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革職人のおじさん転生したらドワーフだったので最高の武具を作ります。  作者: 爆裂超新星ドリル


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甲羅との格闘

ボルドは工房の隅で、岩亀の甲羅と格闘していた。

「くそっ……硬い……!」

鏨と金槌で叩いているが、甲羅にはほとんど傷がつかない。

「ボルド、どうだ?」

「旦那……ダメです。この甲羅、硬すぎます」

ボルドは汗を拭った。

「普通の道具じゃ、割れません」

「そうか……」

コウジは考えた。

「炉で熱したらどうだ?」

「やってみます!」

ボルドは甲羅を炉に入れた。

だが――

「ダメです。熱しても、柔らかくなりません」

「くそ……」

コウジは悩んだ。

甲羅が加工できなければ、重装備は作れない。

「……待てよ」

コウジは思いついた。

「無理に割る必要はないんじゃないか?」

「え?」

「小さく砕くんじゃなくて、大きいまま使う。甲羅を板状に切り出して、それをそのまま鎧のプレートにする」

「なるほど……!」

ボルドは目を輝かせた。

「じゃあ、切断すればいいんですね」

「ああ。割るより、切る方が簡単なはずだ」

「やってみます!」

ボルドは金属用の鋸を手に取った。

だが――

「……っ!」

鋸の歯が欠けた。

「マジか……」

ボルドは愕然とした。

「普通の鋸じゃダメか……」

コウジも頭を抱えた。

「どうすれば……」

その時、工房の扉が開いた。

「よう、コウジ。調子はどうだ?」

入ってきたのは、グレンだった。

「グレン……ちょうどいいところに」

「どうした?困ってる顔してるぞ」

「実は……」

コウジは状況を説明した。

グレンは甲羅を見て、頷いた。

「なるほどな。確かに、これは硬い」

「何かいい方法ないか?」

「あるにはあるが……金がかかるぞ」

「構わん。言ってくれ」

「魔法鉱石の鋸だ。これなら、岩亀の甲羅も切れる」

「魔法鉱石の鋸……いくらだ?」

「一本、金貨二枚ってとこかな」

「高い……!」

コウジは懐を確認した。

フィーからもらった金貨一枚。その他、銀貨が三十枚ほど。

「金貨一枚しかない……」

「じゃあ、半分だけ先に払ってくれ。残りは装備が完成してからでいい」

「本当か!?助かる!」

「友達だろ。それくらいするさ」

グレンは笑った。

「三日後には鋸を用意する」

「ありがとう、グレン」

「気にすんな。じゃあな」

グレンが去った後、コウジは溜息をついた。

「金がどんどん飛んでいくな……」

「大丈夫ですか、師匠……?」

シルフィが心配そうに言った。

「ああ、何とかなる。良いものを作れば、金は返ってくる」

コウジは前向きだった。

「それより、三日間は他の作業をしよう」

「はい!」

三人は、他の依頼品の製作に取り掛かった。



三日後、グレンが魔法鉱石の鋸を持ってきた。

「できたぜ」

青白く輝く鋸。刃は鋭く、魔力を帯びている。

「ありがとう、グレン」

「頑張れよ」

グレンが去った後、ボルドは早速鋸を試した。

「よし、切ってみます」

岩亀の甲羅に鋸を当てて、ゆっくりと動かす。

ギリギリギリ――

「おお……切れる……!」

確かに、刃が甲羅に食い込んでいく。

「すげえ……!」

ボルドは興奮しながら作業を続けた。

一時間後――

「旦那、切れました!」

板状に切り出された甲羅のプレート。

「よし、いい仕事だ」

コウジは満足そうに頷いた。

「じゃあ、これを設計図通りに加工してくれ」

「了解です!」

ボルドは黙々と作業を続けた。

一方、コウジは革の加工を始めた。

岩亀の革を鞣し、裁断し、必要な形に整えていく。

「師匠、私は何をすれば……?」

「シルフィは、革のパーツを縫い合わせてくれ」

「わかりました!」

三人は、それぞれの得意分野で作業を進めた。

ボルドが金属プレートを作り、コウジが革を加工し、シルフィが縫製する。

分業することで、作業は驚くほど効率的に進んだ。

「これは……いいな」

コウジは実感した。

一人では絶対に無理だった作業が、三人なら可能になる。

「やっぱり、仲間って大事だな」

コウジは満足そうに笑った。

一週間後――

「胴体部分、完成です!」

ボルドが報告した。

「脚部分も、できました!」

シルフィも報告した。

「よし、じゃあ組み立てだ」

コウジは全てのパーツを作業台に並べた。

胴体部分の甲羅プレート、脚部分の革鎧、関節部分の分割式プレート――

「これを、一つに組み上げる」

三人は協力して、パーツを組み立てていった。

だが――

「あれ……?この部分、合わない……」

シルフィが困った顔をした。

「どれだ?」

コウジが確認すると、確かに脚部分の一部が、胴体部分と噛み合っていない。

「……設計ミスか」

コウジは顔を曇らせた。

「どうしますか、師匠……?」

「……この部分、削って調整するしかない」

「削る……ですか?」

「ああ。ボルド、この金属プレート、少し削れるか?」

「やってみます」

ボルドは金属プレートを削り始めた。

一時間後――

「できました」

「よし、もう一度組み立ててみよう」

今度は、全てのパーツが完璧に噛み合った。

「やった……!」

三人は歓声を上げた。

「よし、じゃあ最後の仕上げだ」

コウジは全体のバランスを確認し、細部を調整していく。

そして、三週間後――

「……完成だ」

岩亀の甲羅と革で作られた、ケンタウロス用の重装備。

胴体部分は硬い甲羅プレートで覆われ、脚部分は柔軟な革鎧。関節部分は分割式で、動きを妨げない。

『岩亀の甲羅・ケンタウロス用重装備(品質:優)』 『効果: 防御力+20、耐久性+15、重量-5(軽量化魔法付与)、機動性+3』

「品質『優』……それに、重量軽減まで……」

コウジは驚いた。

「ボルド、お前……魔法を使ったのか?」

「はい。金属加工の際に、軽量化の魔法陣を刻み込みました」

「すごいな……」

「師匠の教えのおかげです」

ボルドは照れくさそうに笑った。

「よし、これなら大丈夫だ」

コウジは満足そうに頷いた。

「明日、ダリウスに納品しよう」

「はい!」

三人は嬉しそうに手を取り合った。


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