表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
革職人のおじさん転生したらドワーフだったので最高の武具を作ります。  作者: 爆裂超新星ドリル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/37

ギルドへの訪問

翌朝、コウジが焼けた工房を見ていると、意外な人々が訪れた。

「コウジさん!」

冒険者ギルドの受付嬢・リーナだった。

「火事、大変でしたね……」

「ああ……」

「でも、安心してください。みんなで支援を集めました」

「支援……?」

リーナは大きな袋を差し出した。

「冒険者たちからのカンパです。金貨十五枚集まりました」

「十五枚!?」

「それに、こちらは商人たちからの寄付です」

別の男が金貨の入った袋を渡した。

「金貨十枚です」

「そんな……」

「コウジさん、あなたは私たちを助けてくれました」

リーナは笑顔で言った。

「今度は、私たちがあなたを助ける番です」

「みんな……」

コウジは涙が出そうになった。

「ありがとう……本当に……」

その時、工房にゾロゾロと人が集まってきた。

「修理、手伝うぜ!」

「俺も!」

「材料も持ってきたぞ!」

冒険者、商人、一般市民――

様々な人々が、工房の修理を手伝いに来てくれた。

「お前たち……」

「当たり前だろ。お前は、この街の宝だ」

「俺の息子の装備、お前が作ってくれたんだ。恩返しさせてくれ」

「私の命を救った装備、あんたが作ったものよ」

口々に言いながら、みんなが修理を始めた。

「……」

コウジは何も言えなかった。

ただ、涙が溢れた。

「ありがとう……ありがとう……」

弟子たちも泣いていた。

「師匠……私たち、愛されてるんですね……」

シルフィが言った。

「ああ……そうだな……」

コウジは笑顔になった。

「俺たちは、一人じゃない」


工房の修理が終わった三日後、コウジは決意した。

「ギルドに行く」

「師匠!?」

弟子たちが驚いた。

「危険です!」

「わかってる。でも、このままじゃダメだ」

コウジは立ち上がった。

「はっきりさせないと」

「じゃあ、僕たちも行きます」

ボルドが言った。

「いや、お前たちは工房を守ってくれ」

「でも……」

「大丈夫だ。俺は逃げない。話し合いに行くだけだ」

コウジは笑った。

「信じてくれ」

「……わかりました。気をつけて」

「ああ」

コウジは職人ギルドへ向かった。

   *

職人ギルドは、街の中心部にある立派な建物だった。

石造りの壁に、金属製の扉。まさに、ドワーフの威厳を象徴している。

「失礼します」

コウジは扉を開けた。

中には、多くのドワーフ職人がいた。

みんな、コウジを冷たい目で見る。

「お前……コウジか」

受付の男が言った。

「グラン副長に会いたいんですが」

「会えると思ってるのか?」

「話があります」

「……待ってろ」

男は奥に消えた。

十分後、男が戻ってきた。

「副長が会うそうだ。ついて来い」

コウジは奥の部屋に案内された。

そこには、グランが座っていた。

「よく来たな、コウジ」

「お話があります」

「話?聞くまでもない」

グランは冷たく言った。

「お前の工房、閉鎖しろ」

「それはできません」

「なら、これからも妨害を続ける」

「火事も、あなたたちの仕業ですか?」

「さあな。証拠はあるのか?」

「……」

コウジは悔しかった。

証拠はない。

「聞け、コウジ」

グランは立ち上がった。

「お前のやってることは、ドワーフの伝統を壊している」

「伝統?」

「そうだ。我々ドワーフは、高貴な種族だ。下等種族と同列に扱われるべきではない」

「下等種族なんていません」

コウジは強く言った。

「ゴブリンもハーピーもリザードマンも、みんな平等です」

「違う!」

グランは怒鳴った。

「奴らは劣等種族だ!教育する必要などない!」

「……」

コウジは、グランと話が通じないことを悟った。

「わかりました。もう話すことはありません」

「そうか。では、覚悟しろ」

グランは脅すように言った。

「次は、もっと酷いことが起きるぞ」

「……」

コウジは何も言わずに、ギルドを出た。

外に出ると、全身の力が抜けた。

「駄目だ……話にならない……」

どうすればいいのか。

ギルドの妨害は続く。

いつか、本当に工房が潰される。

「俺は……どうすれば……」

その時、声がした。

「コウジ」

振り向くと、見知らぬ老人が立っていた。

「あなたは……?」

「私は、ギルドの元長老だ」

「元長老……?」

「話がある。ついて来てくれ」

老人は歩き始めた。

コウジは、何か重要なことを感じて、老人についていった。


老人が案内したのは、街の外れにある小さな家だった。

「入ってくれ」

「失礼します」

家の中は質素だが、清潔だった。

「座ってくれ」

「はい」

老人はお茶を入れてくれた。

「コウジ、お前のこと、聞いている」

「……」

「異種族のための装備を作る、革職人だと」

「はい」

「素晴らしいことだ」

老人は優しく言った。

「え……?」

「お前のやってることは、正しい」

老人は続けた。

「私も、昔はそう考えていた。種族に関係なく、技術を共有すべきだと」

「あなたも……」

「だが、ギルドの保守派に追い出された」

老人は悲しそうに言った。

「私は弱かった。戦うことができなかった」

「……」

「だが、お前は違う。お前は戦っている」

老人はコウジの手を握った。

「だから、助けたい」

「助ける……?」

「私には、まだ影響力がある。古い仲間たちもいる」

老人は言った。

「彼らと協力すれば、ギルドの妨害を抑えられるかもしれない」

「本当ですか!?」

「ああ。だが、時間がかかる」

「構いません。それだけで十分です」

コウジは頭を下げた。

「ありがとうございます」

「礼には及ばん。これは、私の償いでもある」

老人は優しく笑った。

「頑張れ、コウジ。お前は、未来を作っている」

「はい!」

コウジは希望を取り戻した。

戦いはまだ続く。

だが、もう一人じゃない。

味方がいる。

仲間がいる。

そして、希望がある。

「俺は、諦めない」

コウジは決意を新たにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ