グランドフォージの冒険者ギルドは、職人地区から少し離れた場所にあった。

石造りの頑丈な建物で、入り口には傷だらけの冒険者たちが出入りしている。

人間、エルフ、ドワーフ、そして見慣れぬ異種族――

「おお……」

コウジは思わず足を止めた。

下半身が蛇のラミア族。馬の体を持つケンタウロス。鳥の翼を持つハーピー。

前世では空想上の存在だった種族たちが、当たり前のように歩いている。

「初めて見るか?異種族」

「ああ……実物は初めてだ」

「慣れろ。冒険者には色んな種族がいる。つーか、そんなことより早く中に入るぞ」

グレンに急かされて、コウジはギルドの中に入った。

内部は酒場のようになっていて、冒険者たちが酒を飲んだり、依頼書を眺めたりしている。奥にはカウンターがあり、受付嬢――エルフの女性――が書類を整理していた。

「で、何でここに来たんだ?」

「これだよ、これ!」

グレンが指差したのは、壁に貼られた一枚の紙だった。


【素材買取強化中!】

森狼、岩亀、雷鳥などの魔獣素材を高価買取します! 特に新鮮な革や鱗は高額査定! 不要な素材がありましたら、ぜひお持ちください!


「買取……じゃなくて、俺が欲しいのは売ってる方なんだが」

「だから、交渉すればいいんだよ!冒険者は素材を持て余してることが多い。特に革とか、金属に比べて買取価格が安いからな。うまく話せば、安く譲ってもらえるかもしれないぞ」

「なるほど……」

コウジは周囲を見回した。

確かに、隅のテーブルには素材らしき袋が積まれている。

「よし、じゃあ声をかけてみるか」

コウジは意を決して、一番近くのテーブルに向かった。

そこには、傷だらけの革鎧を着た人間の男が座っていた。三十代くらいだろうか。剣と盾を横に置いて、疲れた様子で麦酒を飲んでいる。

「すみません、ちょっといいですか」

「あん?ドワーフか。何だ、武器の注文か?」

「いえ、その……素材を譲ってもらえないかと思いまして」

「素材?」

「森狼とか、その辺の魔獣の革があれば、買い取りたいんですが」

「ああ、革ね。あるにはあるが……」

男は足元の袋を開けた。中には、毛皮がいくつか入っている。灰色の毛並み、犬に似ているが一回り大きい――森狼の毛皮だ。

「これ、ギルドに売っても二束三文なんだよな。お前が欲しいなら、三枚で銀貨五枚でどうだ?」

「銀貨五枚……」

コウジは懐を探った。転生時に神様が用意してくれたのか、多少の所持金はある。銀貨が十枚ほど。

「いいでしょう。三枚、買います」

「マジか。助かるわ」

男は毛皮を取り出して、コウジに手渡した。

ずっしりとした重み。

そして、毛皮に触れた瞬間――

『素材解析スキルが発動しました』

頭の中に、情報が流れ込んでくる。


【森狼の毛皮】

品質: 中

特性: 軽量、柔軟性

付与可能効果: 敏捷性向上(小)

備考: 森に生息する魔獣。素早い動きを得意とする


「おお……これが素材解析か」

コウジは感動した。

前世では、革の品質は目と手の感覚で判断していた。だが、このスキルがあれば、素材の特性まで正確に把握できる。

「おい、どうした?ボーッとして」

グレンが肩を叩いた。

「いや、何でもない。よし、これを持って帰るぞ」

コウジは森狼の毛皮を抱えて、工房へと戻った。


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